ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「いや~! スーパー銭湯でご飯ってなんか珍しい感じがするよね! 夏休みに行ったプールとは全然違うけど、特別感があるってのは一緒だ!」
「……言いたいことはわかるんだけど、七瀬さんの食べる量がすご過ぎて話が頭に入ってこないんだが?」
「毎回思うけど、よくその体にそれだけの量が入るよね……」
スーパー銭湯内の食事スペース。食堂も併設されているそこにやって来た僕たちは、思い思いの料理を注文し、それを食べようとしていた。
ひよりさんは滅多に来ないスーパー銭湯で食べられる料理にテンションが上がっていて、色々と頼んだみたいだ。
期間限定のドリンクにラーメン、カレーに小さなおつまみセットなど、僕たち三人の中で一番体が小さいのに食べる量は多いひよりさんの健啖家っぷりに、楽人と熊川さんは唖然としている。
僕は慣れているから別段気にしなかったが、やっぱり初見だと驚いちゃうんだろうなと考えながら自分が頼んだブラック醤油ラーメンをすする僕へと、同じくラーメンを食べていたひよりさんが言う。
「あっ! そういえばだけど、雄介くんお義母さんに夜ご飯要らないって連絡した?」
「大丈夫。さっきひよりさんたちを待っている間にメッセージを送っといたよ」
「良かった~! うっかり連絡し忘れてたから、助かったよ!」
「ちょっ、待っ、えっ!? お義母さん? 夜ご飯要らない? どういうことだよ? ってか、どんだけ進んでんだよ……?」
僕としては普通の会話なのだが、この内容を初めて聞いた楽人はさっき以上に驚いている。
ひよりさんが僕の家の近所に引っ越してきたことも、ちょくちょく晩ご飯を一緒に食べていることも話していたような気がするのだが、そこまで驚くことかなと考える僕の前で、熊川さんが楽人へと声をかけた。
「ひよりも尾上くんも見せつけてくれるよね~! お義母さん呼びまでしちゃって、もう完全に嫁入りしてるじゃん!」
「今さらだけど、文化祭準備の時に泊まりで旅行することも許されてるしな……両家の両親はもう二人の関係を認めてるってことか……!」
「大袈裟過ぎだよ。ちょっと特別な事情があるだけで、そういう感じになってるわけじゃないって」
「でも、普通に二人が結婚する未来が見えるんだよね……尾上くんもそのつもりでしょ?」
まあね、と小さく頷きながら言葉を返せば、熊川さんは口元に手を当てながら目を見開き、心底驚いたような表情を浮かべてみせた。
ひよりさんがピースをしながら笑う中、半ば呆れた様子の楽人が言う。
「なんか、俺たちお邪魔みたいっすね。二人だけ残して帰った方がいいんじゃないっすか?」
「そうだよね~……! 私たちがいたらイチャイチャラブラブできないだろうし、私たちはお暇しよっか?」
「ごめん、ごめん! ちょっと遊び過ぎた!」
「気まずい思いをさせたらごめんね。以後、気を付けます」
おどけ半分、本音も半分といった様子の親友たちの会話に対し、謝罪の言葉を述べる。
そうすれば、楽人も熊川さんも軽く肩を竦めた後で食事に戻ってくれた。
「ああ言っておいてこの話題を振るのはどうかと思うけどさ、本当に仲が良いよね、二人って。ひよりもず~っと楽しそうだしさ」
「楽しいっていうか、幸せだよね。雄介くんはいつでも優しくしてくれるし、あたしのことを受け止めてくれるっていう安心感もあるから、傍にいると胸がぽかぽかするっていうかさ~……」
「僕も、ひよりさんと一緒に居られて嬉しいよ。今日みたいに僕のわがままに付き合ってくれたりするし、いつも感謝してる」
「……熊川さん、ちょっと話題選びミスってない? また惚気が始まっちゃったんだけど?」
僕とひよりさんの会話を聞いた楽人が苦笑を浮かべながら緩くツッコミを入れる。
そうした後、ため息を吐いた彼は、自嘲気味な笑みを浮かべながら言った。
「でも、確かに雄介はすげえよな……今回の件も色々動いてくれたし、文化祭の時も七瀬さんを守るために一生懸命になってさ。まんまと紫村さんの罠に引っ掛かった俺とは大違いだ」
がっくりと肩を落としながら自分を責める楽人。
そんな彼の姿を見ていられなかった僕が励ましの言葉をかけるも早く、熊川さんが口を開いた。
「そんなに自分を卑下する必要はないでしょ。遊佐くんも、十分すごいと思うよ?」