ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「う~ん……学校から行ける範囲でこんなにいいお風呂があるだなんて……いい感じのデートスポット、見つけちゃったな~……!」
「……銭湯がデートスポットになるの、地味におかしい気がするんだけど? まあ、あんたと尾上くんがいいならそれでいいけどさ……」
ゆったりとお風呂に入りながらのあたしの呟きに、優希からのツッコミが入る。
確かに変といえば変かもなとは思いつつ、寒くなってきた今の時期にお風呂デートをするというのもいいんじゃないかなと自分の中で結論付けたあたしへと、まじまじと視線を向けてきた優希が言う。
「ホントでっかいよね、ひより。見間違いじゃなければ、プールの頃よりまた成長してない?」
「ん~……そうかも。下着、ちょっときついなって思うことあるし」
「冗談抜きでその内三桁いくんじゃない? 胸と尻が幸せ太りするとか、本当に羨ましい以外の言葉が出てこないって」
「尻は抜きでいいでしょ! そっちは別に成長……してなくもないけどさぁ……!!」
当てずっぽうなのか、それとも本当に傍から見てもわかるくらいに大きくなっているのかはあたし自身にはわからないが、微妙に成長しているのは間違いない。
……まあ、成長の真相は若干太った際に雄介くんに協力してもらってダイエットした結果、お腹が凹んで見事に胸とお尻の肉だけが残ったからというものなのだが、恥ずかしいので黙っておくことにした。
「尾上くん、よくそれに手を出さないよね~……理性、鋼鉄過ぎない? 私が男だったら、間違いなくそのおっぱいに手を出してるよ」
「う~わ、優希、サイテー。そんなんじゃ女の子にモテないよ?」
「いや、私も女だわ。今のはあくまでもしもの話であって、胸も尻もないけど立派な女の子だっつーの!」
そんなツッコミを入れた優希と、ケラケラと笑い合う。
ひとしきり笑った後、あたしは優希へと笑みを浮かべたまま、言った。
「この話、前にスーパー銭湯行った時にしたよね? 優希は誰かと自分を比べ過ぎなんだよ」
以前、スポーツセンターでの練習帰りにお風呂に入った時も、こんな話をした記憶がある。
優希が遊佐くんに話していたこともそうだが、あたしの親友は自分と他人を比べて、自身を卑下しがちだ。
スポーツの才能だったり、スタイルだったり……他人のすごいところを見つけては、自分はそれを持っていないと思って凹む。
素直に周りの人たちのいい部分を見つけて、褒められるのは美点だけど、後半部分はちょっと良くないなとあたしは思っていた。
「優希だって綺麗な胸してるじゃん。お尻もちっちゃくてかわいいし、いいな~って思うけどな~」
「うぅ……! 持ってる側の人間から言われても、微妙に嬉しくないんだけど……」
「あたしからしてみれば、優希の方が持ってる人間だよ。足も長くてすらっとしてるし、健康的な体つきじゃん。何より、お尻がちっちゃいのはマジで羨ましい……!!」
手足はすらっとしているが、かといってガリガリにやせ細っているわけではない。
胸とお尻は小さいかもしれないが、そのおかげで太っているような雰囲気も感じさせない優希の体型は、あたしにとってはとても羨ましいものだ。
大きなお尻はもちろん、じろじろ見られることが多いこの胸も地味にコンプレックスだし、何よりちんちくりんな身長も気にしている部分ではある。
ゆったりとした服を着れば胸とお尻のせいで太っているように見られがちだし、かといってぴっちりした服を着れば体型が浮き出るせいで見られる頻度が上がったりするわけで……あたしだって、自分の体型に対して、色々と思うことはあるのだ。
「もうちょっと自信持ちなって! 優希はかわいいし、いい女だよ! あたしが保証してあげる!!」
「……ありがとう。やっぱみんな、隣の芝生は青く見えるってやつなんだね」
「そういうもんだよ。優希が羨ましく思ってるこの胸だって、変な浮気男に狙われたりするわけだしね。そういうことがあると、本当に色々嫌になっちゃうしさ」
「あはは、確かにそうだ。そう考えると、尾上くんってやっぱいい男だね。ひよりのおっぱいとかお尻を目的として付き合ってるわけじゃないって、一発でわかるもん」
「……体型なんて気にしないで好きだって言ってくれる男の子、優希のすぐ傍にもいるじゃん」
「……遊佐くんのこと、だよね」
そう呟いた優希の顔が赤く染まっていたのは、のぼせていたからじゃあないんだろう。
悩んでいるような、恥ずかしがっているような優希の横顔を見つめながら、あたしは親友へと問いかける。
「ねえ、優希はさ、遊佐くんのこと、どう思ってるの?」