ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
イラストレーター・瑠川ねぎ先生が描いてくださったひよりさんの素敵なイラストを小説情報の欄に貼っておきましたので、是非ともご覧になってください!
マジで本当にえっちくて素敵なんで!!!
「ん、んっ……!」
少しずつ微睡から意識を覚醒させながら、僕はゆっくりと目を開く。
昨晩はガタガタと震えていた窓は微動だにしていなくて、雨も風も止んでいることがわかった。
「んぁ、ふぁぁ……ん~……?」
そんな僕の隣で、眠そうなかわいい声が響く。
ややあって、むくりと上体を起こしたひよりさんを笑顔で見つめながら、僕は彼女に挨拶をした。
「おはよう、ひよりさん」
「ん? んにゅう……おはよ、雄介くん……」
まだ少し眠そうなひよりさんが目を擦る。
そうしながらはたと自分の右手を見つめた彼女は、まだ僕と手を繋ぎっぱなしであることに気付いたようだ。
「ふっ、ふふふ……っ! 結局、一晩中手を繋いだままだったんだね」
「そうみたいだね。ちょっと恥ずかしいかな」
昨日のやり取りを思い返しながら、お互いに照れ笑いしながら、そう話し合った僕らが手を放す。
少し惜しくはあったけど、いつまでもこうしているわけにはいかないし……きっとどちらかが勇気を出せば、またこうして繋がれるはずだと思う僕へと、ひよりさんが言う。
「う~……あたし的には寝起きの姿を見られる方が恥ずかしいかも。髪もぼさぼさだし、ブサイクだしさ」
「そんなことないよ。ひよりさんはいつだってかわいいって」
「えへへ~……! 雄介くんも言うようになりましたな~!」
嬉しそうに笑ったひよりさんが頭を掻きながら言う。
先に立ち上がった彼女に続いて起きることにした僕は、ひよりさんと共に洗面所に向かうと一緒に顔を洗って、歯を磨いていく。
「歯ブラシまで用意してもらっちゃって、何から何まで申し訳ないな~……」
「気にしないでよ。どうせ余ってたやつだし、大したことじゃないしさ。あ、ブラシとドライヤーも使う?」
「うん、この後で使わせてもらうね。にしても……う~ん、やっぱ髪伸びたな~……前髪が邪魔だ~」
そう言いながら自分の髪の毛を弄るひよりさんの姿を見て思ったのだが、確かに最初に会った時と比べて髪が伸びている気がする。
寝ぐせがついていることもあるのだろうが、ショートボブだった黒い髪はそれより少し長くなっているし、全体的な毛の量も増えているように見えた。
「言われてみればそうだね。そろそろ切りに行くの?」
「んん~……そうしたいけど、このタイミングで切ると失恋したからそうしたって仁秀に思われそうで嫌なんだよね……」
「じゃあ、いっそのこと伸ばす?」
「それもそれで柴村に近付こうと足掻いてるって思われそうで嫌だ……あっ! 今絶対、面倒な女だなって思ったでしょ!?」
「そうは思ってないよ。やっぱり女の子にとって髪って大切なものなんだなって、そう思っただけ」
ひよりさんの言葉を否定しつつ、苦笑を浮かべる。
タイミングとか、状況とか、色々考えなくちゃいけないことがいっぱいで大変だなと、やっぱりまだ江間の存在は彼女の中で残っているんだなと……そう僕が改めて思ったところで、母が顔を出した。
「おはよう、ひよりちゃん。ついでに雄介もおはよう」
「おはようございます、真理恵さん!」
「おはよう。実の息子をついで扱いするのって、母親としてどうかと思うよ?」
「ひよりちゃんの服、全部洗い終わってるからね。乾燥も終わってるから、いつでも着替えて大丈夫よ」
「ありがとうございます。じゃあ、とりあえず下着だけでも着けてきちゃおうかな……」
僕のツッコミを無視してひよりさんと話す母は、彼女の言葉に頷いて一旦引っ込んだ。
ひよりさんも後を追って消え、暫しした後で渡された下着を手に僕の部屋へと着替えに向かう彼女の後ろ姿を見つめる僕へと、母が声をかける。
「いい夜を過ごせたみたいじゃない。変なこともしてないみたいだし、一安心ね」
「そうやって心配するなら、最初から反対すれば良かったじゃん」
「そういう心配はしてないわよ。私の息子だもの、女の子を適当に扱うことはしないって信じてるからね。心配してたのはひよりちゃんの方。ちょっとだけ浮かない顔をしてたけど、今朝はすっきりしてたから、安心したわ」
流石は母、ということなのだろう。昨晩のひよりさんの焦りとか、そういうものを見抜いていたようだ。
その上であんな真似をさせたのは、息子である僕を信頼してのことらしい。
おかげでお互いに色々と話ができてすっきりできた。その部分に関しては、母の判断に感謝だ。
「大切にしてあげなさいよ。友達としても、他の何かだったとしてもね」
「……言われなくてもわかってるよ」
僕のその答えに、母は満足気に笑った。
そうした後、「冷蔵庫の中身のもの、自由に使っていいわよ」とだけ言い残し、二度寝をするために自分の部屋へと引っ込んでいく。
色々と気を遣ってくれたことや、二人きりの時間を作ってくれた母に改めて感謝しながら、僕はキッチンへと向かい、朝食を作り始めた。