ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
ひよりさんと久しぶりのデート
「雄介くん、おはよう!」
「おはよう、ひよりさん。やっぱり朝は冷えるね」
迎えた次の土曜日、十一月二十二日。僕はひよりさんと久々のデートを楽しもうとしていた。
福引で当たったプレミアムチケットに関しては詳しく調べていないが、映画館とカフェで使用可能と裏面に記載があったので、今日はそこを回るつもりだ。
まずは映画館から……ということでお目当ての映画の上映時間を調べ、朝から出掛けることにした僕たちは、家の前で合流すると共にのんびりと歩き出す。
登校時間よりかは遅いとはいえ、まだ寒さの残る冬の朝。僕は上も下もばっちり着込んでいるが、ひよりさんは若干防御力が薄い格好をしている。
上半身は黒のタートルネックシャツの上からやや厚手の白いアウターを重ね着しているから寒くはなさそうなのだが、問題は下半身だ。
ピンク色のミニスカートとニーソックスの組み合わせというコーディネートは、学校の制服を着ているよりかは温かそうだがやっぱり寒そうに見えた。
「大丈夫? 寒くない?」
「平気だよ~! 割と温かいし、今日は屋内デートだからね! それよりどう? あたしの絶対領域!!」
そう言いながらひよりさんがスカートとソックスの狭間にある素肌の太腿を指差す。
少しむちっとしているその部分がソックスに締め付けられ、その上に乗っている様を目にした僕がなんともフェチズムあふれるその光景にどう言葉を返すべきか悩む中、にししと笑ったひよりさんが満足気に言った。
「ふふふ……! 雄介くんのためにサービスした甲斐があったよ! やっぱり尻フェチは太腿にも癖を感じるんだな~……!」
「否定はしないけど、尻フェチってところは否定させて。まったく、もう……!!」
心配した結果、見事にひよりさんの術中に嵌ってからかわれる羽目になった僕は羞恥を誤魔化すようにそう呟きながら手を差し出した。
笑顔のひよりさんにその手を掴まれた僕は、彼女の歩幅に合わせてゆっくりと駅に向かって歩き出す。
「今日は色々楽しみだね! なんてったって、プレミアムなデートだしさ!」
「うん。どこがどうプレミアムなんだろうね?」
カフェに関しては出てくる料理が豪華なのだろうが、映画館のプレミアムってなんなんだろうかという興味がある。
なので、敢えて何も調べずにサプライズを楽しもうということにした僕たちは、ほぼノープランで本日のデートに臨んでいた。
「それに、久しぶりのデートだしね。最近はバスケの練習ばっかりだったから、こうして二人きりで過ごせて嬉しいよ」
「あたしもだよ。まあ、学校とか家で毎日顔を合わせてるけどさ、やっぱりデートって特別感があるよね」
ここ最近の休日は大会に向けて練習ばかりしていたから、ひよりさんと二人で遊びに行くことができなかった。
久々のオフに相応しいデートができたらいいなと思いつつ、彼女の小さな手を握り締めた僕は心の内を吐露する。
「最近、ひよりさん成分を補充できてなかったからね。なんかこう、寂しかったっていうか、物足りなかったっていうか……」
「ふふっ……! 実はあたしも同じ気持ちだったりして……!」
楽しそうに笑ったひよりさんが、僕を見つめながら距離を詰めてくる。
手を握るだけでなく、僕の腕に抱き着くように体を寄せてきたひよりさんが、目を細めながら言う。
「今日はいっぱい、二人きりの時間を過ごそうね。今日までの物足りなさなんて吹き飛ばしちゃうくらいに楽しもうよ」
無邪気に笑いながらの言葉と、手と腕から伝わってくる彼女の体温から甘さを感じた僕が顔を赤らめる。
同時に、僕も今日までひよりさんを寂しくさせた分の埋め合わせをするぞと思いながら、大きく頷いた。