ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「あ~……ひより、ちょっといいか?」
「ん? なに?」
翌朝、普段よりも少しだけ早く起きて出勤の準備を整えた私は、同じく学校に行く支度をしているひよりへと声をかけた。
朝食を頬張っていたひよりは私の言葉に反応してこちらを見ると、口元を拭いながら言う。
「今日、二人が遅くなることはお母さんから聞いてるけど……もしかして、予定が変わったとか?」
「いや、そうじゃないんだ。少し気が早いが、クリスマスの話がしたくってな……」
「クリスマス? 急にどうしたの?」
てっきり今日のお泊りについて話すと思っていたのか、まだ少し先のクリスマスについて私が言及したことに娘は大いに驚いていた。
目を丸くするひよりへと、咳払いをした後で私は確認のための質問を投げかける。
「その、クリスマスは何か予定があるのか? 雄介くんとどこかに出かけるとか……?」
「いや、行かないよ。雄介くんが目を怪我しちゃったって話、しなかったっけ? そんな状態でデートとか、危ないじゃん!」
「ああ、まあな。じゃあ、友達と集まってパーティーなんかするとかの予定もないのか?」
「うん。特に仲が良い友達が色々と忙しいんだよ。バスケ部の活動再開に向けて動いてたり、クリスマスもバイト入れてたりするからさ。だからまあ、友達で集まる予定もないよ」
「そうか……! それは良かった……!」
「……良かったってどういう意味? 一応あたし、クリスマスデートできないことを悔しがってるんだけど?」
「いっ、いや! そういう意味じゃなくってだな……!!」
娘の地雷を踏みかねない不用意な発言を慌てて撤回しつつ、再度咳払いをして気持ちを整える。
そうした後、ジト~っとした目でこちらを睨むひよりへと、私は本題を切り出した。
「実は、お父さんもお母さんもクリスマスは予定が空けられそうなんだ。それで、折角だから尾上家の皆さんを招いて、クリスマスパーティーでもしないか?」
「クリスマスパーティー!? あたしたちの家で!?」
「ええ。尾上さんたちには普段からお世話になってるし、ひよりも夕食をご馳走になってるしね。そのお礼ってわけじゃないけど、我が家にご招待できたらなって、お父さんと相談してたのよ」
私の言葉を補足するように、妻がひよりへと言う。
驚いた表情を浮かべて私たちを交互に見つめたひよりは、気を取り直した様子でこう言葉を返してきた。
「まあ、雄介くんたちもクリスマスは特に予定はないから、家でパーティーでもしようかって話になってたし……誘えばOKしてくれるんじゃないかな?」
「そうか! なら、悪いがひよりから話を通してもらっていいか? 私たちが誘うよりも遠慮させないで済むだろうし……」
「りょ~か~い! ないとは思うけど、断られてもあたしのせいにはしないでよね~!」
おどけた様子でそう返事をしたひよりが、中断していた食事を再開する。
この感じならば任せても問題ないだろうと、話ができたことにほっと胸を撫で下ろした私もまた、出勤前のコーヒータイムに入った。
「予定が決まったら、料理とかをどうするか考えないといけないわね。こっちが三人で、尾上さんの家が四人家族でしょ? 合計七人分だけど、あちらには食べ盛りの男の子が三人もいるし……」
「多めに用意しておいた方がいいだろうな。うちには、あちらの三兄弟の誰よりも食べるひよりがいるんだから」
「むっ! 流石にそれは言い過ぎじゃない? 年頃の娘に対する気遣いってものがないよね~!」
「いやっ、す、すまん! 別に悪い意味で言ったわけじゃあなくってだな……!」
またしても地雷を踏んでしまった私は、あわあわと慌てながら謝罪する。
この娘を常に上機嫌にさせている雄介くんがすごいのか、はたまた私が迂闊なのか……多分後者なんだろうなと思いながら、静かなようで慌ただしい朝の時間が過ぎていくのであった。