ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ねえ、あれってさ……!」
「ふふ……っ! そうでしょ? マジウケる!」
(なんなのよ……!? どいつもこいつも、私を嗤って……!!)
あのバスケ大会以降、私の学校生活は激変してしまった。
クラスに居ても、他のどこに居ても……誰もが私に視線を向け、ひそひそと話し合っている。
ただ話すだけならばいい。注目を集めるのも嫌いではない。
問題は、その理由……私は今、学校中の生徒たちから好奇と軽蔑の眼差しを向けられるようになっていた。
(まさか、こんなにあの大会での出来事が広まるだなんて……! 完全に想定外だわ……!!)
あの日、七瀬たちのチームに負けたことも予想外だったが、それ以上に地域のサイトでインターネットニュースとして取り上げられたことがマズかった。
流石にラフプレーに関しては記載されていなかったが、尾上たちの活躍に興味を持った連中が詳しい話を聞いたり、調べたりしたせいであの大会で私たちがやったことが広まってしまったらしい。
あの大会には中学生から社会人まで幅広い年代の人間が出場していたし、話の広まりも高校だけに留まっていないようだ。
特に来年からの進学に関わるため、近隣の中学に私たちがやったことが広まってしまったことがヤバかったらしく、学校には事実確認やクレームの電話がひっきりなしに寄せられているという。
あれから少し時間が経ち、落ち着いた部分もあるのだろうが……私の現状は最悪も最悪だ。どん底と言ってもいい。
この期間で悪評が知れ渡ったことで、私は先に述べた通りの状況に身を置くことになってしまっていた。
(チクショウ……! せめて大会で優勝していれば、少しは気分も晴れたっていうのに……!! バスケ部の連中、本当に使えないんだよ!)
元々の計画では、あの大会でバスケ部の評判を地に落としながら私はこっそりフェードアウトしていくつもりだった。
七瀬たちの計画を潰せるし、私を散々苛立たせた使えないバスケ部の連中も切り捨てられるし、上手く被害者ポジションを取れば周囲からも可哀想だと思ってちやほやしてもらえる……はずだったのだ。
しかし、尾上たちの予想外の粘りによって余裕をなくしたことや、元々のバスケ部の悪評が私の想定を超えていたことが災いし、全てが崩壊してしまっている。
大会では優勝できなかったどころか尾上たちの引き立て役になり、やり過ぎたラフプレーとスポーツマンシップに欠けた行動のせいで大会でやったことが大きく広まり、トドメに活動停止処分を受けたのにも関わらずここまでのことをしたということは反省の色なしということで学校側からも厳しく指導を受ける羽目になってしまった。
まあ、私は前々から上手く立ち回り、バスケ部の連中に「何も関係ない」と証言させることを徹底させていたから別段重い処分を受けることはなかったが……だからといって、全てにおいて問題がないわけではない。
文化祭でのクレーマーメイド事件で周囲からやや遠巻きにされていたというのに、そこにこの騒動だ。私が針の筵に置かれるのは、必然だった。
おまけにここでかつての恋人であった仁秀の件も掘り返され、疑問視されている。
あいつは本当にストーカーだったのか? 紫村と関わったせいでおかしくなったんじゃないか? やっぱり奇妙過ぎるし、何か隠された事情があるのでは?
今回の一件でもしかしたら仁秀も私の被害者だったのではないかと、そううわさされるようになり……そのうわさは、バスケ部の現状も合わせてどんどん真実味を帯びていく。
私が所属してから期待のエースはおかしくなり、活動停止処分を受けた上に部員の大半が問題行動を起こすようになった。
これまで私を敵視していたマネージャーたちが愚痴から悪口へと話す内容をグレードアップしたこともあり、私はバスケ部の疫病神だという烙印を押されてしまう。
それだけで終わればまだ良かったのかもしれない。しかし、悪評というのはどんどん尾ひれが付いていくものだ。
気が付けば私は、『バスケ部の疫病神』から『関わった者全員を不幸にする悪女』だと呼ばれるようになっていた。
否定しようにも事実としか言いようがない証拠が揃っているし、そもそも今の私が何かを喚いたところで誰も耳を傾けたりはしないだろう。
また嗤われて、疫病神が何か言ってると思われるのが関の山だ。
だから私は何も言わない。言うことができない。
普段だったら取り巻きの男たちを活用し、反撃するところなのだが……今の私には、いつもの手段が使えなくなっていた。