ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんと焼肉パーティーだ!

「ホットプレート、ヨシ! 飲み物、ヨシ! 肉、ヨシ!!」

 

「うっひょ~っ! 気分ブンブン、爆上がるぜ~っ!」

 

「馬鹿なこと言ってふざけてないで手を動かせよ。馬鹿弟ども」

 

 現場にいるような猫のようなポーズを取ったり、顔にタイヤが付いているヒーローを髣髴とさせる口上を叫んでいる弟たちへとツッコミを入れつつ、温めたホットプレートへと油を垂らす。

 それをゆっくりと広げ、焼肉の準備を進めながら、ちらりとキッチンを見た僕は、そこに並ぶ二つの人影を見つめる。

 

「お野菜、こんな感じでいいですか?」

 

「完璧よ! 準備、手伝ってくれてありがとうね!」

 

「ご馳走になるんですから、このくらいは当然ですよ! いくらでも働きますから、遠慮なく言ってください!」

 

「あ~! 本当にいい子ね、ひよりちゃんは! このままうちの子になっちゃってよ~! 一人くらい女の子が欲しかったんだから~!」

 

 キッチンでは母とひよりさんが並んで焼肉用の野菜を切り、楽し気に会話していた。

 デレデレになっている母と仲良くしているひよりさんの姿にホッとする中、僕を両脇から挟んできた弟たちが言う。

 

「雄介、どうやら我らが母君は七瀬さんみたいな娘が欲しいみたいだぜ?」

 

「叶えてあげなよ。今まで苦労させた分、恩返しをしなくちゃ」

 

「よし、お前らじっとしてろ。揃ってホットプレートに顔面押し付けてやる」

 

 両側から肩を叩かれてのからかいの言葉に、静かに怒った僕が言う。

 わ~っ! と騒ぎながら逃げた弟たちを見つめながらため息を吐いた僕は、家族全員妙にテンションが高いなと思った。

 

 今日は金曜日。そして、前々から企画していたひよりさんを家に招待しての焼肉パーティーの日。

 明日は休み(大我は部活動があるが)であるために夜遅くまで騒いでも大丈夫だろうという短絡的な考えの下に決まった開催日ではあるが、ベタながらも悪くない判断だったとは思う。

 

 心配なのは急成長した爆弾低気圧が接近しているというニュースだが、僕たちの住んでる地域はそこまで雨も風も強くならないということなので、気にし過ぎないことにした。

 

(本当、みんな盛り上がっちゃって……)

 

 ひよりさんにデレデレになっている母も、いつも通りに謎の踊りを踊っている弟たちも、客を招いての焼肉パーティーでテンションが振り切れているようだ。

 かく言う僕も落ち着かない気分になっていることを自覚していて、なんだかちょっと不思議な感覚を覚えていた。

 

「ほら、馬鹿ども! 変なダンスしてないで、さっさと座りなさい!」

 

 そうして少し経った頃、野菜や海鮮類を乗せた皿を手に母とひよりさんがリビングへとやって来た。

 既にホットプレートも温まっており、準備は万端といった雰囲気が漂う中、ひよりさんたちが各々の席に腰を下ろしていく。

 

「雄介くん、弟くんたちと楽しそうにしてたけど、何を話してたの?」

 

「え? あ、ああ、気にしなくていいよ。ふざけてただけだから」

 

 隣に座ったひよりさんにそう質問された僕は、少し慌てながら適当にその質問をごまかした。

 そうしながら菜箸を取り、買ってきた肉や彼女が切ってくれた野菜なんかをホットプレートの上に並べていけば、すぐに食欲を誘ういい匂いが部屋中に漂い始める。

 

「うおおおおっ! 肉だ肉だ~っ! 腹いっぱい食うぞ~っ!!」

 

「早くしてくれ! 俺は次男だから我慢できないんだ!!」

 

「あんたたち! ひよりちゃんの前で恥ずかしい真似しないの!!」

 

「あはははは……な、なんかごめんね。騒がしい家族で……」

 

「ううん、すっごく楽しいよ! いいじゃん、この賑やかさ!」

 

 箸を手に、今か今かと肉が焼き上がるのを待つ弟たちと、そんな意地汚い弟たちを叱責する母。

 以前もそうだったが、今日も今日とて我が家族は騒がしいなと呆れながらひよりさんに謝罪すれば、彼女は楽しそうに笑いながらそう言ってくれた。

 

「ほら、肉を見てるだけじゃなくてちゃんとタレを用意しとけよ。あと、野菜もちゃんと食べろよな?」

 

「わかってるって! そこまで馬鹿じゃないってば!」

 

「とか言っておきながら七瀬さんの分まで食べたら、雄介と母さんにブチギレられるぞ? 気を付けろよな、雅人」

 

「そうそう。あんたは大食いな上にす~ぐ調子に乗るんだから……!」

 

「そういう母さんも酒飲み過ぎて変なことを言わないでね? 七瀬さんにセクハラとかしたら、俺たちじゃ対処不能なんだからさ」

 

「うん。お前たちに最低限の良識が備わっていることを確認できて、兄として安心したよ」

 

「ふふふ……っ! あははははっ!!」

 

 話している内容にひよりさんの名前が入ってはいるが、僕たちはいつも通りの騒がしいやり取りを繰り広げていた。

 そんな僕たち家族の様子を面白そうに見守っていたひよりさんが声を上げて笑う中、僕は焼き上がった肉や野菜をそれぞれの皿へと取り分けていく。

 

「最初の一回はフェアにな。次からは血を血で洗う争いが始まるんだけどさ」

 

「母さんも言ってたけど、今日はひよりさんがいるんだから食べ過ぎるなよ?」

 

 そんなことを話しながら、そっと手を合わせる僕たち。

 一人増えている以外は何もかもが普段通りの食卓にて、いつも通りの挨拶をしてから楽しい食事を始める。

 

「「「「「いただきます!!」」」」」

 

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