ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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翌朝、僕だって甘やかしたい

「~~♪~~♪」

 

 休日の朝、久々に立った自宅のキッチンで上機嫌に鼻歌を歌いながら、やや厚めに切られた食パンを取り出す。

 同時に枚数も確認。人数分あることを見て取った後、今度は残りの材料を確認する。

 

 食パンの他にはベーコンとチーズ、メインとなる卵……忘れているものはない。

 調味料も用意して、それで問題ないと確認できた僕は、取り出した食パンの中心部分をスプーンで凹ませていった。

 

(うん、やっぱりこうしてると気分がすっきりするな……!)

 

 目の怪我のせいでここしばらくできていなかった料理をしていると、心が晴れやかになることを感じる。

 簡単な料理とはいえ、久々だからこそ心が躍るものがあるよな……と考える中、とてとてという足音と共にひよりさんが台所に顔を出した。

 

「ふぁぁ……おはよう、雄介くん……って、何やってるの!?」

 

「おはよう、ひよりさん。見ての通り、朝食を作ってるんだよ」

 

「危ないって! 火とか包丁とか、目を怪我したまま使うのはダメだよ!」

 

「大丈夫。火も刃物も使わない料理だからさ。ほら、顔洗って、歯を磨いてきなよ」

 

 慌ててそう言うひよりさんへと、笑みと共に言葉を返す。

 心配の要因になるようなものは使わないと言った僕のことを信じてくれたのか、少し迷った後でひよりさんは洗面所へと向かっていった。

 

(さて、それじゃあ愛しの彼女のために美味しい朝食を作りますか!)

 

 多分、このくらいの時間に起きてくるだろうなという予想が的中したことを喜びながら、僕は料理を続ける。

 スプーンを使って食パンの中心部分に作った凹みの中に、ベーコンとチーズ、卵を上手く投入。程良く塩を振ったら、そのままオーブンにイン。

 

 加熱され、蕩けていくチーズ。カリカリになっていくベーコン。そして、固まっていく卵。

 覗き窓から中の様子を窺いながら、卵が焦げ付かないくらいに温めたところでオーブンを開け、最後の仕上げにブラックペッパーを少し振る。

 

 ちょうどそのタイミングで朝の支度を終えたひよりさんがキッチンに顔を出し、漂ういい香りに鼻をひくつかせてきた。

 

「うん、完璧! 今日の朝ご飯、ベーコンエッグトースト、完成だよ!」

 

「えっ!? もうできたの!?」

 

「本当に簡単に作れる料理だからね。時間も全然かからないんだよ」

 

 僕がやったことといえば、食パンを凹ませてその上に材料を乗せただけだ。

 慣れればそこの作業は数分で終わるし、オーブンでの加熱時間も女の子が朝の支度にかける時間と左程変わらないと思う。

 

 火も包丁も使わない朝食、ベーコンエッグトースト……久々に作ったが、我ながら満足いく出来栄えにうんうんと僕が頷く中、ひよりさんが口をとがらせてこう言った。

 

「むぅぅ……! 雄介くんが楽しそうだからいいけど、朝ご飯はあたしが作る予定だったのに……!」

 

「ごめんね。でも、僕のこと甘やかしてくれるんでしょ?」

 

 お世話モードもとい、甘やかしモードがまだ解除されていないひよりさんは、僕が自分で朝食を作ってしまったことを少し残念に思っているようだ。

 そんな彼女へと、お皿に乗せたベーコンエッグトーストを差し出しながら、僕は笑顔で言う。

 

「昨日、いっぱい甘やかしてくれたひよりさんのために、今日は僕が朝ご飯を作ってあげたかったんだ。簡単なものだけど、これを食べてひよりさんに美味しいって笑顔で言ってもらえたら、すっごく嬉しいんだけどな」

 

「んっ……! それはズルいってぇ……!!」

 

 僕のために一生懸命になってくれたひよりさんに、感謝の気持ちを伝えたい……僕のこの気持ちに応えてくれることが、僕を甘やかすことに繋がるのだから、受け入れてもらいたい。

 そういう、自分でもちょっとズルい発言をしてみれば、ひよりさんも少しだけ顔を赤くしながら予想通りの反応を見せてくれた。

 

 それでも、僕のお願いを聞くように皿を受け取ると、仕方ないなというような笑みを浮かべながらこう言葉を返してくる。

 

「雄介くんがあたしのために作ってくれた料理だもんね。ありがたく、食べさせていただきますよ」

 

「ありがとう。飲み物は何にする? 牛乳でいい?」

 

「いいけど、それはあたしがやるから! そこは譲らないからね!」

 

 せめて飲み物の用意だけは自分でやると言ったひよりさんに後は任せ、僕は二人分の皿を手に一足先にテーブルに向かう。

 ベーコンエッグトーストと牛乳という洋風な朝食が並んだテーブルを挟んでひよりさんと向かい合った僕は、一口目を頬張った彼女の顔を見つめながら笑みを浮かべ、こう問いかけた。

 

「どう? 美味しい?」

 

「ん、美味ひい……!」

 

「ふふふ……っ! そっか、良かった!」

 

 こうやって彼女のお世話をするというのは、確かに楽しいし嬉しい。ひよりさんがノリノリになってしまうのも頷けた。

 そうやってニヤニヤ笑う僕を見つめ返しながら、ひよりさんはちょっと不満気に言う。

 

「もう、見過ぎだって……! そんなにあたしの顔見て、何が楽しいの?」

 

「ん? 楽しいって言うよりかは、幸せだな~って……色々、噛み締めてたところです」

 

 ひよりさんの質問に答えつつ、牛乳を一口。砂糖も入っていないのに甘く感じられるそれは、きっと幸せの味というやつだったと思う。

 今の彼女の姿を片目でしか見れないのが残念だなと思いながらも、それでも十分幸せだと思う僕は、大切な人との穏やかな朝の一時をゆっくりと楽しんでいくのであった。

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