ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

395 / 426
バスケ部の今後は……?

「そうやって我が校の名前を使っただけでも問題なのに、その上で大会中にスポーツマンシップに欠けた言動を見せたことも問題です! 対戦相手へのリスペクトを欠いた立ち振る舞い、仲間割れしたと一目でわかる雰囲気、そしてラフプレーによって相手を怪我させてしまったこと……それら全てが、我が校の代表者がやったことだと周囲の人間から見られてしまった。それがどれだけこの学校の評判と品位を下げる行動なのか、わかっていましたか?」

 

 多分これが校長先生が最も怒っている部分だ。

 学校とバスケ部の名前を使った上で、ラフプレーの連発やおよそ普通の人間が見せることのないリスペクトの欠けた言動を取ってしまえば、学校の評判に傷がつく。

 そうなれば来年や再来年の入学希望者にも影響が出るだろうし、学校としては大きな痛手になってしまうだろう。

 

 一人の生徒がやったことではなく、一つの集団が、それも大勢の人たちが見ている前でそういった行動を取るというのは、やはり悪手が過ぎた。

 学校の名誉だけでなく、現在在籍している生徒たちも白い目で見られかねない結果を招いた先輩たちへと、校長先生はさらに言葉を続ける。

 

「また、田沼先生から休日ボランティア活動に誘われたのにも関わらず、君たちはそれを断っていますね? 反省の意を示す大切な機会だったというのに、それを拒んだということは、君たちには反省の意思はないということですか?」

 

「は、反省は、しています……その時はその、気分が沈んだままだったから、行く気になれなくて……」

 

「だとしても、君たちはこのボランティア活動に参加すべきだった。現時点に至るまで、私たちは部活停止処分を下されるほどの問題行動を取った君たちから反省の意思を示す行動を見せてもらっていません。その状態でさらに問題行動を重ねられては、擁護のしようがない……」

 

 ここもまた大き過ぎる失態だと思う。校長先生が言う通り、僕たちと一緒にゴミ拾いのボランティア活動をしていれば、まだ少し話は変わったかもしれない。

 自分たちの行動に対して、藪瀬先輩たちは反省していた。大会での問題行為こそあったが、それでも少なからず反省の意思はあった……という、苦しいとは思うが擁護できる部分が残っていたかもしれない。

 

 しかし、今の藪瀬先輩たちにはそういった材料すらない。部活停止処分を下されてから大会当日に至るまで、反省の意思を示す行動を見せていない以上、擁護できるポイントがないのだ。

 

「違うんです。俺たちは、本当に反省してなかったわけじゃなくって、ただちょっと久々のバスケで浮かれてただけで……」

 

「反省の意を示すこともせず、真面目に活動再開に向けて動いていた後輩に身勝手な対抗意識を燃え上がらせ、活動停止処分を下されている状態でありながら深く考えもせずに学校とバスケ部の名前を使って大会に参加し、そこでまた問題を起こした……それを、()()()()()()()()という軽い言葉でごまかすことができると、そう思いますか?」

 

「………」

 

 反論しかけた藪瀬先輩を、校長先生がぴしゃりと斬って捨てる。

 何も言えなくなって俯く先輩へと、今度は田沼先生が声をかけた。

 

「藪瀬、俺にはまだ理解できない。今、校長先生に言った通り、お前たちは俺からのボランティア参加の呼びかけを気持ちの整理ができていないからと断ったはずだ。それからそう時間も経っていないのに、どうして全員揃って大会に参加することになったんだ? あの短い期間で、どんな心境の変化があった?」

 

「……悔しかったんです。スポーツセンターで練習したり、ボランティアに参加したり、そうやって楽しそうにしてる遊佐たちを見てると、羨ましくなって……でも一度断った手前、やっぱり俺たちもチームに入れてくれとは言えなくて、それが悔しくって、それで……!」

 

 本当に教え子たちの考えがわからなかったであろう田沼先生の質問に、藪瀬先輩が答える。

 その答えに複雑な表情を浮かべた後、項垂れた先生は絞り出すような声で言った。

 

「……お前たちの気持ちがわからないわけでもない。でもな、遊佐たちだって苦しくないわけじゃなかったんだ。もがいてもがいて、少しでもバスケ部のためにできることをしようって、そう考えて動いてたんだぞ。本来それは、部長であるお前がすべきことだったんだ。そのお前が後輩を妬んでしまったら、どうしようもないだろう……」

 

「すみません……本当にすみません……」

 

 田沼先生がここまで気落ちしている姿を、先輩たちは初めて見たのだろう。

 普段の豪快さが完全に鳴りを潜め、無念で仕方がないといった様子を見せる先生の姿に改めて自分たちがしてしまったことの重大さを理解したであろう先輩たちがうろたえながら謝罪する中、校長先生が再び口を開く。

 

「立て続けに起こした数々の問題行動に加え、反省の意思が見受けられないことから考えても、君たちには厳しい処分を下さざるを得ません。しかし、これは自分たちが招いた結果だと、そう理解してください」

 

 そこで言葉を区切った校長先生が、静かに息を吸う。

 隣に立つ楽人の緊張が高まっていることを感じながら、僕もまた校長先生の言葉を一言たりとも聞き逃さぬように意識を集中させる中、無慈悲な宣告が響いた。

 

「……今回の一件を受け、バスケ部は廃部とします。藪瀬くんをはじめとした生徒たちには、停学という形で処分を下す予定です」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。