ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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作戦、だいせ~こ~♡(二奈視点)

(作戦、大成功~っ! マジで最高~っ!!)

 

 俵山に吹き飛ばされた尾上を見つめながら作戦の成功を喜ぶ私は、浮かびそうになる笑顔を押し殺すのに必死だった。

 

 顔面に思い切り頭突きを叩き込まれた尾上の左目は赤黒く腫れていて、とても痛そうでグロテスクで無様な顔になっている。

 審判によってプレーが止められ、遊佐たちが倒れる尾上に大慌てで駆け寄り、容態を確認する中、私はあまりにも見事な作戦の決まり具合に心の中でガッツポーズを決めていた。

 

(あんたらの弱点はわかってんのよ! 尾上を潰したら、もうこっちのデカい選手に太刀打ちできる奴なんていないでしょ!?)

 

 遊佐たちのチームメンバーを見れば、背が高い奴がいないことなんて一発でわかる。

 唯一の例外が尾上で、インサイドの守りをはじめとしたディフェンスの要としてあいつは大活躍していた。

 

 それは逆にいえば、尾上さえ排除すれば相手のディフェンスは完全に崩壊することを意味している。

 尾上がいなくなってしまえば、インサイドのプレーを止める選手も抜かれたディフェンスのカバーに入れる奴も消えてしまうということだ。

 

 それこそが遊佐チームの最大の弱点……色んな意味で厄介な尾上が消えれば、あいつらはもうただのチビ共の集まりでしかないのである。

 だから私はラフプレーで尾上を負傷させ、強引に試合から追い出すという有効なことこの上ない作戦を指示した。

 

 まあ、他にも理由はあるが……それは今はどうだっていい。

 肝心なのは私の計画は全て上手くいって、尾上たちが窮地に立たされているということなのだから。

 

 この作戦の肝は、下手くその俵山に実行役を任せたという部分だ。

 単純に重大な違反として退場させられても痛くない人間ということもそうだが、ギリギリ『下手くそ過ぎて故意じゃないプレーとして激突してしまった』と考えられなくもない選手という点が大事だった。

 

 今も藪瀬と俵山は審判から質問されているが、「こいつ、場慣れしてないから大人数の前でプレーすることに緊張してたみたいで……」みたいなことを言いながらショックを受けたふりをしているだけで、オフェンスチャージ以上の罰則は受けなくて済む。

 最初のオフェンスの時に派手にすっ転んだことも幸いして、審判も俵山がわざと頭突きを食らわせたのか、シンプルに下手くそ過ぎたのかが判断できないのだろう。

 

 これも私の計画通り。本当に、何もかもが上手くいき過ぎて困っちゃうくらいだ。

 

(ホント、馬鹿な男……! 七瀬なんて捨てて私に従っておけば、こんな目に遭うこともなかったっていうのにさ……!)

 

 仲間たちに肩を借りてベンチへと引っ込む尾上の姿を見ながら、私は屈辱の記憶を蘇らせる。

 「僕に近付くな」……私の誘惑に眉一つ動かさずにそう吐き捨てたあの男には、この程度の罰でも生温い。

 

 この後、自分が抜けたチームがなすすべなく打ち負かされ、今日までの努力全てが無駄になる様を間近で見て、絶望して……それでようやくトントンといったところだ。

 

 尾上も、遊佐も、七瀬も、あっちのチームの連中全員、不幸になればいい。

 今までの自分たちの全てを否定されて、最悪の思い出として今日のことを記憶に刻まれるあいつらの未来を想像すると、愉快で愉快で仕方がなかった。

 

 そうやって笑いを堪える私の耳に、突如として怒気を孕んだ声が聞こえてくる。

 顔を上げれば、審判たちから質問されていた俵山たちに向け、怒りの形相を浮かべた遊佐が食ってかかっているところだった。

 

「お前ら、それで満足かよ……!? これがお前らのしたかったバスケなのかよ!?」

 

 多くの観客たちが集まっていることも忘れて、怒りのままに俵山と藪瀬部長へと吠える遊佐。

 しかし、私からしてみればその姿は負け犬の遠吠えでしかない。

 

「わかってんだよ。今の、わざとだろ? あの馬鹿に指示されて、雄介を怪我させるためにやったんだろ!?」

 

「そ、そんな……! 今のは、わざとなんかじゃ……」

 

「俵山も部長も、下手な芝居すんじゃねえよ! 馬鹿女に振り回されてバスケ部を活動停止に追いやったかと思えば、次はわざわざ大会に出張ってきてこんなラフプレーまでしやがって……! どれだけバスケットを馬鹿にすれば気が済む? お前らは、こんなバスケをしても何も思わねえのかよ!?」

 

「君、落ち着きなさい」

 

「雄介はな、バスケ部のメンバーじゃねえのに今日まで俺たちに付き合ってくれたんだ。凹んでる俺たちのためにバスケができる機会を見つけてきてくれて、一緒に練習まで付き合ってくれて……! 部外者がそこまでやってんのに、誰よりも頑張らなくきゃいけない部員がこんな真似して、恥ずかしいと思わねえのか!?」

 

「……審判さん。こういう、相手への侮辱的な行為って、ファールの対象でしたよね?」

 

 怒りが止まらない遊佐の言葉を受けた藪瀬部長が、審判へと問いかける。

 一応、これは彼の言う通りで、遊佐の行動はペナルティを受けるに相応しいもののはずだ。

 

 今は審判があいつの心情を理解しているせいか、反則を取らないでいるが……もう少し踏み込めば、流石に笛が鳴るだろう。

 私を馬鹿にしたことは許せないが、尾上と並ぶチームの主軸である遊佐もここで試合から排除されてくれれば、私にとってこれ以上に素晴らしいと思える展開はない。

 

 このままあいつも退場になってくれないかと期待しながら遊佐を見ていた私であったが、そこで相手側のベンチからペチャパイマネージャーが駆け寄り、あいつを止め始めた。

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