ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
地域のバスケ大会に参加するチームとしての初練習を行った一週間後、またしても僕たちは集まり、練習をしようとしていた。
しかし、今回は前回使ったスポーツセンターではなく、通っている学校に申請を出して体育館を使わせてもらっている。
一応、活動停止処分を食らっているバスケ部のメンバーが集まって体育館を使うのは、グレーゾーンっぽい部分があるが……バスケ部の顧問である田沼先生が便宜を図ってくれていた。
申請自体は部外者である僕の名前を使って、あとはまあ先生に任せてしまっているが、特にお咎めがないということは問題ないということにしてもいいだろう。
「高校の体育館って申請出せば使えるんだな、知らなかった……」
「本当は難しいんだろうけどね。男子バスケ部が活動してないから使う予定がなくなっちゃったわけだし、田沼先生も頑張ってくれたんだと思うよ」
「
練習の準備中、僕は仲間たちとそんな会話を繰り広げていた。
するとそこに姿が見えなかった楽人がやってきて、全員に声をかけてくる。
「お~い、ちょっと時間もらえるか?」
「どうしたの、楽人? 何かあった?」
「いや、前にちょっと助っ人について話したことがあっただろ? 実は今日、そいつに来てもらったんだよ」
僕たちだけでなく、マネージャーのひよりさんと熊川さんも楽人の周りに集まる中、体育館の入り口からキュッキュッという音が聞こえる。
その音に反応して顔を向けた僕たちの前に、一人の少年が姿を現した。
「紹介するよ、
「間沼です。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた間沼くんは、身長百七十と少しくらいのやや背が高い男の子だった。
来年は受験ということは、中学三年生ということだろう。受験が大変な時期にこんなことをしても大丈夫なのだろうかと考える僕の心の中を読んだかのように、彼は言う。
「受験のことは気にしないでください。勉強自体はちゃんとやってますし、むしろいい気分転換になるんで、誘ってもらえて助かりました」
「そっか。間沼くんがそう言うなら、気にしないでおくよ。参加してくれてありがとう」
うっす、と短く返事をした間沼くんが軽く頭を下げる。
顔を上げた彼は、僕の顔をじっと見つめた後、おもむろに口を開いた。
「あの、尾上先輩……ですよね? 中学時代の活躍、見させてもらいました」
「そうなの? でも大した活躍なんてしてないと思うけどな……?」
「謙遜しないでくださいよ。俺が遊佐先輩の誘いを受けた理由の一つは、あなたなんですから」
僕が意味深なことを言う彼へと困惑した表情を浮かべる中、転がってきたボールを拾った間沼くんは、何度かドリブルをした後で再び僕を見つめ、言う。
「1on1、相手してくれませんか? 折角の機会ですから、実際にマッチアップさせてくださいよ」
「……いいよ、わかった。じゃあ、軽くアップがてらってことで」
ギラついた雰囲気を醸し出しながらの間沼くんの言葉に、少し心が高鳴ってしまった。
助っ人の実力を確かめる意味合いも込めて、僕は彼からの挑戦を受ける。
「先攻はそっちからでいいよ。よろしくね」
「うっす」
短く返事をした間沼くんが、ドリブルを始める。
簡単に抜き去られないように腰を低く落とし、彼の動きを注意深く観察しながら、僕は心躍るこの瞬間を存分に楽しんでいった。