ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「今日は本当にありがとうございます、先生。食事をご馳走していただいた上に、福引まで引かせてもらえるだなんて……」
「いいって、いいって! 俺一人じゃあ景品も持て余すしな! 高価過ぎるものもないみたいだし、本日最後のお楽しみだと思ってくれ!」
食事を終えた後で帰ろうとした僕たちは、そこでお店の人に商店街で行われている福引を教えてもらった。
結構な大人数で食事したこともあり、これまた結構な回数の福引ができそうだということで、全員で会場に向かい、現在順番で引いている真っ最中というわけだ。
ちらっと景品一覧を見た感じ、先生の言う通り、超高価と言えるような景品はない。
そもそも当たった景品に関しては田沼先生に渡すつもりだし、ハズレの日用品やお菓子なんかが多く当たり過ぎたら貰おうかな? くらいの感覚でみんな福引を楽しんでいた。
「うおおおおおっ! 新型ゲーム機、当たれぇぇっ!!」
「これだけはっ! これが当たったらどうにか自分のものにしたい!!」
「俺のこの手が真っ赤に燃える! 当たりを掴めと轟き叫ぶぅっ!!」
「騒がし過ぎるぞ、お前ら。盛り上がるのはいいけど、もうちょい静かにしろって」
……とまあ、一部のメンバーは一等の新型ゲーム機を当てようと躍起になっているみたいだが、全員揃って敗北し、崩れ落ちている。
ポケットティッシュやらラップやらサラダ油やらが数多く当たる中、先生と話していた僕の順番が回ってきた。
「雄介、残りはお前だけっぽいぞ。早く引いちまえよ」
楽人に声をかけられ、小走りでガラポンへと向かう。
その最中に改めて景品を確認した僕は、二等に『お米一年分』の文字が書かれていることに気付き、ちょっと欲が出してしまった。
(お米、いいよな~。最近値段が上がってるし、ここで当てられたら母さんも喜ぶだろうな~……)
主食のお米は毎日の食事になくてはならないものだ。ここで一年分のお米を当てられたら、家計も大助かりだろう。
ぶっちゃけ、こっちの方が一等に相応しい気もしたが、やっぱり新型ゲーム機の方がインパクトがあるからお米は二等になったのだろうか?
何にせよ、当選確率が上がるのなら僕としては嬉しいなと思いつつ、僕はハンドルを握ってゆっくりと回していく。
「頼む雄介! 俺たちのためにゲーム機を当ててくれ……!!」
「お前が当ててくれたら田沼先生にお願いして買い取らせてもらうから! やりたいゲームが山ほどあるんだ!」
「無茶言うなって、そんな簡単に引けるわけないだろ?」
左右から祈りを捧げて(プレッシャーをかけるとも言う)くる弟たちにツッコミを入れている間に、ガラポンから玉が転がり出てきた。
弟たちは一等を示す金色の玉を、僕は二等の銀色の玉が出てくることを期待したのだが、残念ながら出てきたのはそのどちらでもない、桃色の玉だ。
流石にそう都合よくはいかないかと当たり前のことを考える僕であったが、カランカランという大きな鐘の音を聞いてびっくりしてしまった。
「おめでとうございます! 三等が出ました~!」
「えっ、三等!? マジで!」
「雄介、お前ツイてるな~……!」
自分でも驚きの当選に唖然とする僕へと、楽人たちが祝福の言葉を投げかけてくる。
物欲センサーのせいで一等と二等は当たらなかったみたいだが、完全にスルーしていた三等がすり抜けてくれたみたいだ。
問題は景品が何かということなのだが……と考える僕へと、係員さんが小さな長方形の箱を差し出してくる。
「はい! こちら景品の映画&食事のプレミアムペアチケットです! おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます……あの、先生。なんか当たっちゃいました」
内容はよくわからないが、なんだかプレミアムな物が当たってしまったようだ。
とりあえず先生に渡そうと思った僕であったが、田沼先生は小さく首を振ってから言う。
「いや~、当ててくれたのは嬉しいんだが、受け取ってもな……俺はしばらく忙しいし、どこかに出かける時間もなかなか取れないだろう。そうこうしてる間にチケットの期限がきて、無駄にするって未来が簡単に想像できるからな……」
そう言われてみればその通りで、先生はバスケ部の活動再開や諸々の説明のために動いている真っ最中だ。
時間もなかなか取れないだろうし、仮に遊びに行くことができても教え子たちの現状に思うところがあって、素直に楽しめないだろう。
「だからいいよ。それは尾上が受け取ってくれ。他のみんなも当てた景品は持ち帰っていいからな!」
「い、いや、流石にそれは――!」
「いいんだよ! ほら、ボランティアに参加したお前たちに神様がご褒美をくれたと考えろ! ちょうど次の土曜日はいい夫婦の日だし、七瀬と一緒に楽しんでこい!」
「……雄介、いいんじゃねえの? 先生もここまで言ってくれてるし、受け取っちまえよ」
申し訳なさを感じる僕であったが、先生や楽人からそう促されると、景品を固辞することもまた失礼な気がしてきた。
ここはもうありがたく受け取るかと覚悟を決め、先生へと頭を下げながら感謝の言葉を述べる。
「……でしたら、お言葉に甘えて頂きたいと思います。本当にありがとうございます、田沼先生」
「おう! まあ、その、なんだ。面倒なことになるかもしれないから、このことはこの場にいるメンバーだけの秘密ってことにしてくれよ?」
という感じで、食事会とその後の福引も無事に終わり、僕はプレミアムなチケットを手に入れた。
どこがどうプレミアムなのか? その答えを、僕は翌週のひよりさんとのデートで知ることになる……。