ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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気の合う仲間と共に、バスケを楽しむ

「顔を上げろよ、楽人。凹む理由もわかるけど……お前のやったことは、間違ってなんかいないさ」

 

「えっ……?」

 

 軽く肩を叩いてから、集まってくれたメンバーたちへと視線を向けるよう促す。

 活動停止処分を受けてから暫くの間、バスケットボールに触れていなかったであろう彼らの表情は、期待と歓喜に満ちていた。

 

「ここに来てくれなかった部員は大勢いる。この先もどうなるかなんてわからない。でも、今、僕たちがバスケをできるっていうのは紛れもない事実だ。みんな、心の底からそのことを喜んでる」

 

 この先、バスケ部がどうなるかもわからない。部員同士の関係も良好とはいえず、部内には不安の種が埋まりに埋まりまくっている。

 それでも、こうしてバスケをやれる機会を手に入れられた。そのことを喜びながら、全力で楽しむ時間があってもいいと僕は思う。

 

 少なくともここに集まったのは、先輩からの圧や部内のギスギスとした空気なんて関係なく、ただ純粋にバスケがしたいと思った人間たちだ。

 寂しい人数と楽人は言ったが……バスケ馬鹿がこんなに集まったことを、僕は本当に嬉しく思っていた。

 

「みんな、楽人に感謝してるよ。大好きなバスケができるんだ、そのことを喜んでない奴なんていないさ。だから思いっきり楽しめばいい。そんな僕たちの姿を見たら、ためらってた部員たちも気が変わるかもしれないしね」

 

「……そうだな。これってあれか? 『隗より始めよ』ってやつか?」

 

「あ~……大体あってるけど、ちょっと違うかな……?」

 

「そっか。馬鹿が使い慣れてない言葉を言うもんじゃあねえな……」

 

「いいんじゃない? ここにいる全員、とびっきりのバスケ馬鹿なんだからさ。馬鹿やって、楽しもうよ」

 

「ああ、そうだな……!!」

 

 僕の言葉と楽しそうにしている仲間たちを見て、楽人も少し迷いが晴れたようだ。

 いい顔をし始めた彼を横目に見た僕が微笑みを浮かべる中、楽人にとってもう一つのいいニュースが飛び込んでくる。

 

「うぉ~い、野郎ども~! アップは済んだか~!」

 

「今日から地獄の練習の始まりだぞ~! 覚悟はできてるか~っ!?」

 

 体育館に響く、女子たちの声。その片方を聞いた楽人がびくっと反応する。

 全員が声のした方へと顔を向ければ、そこにはウインドブレーカーを着たひよりさんと熊川さんが荷物を手に立っているではないか。

 

「えっ!? く、熊川さん!? ど、どうして……!?」

 

「ひよりがマネージャーやるって聞いてさ、私も協力させてって頼んだんだよね。ほら、文化祭での一件が原因なら、実行委員だった私も少なからず関係あるでしょ?」

 

 マネージャーとしてサポートしてくれるのはひよりさんだけだと思っていた楽人が驚きながら熊川さんに質問すれば、彼女は笑いながらそう答えた。

 その後、こちらを見てきた親友へと、口パクで「サプラ~イズ」とおどけた態度で言ってみせれば、複雑な表情を浮かべた楽人が脱力しながら僕へと言う。

 

「お前さ、段々七瀬さんに似てきたよな? 人をからかうの、上手くなってないか?」

 

「いやいや、そんなことないよ! 雄介くんはこういうところはノリがいいよ! 多分、あたしじゃなくてご家族の影響だと思う!」

 

「ひよりさん、痛い。背中を叩かないで」

 

 楽人の言葉に反応したひよりさんが、笑顔を浮かべながら話に入ってくる。

 べしべしと背中を叩く彼女にツッコミを入れる中、予想外だった想い人の登場に顔を赤くする楽人へと、他のメンバーたちからの野次が飛ぶ。

 

「キャプテ~ン! そこの四人だけで青春しないでくださ~い! 彼女なしの俺たちの心が折れそうで~す!」

 

「キャプテン、助っ人には本当に感謝してるんですが、こんなにかわいい彼女持ちって知って嫉妬でどうにかなりそうです。どうすればいいですか?」

 

「イチャついてないでこっちを見ろ~! あと、俺たちにも女の子紹介してくださ~い!」

 

「ええい! ふざけたてんじゃねえぞ、お前ら! あと、俺はキャプテンじゃあねえから! 勝手に役目を押し付けんな!!」

 

 仲間たちからからかわれた楽人が大声を出して彼らに突撃する。

 完全に吹っ切れた様子の彼を見つめて僕が頷く中、ひよりさんと熊川さんも楽しそうに声を弾ませながら言った。

 

「人数は少ないけど、雰囲気はいい感じじゃない? みんな、楽しそうじゃん!」

 

「うん! いいチームって感じがする!」

 

 二人の言葉に、僕がさっきよりも大きく頷く。

 まだまだ前途は多難なんだろうけれども、こうして気が合う仲間と共に過ごす時間に確かな光を見出しながら……僕たちは、初の練習を行っていくのであった。

 

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