ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「あっれ~? 間沼くんじゃん! なんで一人?」
「遊佐くんと尾上くんは? トイレでも行ってるの?」
「ああ、どもっす……先輩たちはトイレに行くついでに中を見て回ってくるって言ってましたね……」
ちょっと長めのお風呂から出たあたしと優希は、休憩室で一人座っている間沼くんとでくわした。
どこかぼんやりしている彼のことをおかしく思ったあたしたちは、顔を見合わせた後で質問を投げかけてみる。
「どうしたの? なんか元気ないけど……?」
「もしかしてのぼせちゃった? お水、買ってこようか?」
「いえ、そういうんじゃないんです。ただちょっと、先輩たちとの差を思い知ってしまったっていうか……」
「「???」」
もう間沼くんが何を言っているのかわからないあたしと優希は、きょとんとするしかない。
そんなあたしたちを放置して、深いため息を吐いた彼は、ぼそぼそと独り言を呟き始めた。
「いや~……遊佐先輩のやつは知ってたんですけど、尾上先輩のもデカかったな……高校生になって急に成長するもんなのかな……?」
「!?!?!?」
――その瞬間、あたしたちに電流が走る。
本当に声に出したくはないというか、出せるものではないのだが、間沼くんが何のサイズについてぼやいているか、理解してしまったからだ。
ごくりと息を飲んで押し黙るあたしたちの前で、間沼くんが言う。
「1on1負けたことよりもこっちのが悔しいのはなんでだ……? 二人が立ち上がった時、正直めっちゃビビっちゃったもんな……敗北感がすげえ……」
「ね、ねえ、ひより? そ、そろそろ止めた方がいいんじゃないかな……?」
「そ、そうだね。でも、どうやって止めたらいいのかよくわかんないし……」
雄介くんのってやっぱり大きいんだ……! と思いつつ、より詳しい情報を聞きたいような、そうでもないような感情の板挟みに遭いながら、あたしは優希に応える。
どっちかっていうと優希に止めてもらいたかったのだが、優希も優希で顔を赤くしながらも興味津々といった雰囲気を醸し出していた。
(お、おっきいって、どのくらい? 何センチくらいなの……!?)
むっつりスケベ全開で間沼くんの呟きに耳を傾けるあたしと優希。
もっと話してくれと願うあたしたちであったが……不意に背後から声をかけられ、跳び上がってしまった。
「ああ、ひよりさん。お風呂、出たんだね」
「「ひゃああっ!?」」
予想していなかった展開に大いに驚きながら振り向けば、そんなあたしたちのリアクションに訝し気な表情を浮かべた雄介くんと遊佐くんが立っているではないか。
手にした牛乳瓶を差し出しながら、二人は怪訝そうに言う。
「どうしたの、そんなに驚いて……?」
「お~い、志乃~? お前の分の牛乳も買ってきてやったぞ~! っていうかお前、二人に変なこと話してないよな?」
「あ、あざっす。なんも話してないっすよ。俺、ただぼ~っとしてただけなんで」
どうやら間沼くんは無意識で呟いていたようだ。本人に自覚がなかったおかげであたしたちが超むっつりスケベと化していたことはバレずに済みそうだが、気まずさがすごい。
「……ひよりさん、どうかしたの? なんか視線が下の方に向いてるけど……?」
「ななな、なんでもないよ! ちょっとぼ~っとしてただけだから! 本当になんでもないから!!」
「そ、そう? 妙に必死に見えるんだけど……?」
ついつい視線を雄介くんの下半身に向けてしまう自分自身を律しながら、受け取った牛乳を一気飲みする。
視線を泳がせている優希と無言で頷き合いながら、あたしは自分の煩悩を必死に払っていくのであった。