ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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VSいいお尻の日(バニーガール編)

「ひよりさん? ひよりさん?」

 

 とてもいい笑顔でそう言うひよりさんに対して、僕は彼女の名前を連呼することしかできなかった。

 ツッコミたいところがあまりにも多過ぎてどこから手を着ければいいのかわからずにいる僕が口を噤む中、ひよりさんがはしゃぎながら言う。

 

「雄介くん、気付くまで時間かかり過ぎだよ~! すぐわかると思ってたのにな~!」

 

「ひよりさん? 色々言いたいことはあるけど、何より僕はお尻が好きってわけじゃないからね? 何回も言ってるよね?」

 

「え~? ホントでござるか~?」

 

 口元に手を当ててムフフと笑うひよりさんは、本当に楽しそうだ。

 この訂正を何度したら理解してくれるのかと思いつつも、僕が彼女のお尻が好きだというのは確かにそうだもんなとも考えてしまった僕は先ほどとは違った意味で口を噤む。

 

 毎回自分の中で結論は出ているが、僕はひよりさんの全てが好きであってお尻もその一部だから好きというわけだ。

 お尻が特段好きというわけではなく、あくまでひよりさんの一部だからという理由だし、そもそも彼女が大きいことを気にしているからそこをフォローするために強めに肯定しているから周囲から見るとお尻が好きな人間に見えてしまうだけだと、色々と僕が考える中、ひよりさんが話を続けていく。

 

「というわけで雄介くんにサービスしたいと思います! AとB、好きな方を選んでね!」

 

「……それ、僕に拒否権はある?」

 

「拒否したらAとBのダブルサービスになるよ! やったね!!」

 

 何もやったじゃない。大体、こういう時のひよりさんがやることはわかっている。

 既にスマホを手にしていることから察するに、この日に備えて撮影したお尻を強調した写真を僕に送るつもりだ。

 

 送られてきたそれを見た僕のリアクションを間近で堪能するつもりなのだろうと、大体どころか全てを看破した僕であったが、この事態を回避する方法は残念ながら思い付かなかった。

 観念し、ため息を吐いた後、僕はひよりさんの要望通りに答えを返す。

 

「……Bでお願いします」

 

「おっけ~! ちょっと待っててね~……!」

 

 Aにしなかったのは何も考えてないと思われるのが嫌だったからだ。必死になってどっちがいいかを考えたと思われるのもそれはそれで嫌だけど、仮にも僕のために何かしてくれたひよりさんの厚意を無下にはしたくない。

 ということを考えている間に、僕のスマホにメッセージが届いた。

 ニコニコと笑うひよりさんからそれを開くことを期待されていることを感じた僕は、もうどうにでもなれとばかりにメッセージに添付されていた画像を表示し、見せてもらうことにした。

 

「ん、んんっ、ん……っ!?」

 

「どう? どう!? ぐっときた!?」

 

 添付画像を展開した僕が唸る中、ひよりさんはぐいぐいと距離を詰めながらそう問いかけてくる。

 一応、自分の恥ずかしい写真を見せているはずなのにその反応はどういうことなんだと、そんなことを思いつつ、僕は手元のスマホの画面へと改めて視線を落とし、そこに表示されている写真を見つめた。

 

 黒くツヤツヤとした質感のレオタード。その下には同じ黒のパンティストッキングを履いているが、肌を覆うためのそれがぴっちりと張り付いているためにお尻のラインと大きさを逆に強調する結果を招いている。

 同じくタイツに覆われた太腿やレオタードに隠されているが大きさが一目でわかる胸なんかもセクシーで、完成度の高いコスプレに僕は思わず息を飲んでしまう。

 

 頭に着けた長い耳のヘアバンドと尾てい骨の辺りにある丸っこい尻尾が特徴的なその衣装は、俗にいうバニーガールというやつだ。

 体を前屈みにしてお尻を突き出しつつ、胸や胴、顔もフレームインする構図で撮影されたその写真の中のひよりさんのいたずらっぽい笑みにちょっといけない興奮を感じてしまう僕へと、すぐ近くにいる生の彼女がにじり寄りながら囁く。

 

「どう? えっちぃでしょ? これ、結構頑張って撮影したんだよね」

 

 Bだけのバニーガールなのかと、そんなどうでもいいことを考えて冷静さを取り戻そうと奮闘する。

 そんな僕の耳元には、甘く熱いひよりさんの吐息と囁きが吹きかけられていた。

 

「写真の中のあたしに夢中になってくれるのも嬉しいけど、その気になれば実物だって見れるよ~? 家に衣装あるし、着てあげよっか? 雄介くんなら、触ってもいいよ……♥」

 

 とても危険な囁きに対して、僕は大きめの音を立てて咳払いをする。

 顔の赤みは隠せないが、それはそれとしてひよりさんに向き合った僕は、真面目な雰囲気で彼女へと言った。

 

「あのね、ひよりさん。僕にだけそういう姿を見せてくれるのは嬉しいけど、流石にラインは超えちゃダメだからね? 見たくはあるけども、それはそれ、これはこれだから」

 

「ん~……大胆過ぎたか。まあ、雄介くんが気に入ってくれたみたいで良かったよ!」

 

 何度か似たようなことをされたが、まだこういう挑発には慣れない。

 しかし慣れたら慣れたでマズい気もするし、これでいいはずだ。そう思いながら、僕は今しがた送られてきた写真をパスワード付きのファイルへと保存する。

 

「一応ね、お礼は言っておきます。かわいい写真を送ってくれてありがとうございます」

 

「んふふ~……! かわいいだけかにゃ~? えっちでもあるでしょ~?」

 

 どこまでも楽しそうに笑いながら、ぐいっと近付いてきたひよりさんが僕へと言う。

 毎回こうなるんだよなと思いつつも、これで当面の危機は去ったと、僕はそう考えていたのだが……?

 

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