ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「う~ん……大丈夫かなぁ……?」
「大丈夫って、優希と遊佐くんのこと? それとも大我くん? と見せかけて雅人くんと間沼くんのコンビを心配してるとか?」
「……改めて考えると、心配すべきことが多過ぎて全部大したことじゃない気がしてくるよ」
「ちなみにあたしは玲香が大我くんに変なことしないか心配だけどね! まあ、大我くんならいざとなったら一本背負いでも決めてくれるから大丈夫だとは思うけどさ!」
「その場合、鉢村さんが大丈夫じゃないことになるんじゃないかなぁ……?」
二人組になってゴミ拾いを始めた僕たちは、友人や家族について色々心配しながらそんな話をしていた。
どこもかしこも不安はあるが、なんだかんだで上手くやれそうだなと僕が考える中、ぶるりと体を震わせたひよりさんが言う。
「う~、思ってたよりも寒いな~。もうちょっと温かい服で来れば良かったかも」
「こういう清掃系のボランティアの時って服装に悩むよね。大前提として汚れてもいい服になるけど、動きやすいように厚着は避けた方がいいしさ」
少しだぼっとした感じのトレーナーとゆったりとしたズボンを合わせたコーディネートをしているひよりさんだが、冬の朝の気温は想像以上に寒かったらしい。
もう少しすれば温かくなってくれるだろうが、寒さ対策をし過ぎると今度は昼頃から暑さを感じて困るよなと僕はそんなことを考える。
「制服のスカートよりはマシだけど、やっぱ寒いね。これはもう、雄介くんに温めてもらうしかないか!」
「はいはい。冗談はその辺にしといてね。こんな大勢の人の前で変なことできるわけないでしょ?」
「ってことは、二人きりだったら温めてくれるの?」
「もちろん。ひよりさんがお望みならね」
そう答えた僕へと、ひよりさんは満足気に笑ってみせる。
上機嫌な彼女は目についたゴミをトングで掴むと、ポイポイと袋の中に放り込んでいった。
「あ~あ~、空き缶に新聞紙にホットスナックの包み紙……みんな好き勝手にポイ捨てしちゃってさ! なんでゴミ箱に捨てるか、家に持ち帰ったりしないのかな~?」
「一つゴミがあると自分も捨てちゃっていいかって考えちゃうんだろうね。他の人たちもやってるなら、自分も……的な感じでさ」
そう話しつつ、落ちているゴミを分別して袋に放り込んでいく。
缶や瓶といった重いゴミは僕の袋へ、そうでない紙やプラゴミはひよりさんの袋へ……と分別しながらゴミ拾いを続ける中、背後から明るい声が響いた。
「あらあら! 随分とかわいい子たちが参加してくれてるのねぇ!」
その声に振り向けば、僕たちと同じくゴミ拾いのボランティアに参加しているおじいさんとおばあさんが目に映った。
おそらくは夫婦と思わしき彼らに、僕たちは軽く頭を下げて挨拶をする。
「おはようございます。今日は、学校の友達と一緒に参加させてもらってます」
「ご丁寧にどうもね~! この人と、今日は若い子が大勢来てくれてるねって話してたのよ~!」
「いつもは私たちみたいな年寄りばっかりだから、学生さんたちが手伝ってくれて助かるよ!」
朗らかに笑いながらそう話す老夫婦たちは、僕たちの参加を喜んでくれているようだ。
そんな二人へと、ひよりさんが質問を投げかける。
「あの、お二人はこのボランティアによく参加されるんですか?」
「ええ、そうよ。ほぼ毎回、参加してるわね」
「私たちは夫婦なんだけどね、この近くに孫が住んでるんだ。ここの公園で遊ぶことも多くってね、孫が使う場所だったら、綺麗にしておきたいだろう?」
「そうなんですか、お孫さんが……!」
その考え方や参加の動機は、素晴らしいと思った。
大切な誰かのための行動が、より多くの人たちに幸せにつながる。一つゴミが落ちていたら自分も捨ててしまえと考える人たちと似ているが、結果は真逆……一つの幸せが多くの幸せを生み出している。
「……なんか、いいなあ。そういうの……!」
「僕もそう思うよ。お二人の考え方やボランティアに参加する理由、素敵だよね」
ぼそりと呟いたひよりさんに同意しつつ、僕はうんうんと頷く。
だがしかし、彼女は苦笑を浮かべた後、ほんのりと頬を染めながら僕へとこう言ってきた。
「いや、そっちじゃないんだよね。雄介くんの言う通り、素敵な考え方だと思うけどさ……あたしはその、お二人みたいな夫婦っていいな~、って思ったんだよね……」
「あらあら!? 私たちみたいなのが憧れられちゃうだなんて、分不相応で恥ずかしいわね~!」
「私たちなんてどこにでもいる年寄り夫婦だよ。そう大した人間じゃあないって」
「そんなことないですよ。お子さんもお孫さんもいて、休日には夫婦そろってボランティアに参加して、毎日元気いっぱい幸せに過ごしてる……すっごく素敵なことだなって、そう思います」
そこで言葉を区切ったひよりさんが、僕の方をちらりと見る。
彼女が何を言わんとしているかを理解した僕もまた、頬を赤く染める中、そんな僕たちの反応を見た老夫婦が小さく息を飲んでから楽し気に言った。
「あらあら……! お父さん、私たち、お二人の邪魔をしちゃったみたいですよ」
「そうみたいだねぇ。これ以上邪魔をしない内に、退散しようか」
どこか嬉しそうに笑ったお二人が、頭を下げてからこの場を立ち去っていく。
気を遣わせてしまったなと恥ずかしさを覚えながらそんなことを考えた僕は、同じく顔を赤くしているひよりさんへと言う。
「とりあえず、ゴミ拾い続けよっか?」
「う、うん……」
僕以上に恥ずかしがっているひよりさんが言葉少なに答え、頷く。
再びゴミ拾いを始めた僕は、気恥ずかしさを感じながらもそんな彼女へと言った。