ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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突発ダブルデートinスーパー銭湯!

「なあ、どうしてこんなことになってるんだ?」

 

「さあ……?」

 

 ――数時間後、僕たちはスーパー銭湯の休憩場でフルーツ牛乳を飲んでいた。

 汗が染み込んだスポーツウェアから一変、ゆったりとした館内着を纏った僕たちの体からは、石鹸のいい香りがしている。

 

 運動をした後の疲れた体を温泉で癒すのも、たくさんかいた汗を流すのも、どちらもとても気持ち良かったが……冷静に考えると、どうしてこうなった感がすごい。

 一気にコーヒー牛乳を飲み干した楽人は空き瓶をドンッと音を響かせながら置くと、首を傾げながら言った。

 

「なんか、七瀬さんの押しに流されちゃったな……」

 

「う、うん。ごめんね……」

 

 僕たちがこうして二人そろって風呂上がりにリラックスしている原因は、ひよりさんにある。

 練習終了後、解散の流れになった際に「次の練習日程とかの相談があるから」と楽人と熊川さんを呼び止め、それっぽい話をした後で四人で帰ることになったかと思えば、どこからかこのスーパー銭湯のサービス券を取り出してきて……気が付いたら、こうなっていた。

 

 あれよあれよという間に僕たちをここに誘導してしまったひよりさんの手腕には舌を巻くしかないが、なんだか最初からこうするつもりだったような気がしなくもない。

 

「悪いな、雄介。俺と熊川さんがいなけりゃ、お前と七瀬さんの二人きりでイチャイチャできたってのにさ」

 

「い、いや、そんなこと気にしないでよ。その、こっちこそごめんね……」

 

 多分……というより、間違いなく、ひよりさんはこのためにサービス券を用意していたのだと思う。

 楽人的には練習上がりに僕と二人きりで遊びに行く用の物だと思っていそうだが、そうじゃない。

 見ていてじれったい彼と熊川さんの雰囲気を()()()()()するために用意してあったものだ。

 

(最初からそのつもりだったんだろうなぁ……正直、どうかと思っちゃうけど……)

 

 ここまで準備が良いとなると、ついさっき思い付いた作戦などではなく、事前にしっかり練った上で実行しているものなのだろう。

 さっきの二人の会話はあくまで決行の理由を見つけただけに過ぎなくて、どこかしらで楽人たちをここに誘導するつもりだったのだと思う。

 

 親友の恋路を応援するために色々手を回しているのだろうが、僕としては下手に手を出したりせずに温かく見守った方がいいんじゃないかな~? と思う中、問題の人物の声が聞こえてきた。

 

「あっ、いたいた! お~い! 雄介くん! 遊佐く~ん!」

 

 明るい声で僕たちの名前を呼びながら、大きく手を振る小さな影。

 小走りにこちらへと駆け寄ってくるひよりさんの姿を目にした僕は、小さく心臓を跳ね上げてしまった。

 

(危ない、危ない。見慣れてなかったら変なリアクションを取ってしまうところだった)

 

 僕たちとよく似たデザインのゆったりとした館内着なのだが、どうしてだかひよりさんが着ると()()()がとても窮屈そうに見える。

 まあ、正確には下半身も含めて二部分なんだろうな~、と彼女に気付かれたらとんでもない目に遭いそうなことを考えたところで、僕の前に立ったひよりさんが笑顔で口を開いた。

 

「お風呂、気持ち良かったね! 色んな種類があったし、汗を流しながら楽しめたよ!」

 

「そうだね。でも、一番大事な風呂上がりの牛乳を忘れてない?」

 

「おっと! そうだった、そうだった! あたしも一杯買ってこようっと!」

 

 そう言って、自販機へと駆け出していったひよりさんを見送ったところで、楽人が僕に恐る恐るといった様子で声をかけてきた。

 

「なあ、どうしてお前はそこまで平然としていられるわけ? 風呂上がりの女子が目の前にいるんだぞ? なんなんだよ、その余裕は?」

 

「え? ああ、付き合い始めてから大分経つし、ひよりさんからの逆セクハラで鍛えられてるからね」

 

 実際はそれだけでなく、結構な頻度で我が家に泊まりにきているおかげでお風呂上がりのひよりさんの姿を見慣れているからなのだが、流石にそれを口に出すとマズい気がしたので言わないことにした。

 同時に、今度は僕が楽人の目を真っすぐに見つめながら言う。

 

「楽人、念のため言っておくけど、ひよりさんのことを変な目で見たら……わかってるよね?」

 

「わ、わかってるって! 俺は別に七瀬さんだから緊張してるわけじゃなくって、風呂上がりの女子と対面するっていうシチュエーションに困惑してるんだよ! 一緒にプール行った時も、そんな目で見たりしなかっただろ?」

 

「そんなに必死に言い訳しなくても大丈夫だよ。楽人のことは信頼してるからさ」

 

「いや、そんな雰囲気じゃあなかったぞ……?」

 

 どうしてだか大いに慌てる親友を落ち着かせる僕であったが、楽人は若干引いていた。

 そんなに圧があったかなと僕も困惑する中、どこからかぬうっと出てきた熊川さんが死んだ目をしながら言う。

 

「無理は言うもんじゃないよ、尾上くん……あの胸はどうしたって意識しちゃうって……!!」

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