ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「この度は、大変申し訳ありませんでした!」
「息子がお子さんに怪我をさせてしまったこと、なんとお詫びしたらいいのか……!? 本当に申し訳ありません」
――バスケ部の処分に関する話し合いから、また数日が経った。
再び先生たちに呼ばれた僕は、学校にやって来た母と一緒に校長室で俵山くんとそのご両親と話をしている。
教室に入って早々、顔を真っ青にした俵山くんのご両親は深々と頭を下げ、謝罪してきた。
僕たちが話し合いの席についてからも、お二人は罪悪感に染まり切った表情で明らかな動揺を見せながら謝罪の言葉を繰り返していく。
「本来ならば、もっと早くに謝罪のためにお伺いすべきでした。お恥ずかしながら、私たちも息子が他所のお子さんに怪我をさせたと知ったのが、つい最近で……!」
「俵山くんは今回の件について、ご両親に何も報告していなかったということでしょうか?」
「はい……バスケットの大会に参加したということは知っていました。ですが、こういった事件があったことは知らなくって……」
「言い訳にしかならない話です。息子の様子がおかしかったことも含め、もっと話を聞いておくべきでした。そのせいで謝罪が遅れてしまい、尾上さんたちには申し訳ない気持ちでいっぱいです」
俵山くんのご両親は、きっとどこかのんびりとした性格をしているのだろう。
ぺこぺこと何度も頭を下げ、僕と母に謝罪を繰り返していることから考えても、心の底から息子がしてしまったことを申し訳なく思っていることがわかる。
息子が他人に怪我をさせただけでなく、学校の名誉に傷を付け、さらに停学処分まで下されたと知って、相当にショックを受けているはずだ。
それでも誠心誠意謝罪する二人は、自分よりも他人を優先する正しく優しい人間に見えた。
「目……その、病院にはもう行かれましたよね? 先生は、なんと……?」
「腫れはひどいですが、後遺症に繋がる心配はないと言っていたようです。暫く、眼帯は取れないとも言っていましたが、見た目ほど重大な怪我ではないと」
「それは、良かった……! あっ、いや! 申し訳ありません! 我々が言っていい言葉ではありませんでした!」
「大丈夫です。僕は気にしていませんから」
俵山くんのお父さんがついこぼした言葉に気分を害したわけではなかったので、僕は慌てる彼にそう言葉をかけた。
申し訳なさそうに肩を落とすお父さんに代わって、お母さんが封筒を差し出してくる。
「こんなタイミングで申し訳ありませんが、治療費とお詫びの気持ちとして、こちらを受け取ってください」
「今後、診察や治療にかかる費用は我々が負担させていただきます。私たちにできる、せめてもの償いです」
そう言って、再び俵山くんのご両親が頭を下げる。
そんな二人のことを見つめた母は、小さく頷くと共に机に置かれた封筒を受け取ってから言った。
「わかりました。俵山さんたちからのお詫びの証として、受け取らせていただきます。ですが、もう一つお願いしたいことがります」
「なんでしょうか。何なりと仰ってください」
母はそこでご両親から視線を外すと、小さくなっている俵山くんを見つめながら言った。
「俵山くん……あなたがどうしてあんなことをしてしまったか、その理由を聞かせてもらえないかしら?」
「っっ……」
突然、母から話を振られた俵山くんがびくっと体を震わせる。
顔を上げた彼の目を真っすぐに見つめながら、母は話を続けた。
「あなたは知らないとは思うけれど、私もあの日、あの場にいたの。一応、息子がバスケットをしていたし、試合も何度か見ていたからね……あのプレーが事故かそうじゃないかくらい、わかるつもりよ」
「………」
「息子と同じチームにいた遊佐くんも、あなたのプレーに相当ショックを受けていたわ。あなたがそんなことをするとは思ってなかったって、そう言ってた。同じ部活の仲間からそんなふうに思われていたはずのあなたが、どうしてあんなプレーをしてしまったか……それを教えてもらいたいの」
「それ、は……」
「……きちんと理由を話しなさい。それがどんなに恥ずかしくて情けない理由であろうとも、それをきちんと話すことが、お前の果たすべき責任だ」
「私たちはお前と一緒に頭を下げたり、お金のことについてなら手を貸してあげられる。でもこれは、お前にしかできないことだ。自分のしたことと向き合うためにも、尾上さんの質問に答えなさい」
一斉に全員の視線を浴び、緊張したであろう俵山くんへと、ご両親が諭すように言う。
その言葉に泣きそうな表情になりながらも、自分がすべきことを理解したであろう俵山くんは……絞り出すような声で、理由を述べた。
「……羨ましかったんです、尾上くんが……!」