ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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元凶の参戦

「えっ!? ええっ!?」

 

 その報告に、僕は思わず大声を出してしまった。

 どういうことなのかと詳しい説明を求める僕たちに対して、鉢村さんは自分が見てきたものを報告する。

 

「トーナメント表を見に行ったら、なんか見覚えのある奴がいてさ……気になってよく見てみたら、紫村とバスケ部の部長だったんだよ!」

 

「そ、それだけじゃ本当に大会に参加してるかどうかわからなくないか? ワンチャン、心を入れ替えて俺たちの応援に来た可能性も無きにしも非ずだし……」

 

「いや、残念だけどそれはないと思うな……」

 

 そう言いながら、鉢村さんがスマホの画面を見せてくる。

 そこには彼女が撮影したトーナメント表が映っており、鉢村さんはさらに僕たちのチームと正反対のブロックに書かれているとあるチームを拡大して表示してきた。

 

 僕もみんなと一緒にスマホの画面を覗き込めば、そこに僕たちの学校の名前&バスケットボール部というそのまま過ぎるチーム名が飛び込んでくる。

 それはつまり、ここにいない藪瀬先輩を含む大勢のバスケ部がもう一つのチームを作り、大会に参加した……ということを意味していた。

 

「……これ、俺たちのチーム名だったりしません?」

 

「わかってると思うけどちげえよ。バスケ部に所属してない雄介やお前がいたから、高校の名前もバスケ部ってワードも使わないって決めてたんだ」

 

 引き攣った表情でそう質問した間沼くんへと、楽人が深刻な様子で答える。

 スマホの画面を見るその横顔は、先ほどまでの楽し気で落ち着いたものとは大きく変わっていた。

 

 ピリピリとした緊張感が伝わってくる表情を浮かべているのは、楽人だけではない。

 バスケ部に所属している全員が、何か思うところがあるが故の険しい表情を浮かべていた。

 

「なんで部長たちはもう一つのチームを作ったんだよ? 大会に出るっていうなら、俺たちのチームに入ってくれれば良かったのに……!」

 

「意味わかんねえよ。何がしてえんだよ……!?」

 

「絶対これ、紫村さんが焚きつけただろ? またあの子の言いなりになって、マジで何やってんだよ?」

 

「……あの、部長さんたちも改心してて、だけど気まずくてこっちのチームに参加できないから、残ったメンバーでチームを組んで出場したとか、そういう可能性は……?」

 

「残念だけどないよ。チームに紫村二奈がいて、他のマネージャーさんたちがいないなら……それは絶対にあり得ない」

 

 僕は紫村二奈という人間の悪辣さをよく知っている。人から彼氏を奪ったり、彼氏持ちの身でありながら他の男にアプローチを仕掛けたり、魅了した男性を上手く使って他者を貶めようとしたり……簡単に改心するような、そんな人間じゃあないことをよく理解している。

 これは僕の悪意に満ちた偏見による判断かもしれない。だけど、彼女が改心していないというのは、他のマネージャーさんたちがチームに参加していないという事実が証明している。

 

 もしも紫村が本気で改心していたのなら……まずは彼女たちに謝罪するはずだ。

 自分が他のマネージャーさんたちから嫌われていることは紫村も理解しているはず。自分がチームに参加すれば、彼女たちは戻ってきてはくれないということもわかっていなければおかしい。

 

 責任を取るのならば、まずはそこをどうにかするべきだ。

 頭を下げ、説得し、和解をして……そうやってマネージャーさんたちとのわだかまりを解消することが、紫村がすべき最初の一歩であるはずだ。

 

 だが、チームには紫村以外のマネージャーは参加していない。紫村は彼女たちに謝罪していない可能性が高い。

 謝罪していたが許してもらえなかったという可能性もあるが……紫村の性格を考えれば、まず謝っていないだろう。

 

 要するに、文化祭の時と同じだ。

 あいつはまた、自分の手足となって動く男たちを使って自分の思惑を達成しにここにやって来た。

 そしてその目的は間違いなく……と考えたところで、ひよりさんが僕の上着を引っ張る。

 

「ねえ、雄介くん。あいつ、もしかして……!?」

 

「……うん、そうだと思う」

 

 青い顔をしたひよりさんも、僕と同じ結論に達したようだ。

 そうしてから二人で楽人たちの様子を確認すれば、思った通りに彼らは困惑したり、怒っていたりと、さっきまでの楽しい雰囲気を一変させた複雑な感情をそのまま出したかのような表情を浮かべていることがわかる。

 

 完全に意識の外においてあった部長たちの存在が、今になって突然無視できないところに出現した。

 否応なしに意識してしまっている仲間たちの顔を見れば、もうこの時点で紫村の計画がほとんど成功してしまっていることがわかる。

 

(どこまで僕たちに付き纏うつもりなんだ……?)

 

 もう完全に私怨を晴らすために動いているとしか思えない紫村の行動に、僕もまた嫌なものを感じ、ゴクリと息を飲むのであった。

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