ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「なんかあれだね。尾上くんの兄弟っぽいけど、すっごいひょうきんだ。面白い子たちだね! 尾上くんがツッコミ役になる理由もわかる気がする!」
「いいよなぁ。俺んちは姉ちゃんしかいないから、弟がいる生活ってのが羨ましいわ」
「そんないいもんじゃないよ。ところかまわずふざけるからツッコミ疲れするし、変な踊りも踊るしさ……」
「あたしは楽しくっていいと思うけどな~! 一緒のご飯食べる時とか、賑やかでいいじゃん!」
「流石は義姉さん! 雄介よりも俺たちのことをわかってる~!」
「将来的に弟になる予定なんで、末永くよろしくお願いしますね。げへげへ!」
ひよりさんの言葉に反応し、三下の悪役のように手もみしながら弟たちが言う。
なんだかなぁ、と僕が思う中、楽人は二人にもお礼を言い始めた。
「雅人くんと大我くんもありがとうな。なんか、ここまでたくさんの助っ人に来てもらうと申し訳なく思っちゃうなぁ……」
「気にしないでくだせえ! 俺ら、暇でついてきただけですし!」
「たまにはいいことをしとけって偉大なる母君からも言われてるんで! こうしてボランティアに参加することで、その徳が巡り巡って俺たちの下に戻ってくるかもしれませんし!」
「……そう。情けは人の為ならず、いつかは自分の下に戻ってくることを期待して行うもの……そうすれば、こういういいこともあるってことよね」
「ん……?」
僕たちが会話を繰り広げる中、聞き覚えがあるんだけどない声が話に割り込んでくる。
その声の聞こえてきた方向へと振り向けば、そこにはゴミ拾いの装備を万全に整えた鉢村さんが立っているではないか。
「ええっ!? 玲香!?」
「そう。ちょっとクールで背が高いスタイル抜群の年上お姉さんこと鉢村玲香だけど、どうかした?」
「ど、どうかしたっていうより、どうしてここに……?」
「どうしてって、決まってるじゃない。世のため人のため、ボランティア活動に参加しに来たのよ」
ふふんっ、と鼻を鳴らした鉢村さんが微妙にどや顔を浮かべる。
突如として彼女が現れたことに驚く僕たちであったが、鉢村さんはそんな僕たちを放置して大我に声をかけた。
「久しぶりね、大我くん。私のこと、覚えてる」
「もちろん覚えてますよ! やっぱ寿司でバイトしてるお姉さんですよね? 文化祭でも顔を合わせましたし……!」
「ふふっ、嬉しいわね。いい機会だし、少し話でもしましょうよ。もちろん、ゴミ拾いをしながら……ね?」
……どうして鉢村さんがここにいるのかわからない。大我がボランティアに参加することが決まったのは昨日の夜だし、それを伝えたのはひよりさんだけだ。
ひよりさんも誰にも言ってないといった顔をしているし、となると偶然ということになるのだろうが……これは本当にただの偶然……なのだろうか?
「というわけで、二人組のグループに分かれて作業するってことにしない? ちょうどいい感じの人数だしさ!」
「……玲香、欲望を隠そうとしないね。それでクールなお姉さんを自称するってどんな気持ち?」
「いいじゃないの、別に。ひよりも尾上くんと組めるし、遊佐くんと優希も二人で話ができるでしょ? 全方位万々歳じゃない」
「ん? あれ? ちょっと待てよ……?」
確かにそう聞くと僕としては嬉しいし、楽人もありがたい展開になっているとは思う。
ただ、この場には僕たち以外にももう二人のメンバーがいるわけで、その二人がどうなるかというと……?
「……すいません。なんか、話の流れ的に俺は尾上先輩の弟さんと組むってことになるんですかね?」
「俺ら、初対面なんですけど……?」
「大丈夫、大丈夫。どうにかなる。お姉さんが保証してあげるわ」
「すいません。初対面に方にそう言われても微塵も嬉しくないっつーか、何一つとして安心できないんすけど?」
残された間沼くんと雅人が、困惑した様子で問いかけてくる。
そんな二人を鉢村さんが静かな微笑と根拠のない励ましの言葉で制する中、自らの運命を悟った雅人が崩れ落ちながら言う。
「オー! ノーッ! 俺の一番嫌いな言葉は初対面で、二番目は気まずい、なんだぜ~っ!?」
「あれ? もしかして君、ジョジョ好きだったりする?」
「おっ……? その口ぶり、まさかそっちも?」
普段通りのオーバーリアクションだったのだが、それが功を奏したようだ。
雅人のネタ発言に間沼くんが予想外の食いつきを見せたことで、なんだかこのコンビも上手くいきそうな雰囲気が出てきた。
「あ~……じゃあ、とりあえずこのメンバーで動いてみる?」
という、楽人の提案に従い、本当にとりあえず僕たちは二人組でのゴミ拾いを開始するのであった。