ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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甘え合戦の果てに……!

 その言葉に顔を上げた僕の目に、ほんのりと頬を染めながら微笑むひよりさんの顔が飛び込んでくる。

 今の今まで自分が彼女の胸に抱かれていたことに気恥ずかしさを覚えながらも小さく深呼吸した僕は、改めてひよりさんの小さな体を抱き締め直すと唇を重ね合わせた。

 

「んっ……♥」

 

 喉を鳴らしたひよりさんのくぐもった声が、振動となって伝わってくる。

 数十秒……あるいは、もっと長い時間唇を重ね合わせた僕たちは、どちらともなく顔を離して見つめ合った。

 

「……甘いね。ソフトクリームの味だ」

 

「あはっ! ちょっと前に食べてたからね!」

 

 少し冷たい唇から伝わってくるミルクのような甘さを感じた僕がそう言えば、ひよりさんは楽し気に笑ってぺろりと舌を出した。

 このキスで僕の番は終わったと判断したのか、今度はひよりさんが自分の唇を僕の唇へと重ねてくる。

 

 ふにゅり、という柔らかさと先ほどより温かくなった唇の感触を感じた僕へと、顔を離したひよりさんが笑みを浮かべながら言った。

 

「キスの味、さっきより甘くなくなってたでしょ?」

 

「……僕が慣れてきたから、ドキドキしなくなってるってこと?」

 

「そうじゃなくって……ソフトクリームの味が、雄介くんに上書きされてるってこと」

 

 その言葉は少しだけ、僕の心の中の男としての部分をくすぐってきた。

 蠱惑的に微笑む彼女の体を衝動的に強く抱き締めた僕は、三度目のキスを交わす。

 

 びくんっ、と一瞬震えた彼女の小さな体を逃がさないとばかりに固く抱き締め、数十秒よりもずっと長い時間唇を重ね続けて……息が続かなくなるギリギリまでキスし続けた僕がゆっくりと唇を離せば、ぷはぁという音と共にひよりさんが深く息を吸い始めた。

 

「ぷはぁ……♥ は~っ、は~っ……♥」

 

 酸素を求めて深呼吸を繰り返す彼女が吐き出す息の熱さが、伝わってきた。

 そこに隠し切れない甘さがあることに気付いた僕へと、ひよりさんが言う。

 

「今のキス、すごかったね……今までで一番長かった……」

 

「ごめん、夢中になり過ぎちゃった。息苦しかったよね?」

 

「ちょっとだけね。ぎゅ~っ、って思いっきり抱き締められながらキスされたから、雄介くんに食べられちゃうかと思った……♥」

 

「っっ……怖かった?」

 

「ふ、ふふ……っ♥♥♥」

 

 衝動のままに唇を重ねてしまったことを反省する僕がそう問いかければ、ひよりさんは意味深な笑みを浮かべてきた。

 そのまま、わずかに開いている僕の口に唇を重ねると、小さな舌を押し込んでくる。

 

「ん、んん……っ」

 

 ほんの数秒、舌先が触れ合う程度のキスだった。

 驚く僕とキスを交わしたひよりさんはすぐに顔を引くと、ふぅ、と甘い吐息を漏らしながら言う。

 

「今のあたし、怖がってたり、嫌がってるような顔、してる? そんなことないと思うんだけどな……♥」

 

「ぐっ……!?」

 

 蕩けるような笑みを浮かべるひよりさんのその言葉が、僕の心臓を貫いた。

 甘い……本当に甘く、僕にこうされることを喜んでいる彼女を見ていると、歯止めが利かなくなりそうになる。

 

 甘えると言っておきながら僕を甘やかすことを喜んだりするところや、胸やお尻をネタにからかってくるところもそうだが、ひよりさんは攻めっ気が強いと見せかけて実は誘い受け的な面が強い。

 底なし沼に嵌っていくように彼女の魅力に心を掴まれてしまっている僕は、自分を律するようにひよりだんを思い切り抱き締める。

 

「んんっ……! もう、キスはしないの?」

 

「これ以上は、マズい……自分が、抑えられなくなりそうだから……!!」

 

 そういうことは、もっとちゃんとした形で迎えたい。こんな場所で衝動に身を任せてじゃなくて、後悔をさせない形でしたい。

 そんな僕の想いを汲み取ってくれたのか、優しく僕の頭を撫でてきたひよりさんは、静かな声で言う。

 

「クリスマスにバレンタイン、ホワイトデーもそうか。パッと思い付くだけでもこれだけの機会があるんだもん。焦らなくてもいいよね」

 

「付き合って一年記念日とか、そういう日もありだと思うけど……」

 

「あ~、なるほど。そっちの方が親に警戒されなくていいかも」

 

「……そこまで僕の理性が持つかどうかが問題なんだけどね」

 

「~~~っ!!」

 

 ぼそりとこぼした僕の呟きに、ひよりさんが楽しそうに笑いながらぽこぽこと僕の肩を叩いてくる。

 怒っていたり抗議しているわけではなく、嬉しさを表すように僕を叩く彼女をもう少し強く抱き締めながら、自分を落ち着かせるように息を吐く。

 

「一応言っておくけど、あたしが限界を迎える可能性もあるからね? 覚悟しておくように!」

 

「あはは……肝に銘じておきます」

 

 そうやって少しずつ自分たちの内側で暴れていた衝動が落ち着き始めた頃に、いつも通りの面白おかしいやり取りを繰り広げて甘え合戦は終わった。

 でも、改めてこういう時間を過ごしたことで、僕たちは自分たちが恋人としてステップを踏めていることを確認し、同時に自覚する。

 そろそろ()()()()()()をしてもおかしくはないんだと……改めて自分たちの関係を振り返り、恋人としての次の段階に進む覚悟を決め始めた僕たちは、自分たちの未来を想像して胸をときめかせていた。

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