ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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何よりも大事なもの(ひより視点)

「どう、って……」

 

「途中だったとはいえ、告白される寸前までいったんでしょ? もしも邪魔が入らなかったら、返事はどっちだったわけ?」

 

 文化祭の日、遊佐くんが優希に告白するつもりだったということは雄介くんから聞いている。

 あの時は間の悪いことに顧問の田沼先生が乱入してしまったからお流れとなったが、もしそうならなかったら優希はどうするつもりだったのだろうか?

 

 YESか、はたまたNOか……あたしはまだ、親友からその答えを聞いていない。

 文化祭の日にも聞いた気がするが、はっきりと答えてもらえなかったその質問を改めて投げかければ、優希は困った顔をしながら口を開いた。

 

「いい人……だと思うよ。真面目だし、面白いし、友達も多いし……モテるタイプの男の子だと思う。でも――」

 

「でも、何? 恋愛対象としては見れないとか?」

 

「いや、そういうんじゃなくってさ。なんて言うか……」

 

 若干不穏な感じの前置きをした優希へとそう問いかければ、首をぶんぶんと横に振った後でため息を吐いた。

 う~っ、と小さく唸った優希は、たどたどしく言葉を選びながら話をしていく。

 

「ひよりってさ、滅茶苦茶かわいいじゃん? 明るくてノリも良くて、料理もできる上に心も広い。さっきコンプレックスとは言ってたけど、胸もお尻も大きいって立派な武器だしさ、こういう言い方はどうかと思うけど、Sランク美少女って言われても文句ないでしょ?」

 

「………」

 

「そんで、尾上くんも格好いいじゃん? 顔とかじゃなくって……あっ、尾上くんが不細工って言ってるわけじゃないよ? 普通にイケメン寄りだと思う。でも、尾上くんって外見よりも内面がイケメンじゃん? 今回のバスケチームの件とかもそうだけど、家族とか友達を優先して、一生懸命になってくれる男の子で、すっごく優しい。ひよりのことを一番に想って、大事にしてるし……二人は本当にお似合いだって、私、思うんだよね」

 

 遊佐くんではなく、あたしと雄介くんについて語り始めた優希の話を、黙って聞き続ける。

 あたしたちのことを褒めに褒めた優希は、ため息を吐いた後、小さな声で言った。

 

「それで……遊佐くんも格好いいじゃん。さっきも言ったけど、モテるタイプの男子でしょ? 対して私はどうなのかなって、そう思っちゃうんだ。顔もアイドル級ってわけじゃないし、スタイルはひよりと玲香に完敗。性格の明るさには自信があるけど、だからどうしたって感じでもある。そんな私と遊佐くんが釣り合うかなって……そんなことを考えちゃうんだ」

 

 自嘲気味に笑いながら、優希はそう語った。

 その横顔を見つめるあたしに対して、親友は空元気で笑ってみせながら言う。

 

「ダメだよね、私。重いこと考えてるし、本当にこういう部分を直さないとって……いだだだだだっ!?」

 

 自分を卑下する優希のほっぺを摘まんだあたしは、ぐい~っと左右に引っ張ってその言葉を中断させた。

 そうした後で指を離してから、あたしは少し怒り気味に親友へと言う。

 

「あのね! 色々言いたいことがあるけど、まず最初に言っておくよ!? 優希はダメじゃないし、いい女だって! 江間とか紫村のことで凹んでた時、どれだけあたしが優希の励ましに元気をもらったか、わかってないでしょ? 胸とかお尻とかかわいさとか、そういうところなんてどうだっていいの! 優希はかわいくて優しくていい女! それはあたしが保証するから、自分はダメだなんて言うの止めなって!」

 

「ひより……」

 

「あともう一つ! これは本当に大事だから、しっかり胸に刻んでおいて!」

 

 そう言って、呼吸を一つ。本当に大事なことだから、ちゃんと覚えておいてほしいという想いを胸に、あたしは優希へと自分の経験を元にした言葉を贈る。

 

「釣り合うとか釣り合ってないとか、そういうのはどうでもいいの! あたしは雄介くんが大好きで、一緒にいると幸せで、ず~っと傍にいたいから付き合ってる! ぶっちゃけ、あたしは元カレに浮気されるような女だし、雄介くんを振り回しまくってるところもあるし、自分が雄介くんに釣り合ってるとか思ってないからね!? それでも一緒にいたいの! だって、好きなんだもん!」

 

 いつだってそうだ。歩く時は小さなあたしに歩幅を合わせてくれるし、やりたいことがあると言った時も文句一つ言わずに付き合ってくれる。

 初めてのお泊りの時だってあたしを大切に想ってくれたからこそ、焦るあたしを止めてくれたし……いつだってあたしは、雄介くんに甘えっぱなしだ。

 

 もっと背が高くて、お淑やかで、我がままなんて言わない女の子の方が雄介くんと釣り合ってるんじゃないかって、何度も思ったことがある。

 それでも、あたしは雄介くんの傍にいたい。彼女でいたい。だって、彼のことが大好きなんだから。

 

「自分に自信がない優希の気持ちもわかるけどさ、そういうのってどうでもいいんだよ。何より大事なのは、優希と遊佐くんが相手のことをどう思ってるかってところなんだからさ。お互いが相手のことを大好きで、一緒にいたいって思うのなら……そうすればいい。それだけなんだよ」

 

「……そっか。うん、そうだね。ひよりの言う通りだ」

 

 結構熱く語ってしまったが、優希はあたしの話に何かを感じてくれたようだ。

 ざぶん、と音を立てて湯船に沈んだ後、浮かび上がった優希は犬みたいに体を振って水の飛沫を飛ばした後、あたしへと言う。

 

「ありがと、ひより。もうちょっと頭を柔らかくして考えてみるよ」

 

「ん、オッケー。でも、さっきの質問の答えはいつかちゃんと聞かせてもらうからね?」

 

「わかってるよ。ちゃんと答え、出さないとね」

 

 そう言って、優希が笑う。

 少しだけ迷いを振り切った親友の表情は、さっきよりも晴れやかに見えた。

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