ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
(ど、どうしてこんなことに……?)
焼肉パーティーの開始から数時間後、天気は僕たちの想像を遥かに超えた荒れ模様を見せていた。
近隣の地域には大雨、暴風警報が出ており、外を見ても激し過ぎる雨と風を前に人も車も全く見えない状況だ。
そんな状況だから……結局、ひよりさんはうちに泊まることになった。
タクシーの配車やひよりさんのご両親に迎えに来てもらえないかと色々手を打とうとしたが、全部が無理だと判明した後で致し方なくといった感じだ。
母さんはひよりさんのご両親にお話をしたいと言っていたが、残念ながらそれも叶わなかった。
高校生だから自分の判断である程度の行動ができるわけだが、高校生だからという問題点もある。
それでも、流石にこの雨の中を強引に帰らせるわけにもいかず、突然決まったひよりさんのお泊まりを僕も受け入れざるを得なかった。
そして現在、僕はバスタオルと着替え用のTシャツとハーフパンツを手に、脱衣場に居る。
薄い扉を隔てた先からはシャワーの音が聞こえてきていて、そこで動く人影を見て取った僕は一気に緊張感を高めながら、口を開いた。
「あの、ひよりさん! き、着替えとタオル、持ってきたから……!」
「あっ! ありがとう! ごめんね、迷惑かけちゃってさ」
「し、仕方がないよ、こんな状況じゃ。それよりその、この着替え、僕が中学の頃に使ってた練習着だから、少しサイズが合わないかもだけど……」
「気にしないって、そんなの! 汚れた服で寝なくて済むんだから、本当にありがたいもん!」
シャワー音が止まった扉の奥、風呂の中からひよりさんの声が響く。
この薄い扉一枚を隔てた先には裸のひよりさんがいて、僕は今、そんな彼女と会話をしているのだと思うと、どうしても緊張が収まらない。
どうしてこんなことになっているのだろうか? あまりにも急展開過ぎて、もう思考が追い付かない。
そう思いながら持ってきた着替えを適当な場所に置こうとした僕は、脱衣場に落ちている物を目にして、思わず後退ってしまった。
「~~~っ!? うわっ!?」
「わっ!? どうしたの、雄介くん!」
「あっ! えっと、その、ご、ごめんなさいっ! ホント、ごめん!!」
驚いて後退ったせいで壁にぶつかり、大きな音を出してしまった僕へと何があったのかを聞いてくるひよりさん。
そんな彼女へと謝罪する僕であったが、この言葉には驚かせたこと以外にももう一つの意味があった。
僕が着替えを置こうとした床。そこに無造作に放り投げられてあった物。
洗濯ネットに入れられているそれは、ひよりさんがほんの少し前までつけていたであろう下着だ。
薄いオレンジ色をしていて、フラワーレースが付いているかわいらしいデザインをしたそれを見つめながら、硬直してしまう僕。
事故とはいえ、罪悪感が急速に膨れ上がっていく中、扉越しに僕の異変を察知したであろうひよりさんが声をかけてきた。
「雄介くん、どうかした? 何か様子が変だけど……?」
「……ごめん。着替えを置こうとしたら、ひよりさんのその、下着を偶然見ちゃって……」
罪悪感から嘘が吐けなかった僕は、正直に自分の罪を告白することにした。
ひよりさんも流石に怒るだろうと思っていたのだが……その予想に反して、彼女は大声で楽し気に笑いながら言う。
「あははははっ! な~んだ、そんなことか! 気にしないで大丈夫だよ!」
「き、気にしないでって、無理だよ! っていうか、流石にノリが軽過ぎだってば!」
大爆笑しながらのひよりさんの言葉に、僕は流石にツッコミを入れざるを得なかった。
もちろん、ひよりさんに怒られて嫌われるよりかは何倍もいいが、こうして軽く許されるとそれはそれで心配になる……と思う僕へと、声を落としたひよりさんが静かな声で言う。
「本当に大丈夫だよ。だって、
「えっ……!?」
ひよりさんのその言葉に、僕の心臓がドクンッ! と跳ね上がる。
見せるために、わざとここに置いておいた? それってつまり、どういう意味だ?
僕をからかうためにそんなことをしていたとしたらやり過ぎだし、そうじゃないとしたらそれは――と考えたところで、静かだった風呂場から再びひよりさんの笑う声が聞こえてくる。
「ぷっ! あははははっ! 冗談だよ~! 真理恵さんにネットに入れて他の服と別々にしておいてって言われてたのに、うっかりその辺に置きっぱなしにしちゃっただけ! ホント、雄介くんはからかい甲斐があるな~!」
「じょ、冗談って……本当に、もう……!!」
やっぱりからかわれていただけかと思いつつ、一気に脱力してしまった僕が大きなため息を吐く。
そんな僕のことを、ひよりさんはなおもからかってきた。
「いや~! あたしのミスのせいでドキドキさせちゃってごめんね! でもほら、ラッキーだったでしょ?」
「そんなふうには思えないって! ただただびっくりしただけだよ!」
「あはは、雄介くんらしいな~! 普通、こんなロリ巨乳体型の女の子の下着が放置されてたら、これでもか! ってくらいガン見しない?」
その問いに関しては否定できないが、その場面に実際に遭遇した僕の答えはNOだ。
恥ずかし過ぎるし、罪悪感もすごいしで、そんな真似ができるわけないではないか。
「しないし、できないって。僕の性格はわかってるでしょ……?」
「うん、そうだね! そういう雄介くんがあたしは好きだよ!」
楽し気に笑いながらのひよりさんの言葉に、ちょろい僕はまた心臓を高鳴らせてしまう。
もうこれ以上は色々とマズいし、母にも注意されかねないと考えた僕は持ってきた着替えを置くと、ひよりさんへと言った。
「とにかく、着替えとタオルはここに置いておくから! ごゆっくり!!」
「ふふっ! ありがと! お言葉に甘えて、のんびり温まらせてもらうね!」
ひよりさんの言葉を背に、僕は脱衣場を出ていく。
この時点でもう色々と恥ずかしくて仕方がなかったのだが、ひよりさんのからかいはまだまだ序の口だったようで――?