ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ええ~~っ!? 義姉さんのお宅でクリスマスパーティーをするだって~っ!?」
「雄介だけじゃなくって、俺たちまで招待されたのかよ!?」
「……なんか、リアクションがオーバー過ぎない? というより、古くないか……?」
どことなく昭和イズムを感じる反応を見せた弟たちへと緩くツッコミを入れた後、小さくため息を吐く。
吾郎さんからひよりさんを介して誘われたクリスマスパーティーについての話をしたらこんなリアクションを見せるだなんて、ちょっとオーバー過ぎる気しかしない。
だがしかし、弟たちも母も大いに驚いているのは本当のことのようで、慌てながら話をし始めた。
「雅人! 大我! あんたたち、クリスマスの予定は!?」
「既にご報告の通り、何もありません、マム! 強いて言うなら午前中に部活の練習があります!」
「同じく、非モテ男なので何の予定も入っておりません! 受験間近ということで、友達で集まってパーチーみたいなことをする余裕もございません!」
「つまりは全員参加できるってことね。これが良いことなのか、それとも悪いことなのかは神のみぞ知るって感じか……!」
「いや、いいことでしょ。家族みんなで来てほしいって誘われてるんだからさ」
「ドレスコードとかあんのかな!? バッチリスーツで決めた方がいい!?」
「ただのクリスマスパーティーなんだからそんな気遣いは無用だって。そもそもお前ら、スーツなんて持ってないだろうが」
「普段みたいに飯にがっつくわけにはいかないよな……? 義姉さんのご家族に育ちが悪いって思われちまう……!!」
「それはそうかもしれないけど、馬鹿騒ぎしなければ大丈夫だと思うけどな……?」
落ち着かない様子で変なことを話す家族は、本気で相談しているように見えた。
妙な雰囲気の母と弟たちへと、僕は戸惑いながら声をかける。
「あのさ、そんな緊張しないで大丈夫だってば。ひよりさんも気軽に楽しんでほしいって言ってたし……」
「おばか! 話はそう単純じゃあないのよ!」
「そうだそうだ! お前は義姉さんとイチャつくことだけ考えてるんだろうけど、こっちはそういうわけにはいかないんだからな!」
「雄介のアンポンタン! 義姉さん大好き人間! リア充爆発しろ~っ!」
「なんだとぉ……!?」
緊張をほぐすためのフォローを入れたつもりが、何故か罵倒されたことに多少ムカついた僕が抗議の姿勢を見せる。
そんな僕へと、家族は口々に文句を言い始めた。
「ひよりちゃんのご両親は共働きだし、どちらもバリバリ働いてらっしゃる分、収入もすごいでしょう!? 我が家のクリスマスパーティーとは比較にならない、豪勢なものになる可能性が高いのよ!? 流石にそこで粗相はできないでしょうが!」
「しかもご家族で是非! って、なんか意味深じゃん!? どうすんだよ、これが将来義家族になる連中がどんな奴らか確認するための場とかだったりしたらさ!?」
「吾郎さんも睦美さんも、そんな意地の悪いことはしないと思うけどな……」
不安になるのはわかるが、杞憂な部分もあると思う。
そう述べる僕へと、比較的冷静な大我がこう言ってきた。
「いやまあ、雄介が言う通りなんだろうけどさ……義姉さんのご家族も、俺たちをもてなそうとしてくれるわけじゃん? それに対して、礼を失せぬようにするのは大事だろ?」
「普段、ひよりちゃんがお世話になってるからって、そのお返しも兼ねて気合いを入れて準備してくれてる姿が目に浮かんじゃうからね……」
「いつもと立場が逆だから落ち着かないし、相手からのご厚意をどう受け止めていいかもわかんねえし、その相手が兄の恋人のご両親とか、これもうどうしたらいいかわかんねぇなって感じなんだよ……」
まあ、その通りかもしれない。ひよりさんは気軽に楽しんでほしいと言っていたが、直接言われた僕でさえ緊張してしまったのだから、家族はそれ以上に不安になったりするだろう。
僕とひよりさんのことを色々と心配してくれているからこそ、このお誘いに対して緊張しているんだろうな……と家族の思いやりを感じ取った僕は、感謝を込めつつこう述べる。
「色々と考えちゃうのはわかるけど、クリスマスなんだしさ。まずは楽しむことを考えようよ。ひよりさんも、あちらのご家族も、きっとそれを望んでるはずだからさ」
今回のパーティーは堅苦しい話をしたいわけでも、別に僕たち家族を試す場というわけでもない。
ただ純粋に年に一度くらい、二家族で楽しく過ごす日があってもいいじゃないかと……そんな感じで緩く楽しむだけの集まりだ。
だから深く考えず、まずは楽しむことを考えてほしいと、僕は家族にそう言ったのだが……?
「ちくしょうめ。雄介の奴、なんかもう達観してるぞ。やっぱりあいつ、義姉さんとイチャつくことしか考えてねえな?」
「こっちの気も知らないで……! 普段からイチャついてるせいで変に度胸が付いちゃったのね……!!」
「基本的にあいつの脳内は義姉さんでいっぱいだからな。そもそも雄介は義姉さん関連のことは一度思い切っちゃうと無敵モードに入るし、動じなくなるのがデフォルトだから」
「ねえ、少しは僕に対して優しくしようとか思わない? なんでフォローしてる僕をそんなボロクソに言えるわけ!?」
どうやら今の家族に僕の気遣いは逆効果のようだ。
ものすごくテンパっているであろう母と弟たちに何を言っても今はこちらが傷付くだけだなと判断した僕は、フォローを諦めて身を守る選択をするのであった。