ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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第三ピリオド、開始!

 第三ピリオドはこちらの攻撃から始まる。

 出場メンバーに見慣れない顔がいることに相手チームのメンバーは多少驚いたようだが、僕と顔立ちが似ていることに気付き、弟だと理解したようだ。

 

 背こそ高いものの見るからにバスケに慣れていない二人はそこまで脅威ではないと判断したのか、藪瀬先輩たちをはじめとした一同は無駄な抵抗とばかりにニヤニヤと余裕の笑みを浮かべている。

 

「点取りまくってここで決めるぞ! 相手に逆転の可能性なんて感じさせるな!!」

 

 先輩が仲間たちに指示を出しつつ、ディフェンスに入ろうとする。

 その瞬間、彼の横をボールを受け取った間沼くんが駆け抜け、そのままゴールへと向かっていった。

 

「もう始まってますよ。気、抜き過ぎじゃないっすか?」

 

「えっ……?」

 

 完全に気を抜いていた藪瀬先輩は、間沼くんに一切反応できなかった。

 慌てた他のメンバーが彼を止めるべくカバーに入るも、間沼くんは丁寧かつ柔軟なドリブルでその間をすり抜けていく。

 

 想像以上に柔らかく鋭いドライブに対応できなかった相手を尻目に、レイアップシュートを決めた間沼くんは小さく息を吐いてから自陣へと戻ってきた。

 

「後半先制点、取ってきました。さあ、ディフェンスっすよ」

 

「ナイスだ、志乃! 点差を詰めるためにも一本集中して止めるぞ!!」

 

 楽人の声掛けに対して、間沼くんたちが大声で返事をする。

 まだ心は折れていないと、仲間たちの心強い反応に僕が拳を握り締める中、藪瀬先輩たちがボールを手に攻め込んできた。

 

「大丈夫かな、大我くん……? バスケ、体育でしかやったことないって言ってたけど……」

 

「僕の練習に付き合ってくれたりしたから、ある程度の基礎はわかってるはずだよ。大丈夫、信じよう」

 

 不安そうに弟たちを見守るひよりさんを安心させるように、僕は自分の意見を伝える。

 作戦を考えた結果、雅人はアウトサイドを守るシューティングガードを、大我は僕に代わってインサイドを守るセンターのポジションを担当することになった。

 ラフプレーを仕掛けられる可能性が高いインサイドでは、線が細い雅人では不安だという判断からだ。

 

 逆に、柔道部として鍛えられている大我はインサイドにいるだけで威圧感がある。

 動き自体もそこまで多くなくていいから、カバーとポジション取りに負けないことだけを意識してくれと僕は弟に伝えていた。

 

「確かに、大我くんのパワーなら相手に力負けはしないでしょ。どっちかっていうと心配なのは雅人くんの方じゃない?」

 

「私もそう思ってた。初心者だってわかったら相手もガンガン突っ込んでくるだろうし……」

 

 鉢村さんと熊川さんは大我よりも雅人のことを心配しているようだ。

 確かに、積極的なオフェンスを仕掛けてくる相手チームからしてみれば、バスケ素人の雅人は大きな穴に見えるだろう。

 そこを突いてこないわけがない、という二人の意見の正しさを証明するように、藪瀬先輩が雅人を抜いて一気にドライブを仕掛けてきた。

 

「っしゃ! 素人が俺を止められるわけねえだろ!!」

 

 緩急を活かした動きで雅人を抜き去った藪瀬先輩がどや顔を浮かべながら吠える。

 そのままゴールへと向かおうとした彼であったが……行く先を塞ぐように立つ仲間の姿を目にして、ぎょっとして動きを止めてしまった。

 

「んなっ……!?」

 

 ディフェンスがカバーに入ってくるのではなく、味方が邪魔をしてきたことに驚く藪瀬先輩。

 その隙を見逃さなかった雅人が、背後から彼のボールをカットする。

 

「ほいっ」

 

「あっ……!?」

 

 そんな気の抜けた声が聞こえたのとほぼ同時に雅人にボールを奪われた藪瀬先輩が呆然とした様子で呻く。

 雅人から楽人へ、そこから間沼くんへとパスがつながり、見事なカウンターを決めた僕たちはまた二点をもぎ取ることができた。

 

「おまっ!? なんでそんな場所にいるんだよ!? 邪魔だっつーの!」

 

「はぁ!? 邪魔ってなんだよ? お前がこっちに突っ込んできたんだろ!」

 

 攻撃の邪魔をしてきた味方に怒鳴る藪瀬先輩であったが、相手もまた逆に彼に怒鳴り返している。

 そんな相手チームの様子を見たひよりさんが、ほっと胸を撫で下ろすと共に言った。

 

「良かった~……! 相手が上手く連携できてないおかげで助かったよ~……!」

 

「でもやっぱり危ないね。次も運が味方してくれるとは限らないし……」

 

 相手の攻撃を防げたことを喜びつつも、油断はできないとひよりさんと熊川さんが話し合う。

 ハラハラしながら雅人を見守る二人の前で、またしても藪瀬先輩が1on1を仕掛けてきた。

 

「ちっ……! 次こそは……!!」

 

 自分の前に立つ雅人の動きを見切り、再びドライブ。

 今度はインサイドの味方を避けてやや大回りに突っ込もうとした先輩であったが、その行く先を間沼くんが塞ぐべくカバーに入った。

 

「ナイスカバーだ、志乃!」

 

「くっ、くそっ!」

 

 またしてもドライブを止められた藪瀬先輩の手からボールを奪うべく、間沼くんが手を伸ばす。

 見事にボールを弾くことには成功したが、そのままコート外に出てしまったためにまだ相手の攻撃は続くことになってしまった。

 

「間沼くん、ナイス! よく見てた!!」

 

「大変かもしれないけど、この調子で雅人くんを助けてあげてね!」

 

 プレーが止まっている最中に見事なカバーをした間沼くんへと鉢村さんと熊川さんが声援を送る。

 しかし、間沼くんは彼女たちの声に困惑しているような表情を浮かべながら首を振るだけだ。

 

 味方をカバーする見事なプレーを見せた彼が、どうしてそんな反応をしているのか?

 その理由を理解している僕は、緩く握った手で口元を隠し、小さく微笑みながら再開されたプレーを見守っていく。

 

 

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