ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんと僕と、大会が終わった後のみんなの話
大会が終わって、一週間後


 ――大会から、一週間ほどの時間が流れた。

 地域バスケットボール大会に見事優勝した僕たちの活躍は地元のメディアに取り上げられ、学校でもちょっとした話題を呼んだようだ。

 

 決着の瞬間、楽人からのパスを受け取って決めた僕のダンクシュートの写真は大会を主催した地元組織のサイトに掲載され、実際にその現場を目にした人たちの話も相まって、学校中に一気に広がった。

 色んなところでひそひそうわさ話をされるようになって少し居心地は悪かったが、ひよりさんから「悪いことをしたわけじゃないんだから堂々としてればいいんだよ!」と言ってもらえたことで気が楽になったし、実際その通りなので今は気にしないようにしている。

 

 ついでに僕の目の怪我に関してだが、病院に行った結果、大体完治するまで三週間くらいかかると診断された。

 週一で病院に通ってほしいとも言われたし、実際目は大事なのでしっかり治療するつもりだが、失明や視力低下といった重大な事態を引き起こす心配はないとのお言葉を頂けてほっとしている。

 

 ただ、残念なのは目の治療期間を考えると、クリスマスにどこにも行けなくなってしまうことだ。

 しばらくは眼帯が外せないだろうし、片目が塞がった状態で出掛けるというのは地味に危ない。その頃には腫れは引いてくれているかもしれないが、大事を取って大人しくしていろとも病院の先生に言われてしまった。

 

 ちなみにひよりさんはこのことを残念がりながらも仕方がないと笑顔で言ってくれた。僕に申し訳なさを感じさせないために配慮してくれたのだと思う。

 「まあ、大体悪いのは俵山くんと紫村だし、恨みはあの二人にぶつけるよ!」とも笑顔で言っていたが、それはそれで良くない気がするので止めておいた。

 

 そして……名前が出た俵山くんや紫村をはじめとする、楽人たち以外のバスケ部のメンバーについても話しておかなければならないと思う。

 

 僕たちの活躍が学校で話題になったのだ、当然ながら決勝戦の対戦相手だった彼らの話も学校中に広まっている。

 大会中に見せたスポーツマンシップに欠けた言動、俵山くんの僕や楽人に対するラフプレーや、滅多に出ることのないディスクオリファイングファウルを受けて退場したこと。

 そういった良くない部分が取り上げられ、悪評が広まってしまった先輩たちだが、本当にマズかったのは自分たちのチーム名に学校と部活の名前を入れてしまったことだ。

 

 現在、バスケ部は活動停止処分を言い渡されている状態。僕たちのように非公式の大会に出たり、ボランティア活動をするためにメンバーが集まることがあっても、そこで『○○高校バスケ部』という名前を公に出すことはご法度だ。

 藪瀬先輩たちはそれを盛大に破った上に、先に挙げたような言動を取ってしまった。これが大問題だと、生徒たちではなく先生たちの間で大騒ぎになってしまったのである。

 

 迅速かつ入念に調査を行った先生たちは、藪瀬先輩たちの諸々の悪事を知ると、彼らを呼び出した。

 僕と楽人も事情を知る人間として呼び出されたのだが、その場でのことはあまり思い出したくはない。

 

 激高した校長先生が直々に先輩たちを叱責する姿もだが、お説教を受けている藪瀬先輩たちの沈んだ表情は見ていられるものではなかった。

 おそらく、クラスでも散々な扱いを受けているのだろう。悪いことをしていない僕ですら、ひそひそ話の対象になって居心地の悪さを感じていた時期があったのだから、後ろ暗い事情を抱えている先輩たちの心苦しさといったら、もうとんでもないレベルであるはずだ。

 

 そうして怒られる先輩たちの中に、紫村二奈の姿はなかった。間違いなく、この事態を恐れて逃亡したのだろう。

 チーム名の決定やラフプレーなんかは間違いなく彼女が関わっているような気がするが、先輩たちが口を割らずに自分たちの責任だと言っているあたり、まだお姫様扱いされているようだ。

 

 藪瀬先輩たちが口をそろえて「自分たちが彼女を巻き込んだ」と証言しているが、多分もう全員がそんなことはないと確信している。

 処分を下す際には彼女も一緒に……と考えているから、先生たちも紫村がこの場に来なかったことはもうどうでも良いのだろう。

 

「問題を起こした生徒たちの停学処分と、バスケ部は廃部という形での処分で検討を進めています」

 

 という校長先生の言葉には、藪瀬先輩たちでなく僕と楽人も盛大に動揺した。

 ただ、楽人たち一部のバスケ部員の功績よりも藪瀬先輩たち大多数のバスケ部員のやらかしの罪の方が重い上に、一度部活停止という処分を受けた後でこの行動だ。

 校長先生の判断には妥当性しかなく、僕たちはどう反論すべきかわからずに迷うことしかできなかったのだが……そこで待ったをかけてくれたのが、田沼先生だった。

 

「待ってください、校長先生。どうか、こいつらに最後のチャンスを与えてやってください」

 

 藪瀬先輩たちのやったことは言い訳のできないことだ。しかし、全てを棒に振るほどの悪事でもない。

 部活停止処分を受けてから、自分もどう先輩たちと向き合うべきかわからずに迷っていた。そのせいで、今回の暴走を止めることができなかった……そう、田沼先生は深々と頭を下げ、今回の事態を招いた一因は自分にもあると、そう校長先生に言った。

 

「ここで重い罰を与えてしまえば、こいつらは立ち直れなくなってしまう。それに、遊佐たちはバスケ部の活動再開に向けて、今回の大会出場やボランティア活動を頑張ってきたんです。全責任は私が持ちます。どうか、情けをかけてやっていただけませんでしょうか」

 

 その懇願のおかげか、今回の一件に対して、バスケ部への処分はなしということになった。

 藪瀬先輩たちも厳重注意に加え、田沼先生と一緒に地域のボランティア活動をはじめとした様々なプログラムに参加するという形で停学を免れたようだ。

 

「もう一度やり直そう。お前は、それができる奴だって、俺はそう信じてるから」

 

 これだけの事件を起こしてしまった以上、もう藪瀬先輩たちはバスケ部に戻ってくることはできないだろう。

 田沼先生の温かい言葉に涙を流す彼も、それを理解しているはずだ。

 

 願わくば自分たちのために頭を下げてくれた恩師の姿を見て、彼らが変わってくれることを期待したい。

 もう紫村も近付いてこないだろうし、そうなれば洗脳に近しい彼女への感情も薄らいでくれるはずだと……そう、僕は思った。

 

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