ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ひよりさん、今日は何の日だか知ってる?」
「ふぇ……?」
……あの完全敗北の日から、十日ほどの時が過ぎた。
その間に僕が学んだことは、受け身ではいつも通りに翻弄され続けてしまうだけだということだ。
屈辱の敗北を味わったまま、リベンジもしないで甘んじて負けを受け入れ続けるわけにはいかない。
あの日から反撃の策を練り続けてきた僕は、今日、それを実行しようと考え、自分から話を切り出していた。
「今日? 十一月二十日、いいふとももの日でしょ?」
「おお、流石はひよりさん。知ってたんだね」
僕が自分からこういう話題を切り出したことにひよりさんは驚いているようだ。
同時に、僕が何かを企んでいることを察知したであろう彼女は、むふ~っと鼻息を吹いた後で言う。
「おっ! もしかしてあれかな? これまでのあたしのサービスに報いて、今日は雄介くんがサービスしてくれるとか!?」
「あははっ! そういうのもいいね! でも残念ながらコスプレも写真も用意してないんだよな~……!」
「いやいや、そんなことはしなくてもいいから、ねっ? ちょっと触らせてくれるだけで十分だよ!」
わきわきと怪しく手を握ったり開いたりしながらセクハラ親父みたいなムーブをかますひよりさん。
普段ならばそういうのは良くないと止める僕だが……今日は違った。
「そっか……じゃあ、触ってみる?」
「えっ……?」
僕が慌てて拒むと思っていたであろうひよりさんが、予想外の答えに目を丸くして驚く。
そんな彼女へとにこやかな笑みを向けながら、僕は優しい声で言った。
「ひよりさんも言ってた通り、ここ最近は色んなサービスをしてもらっちゃったからね。ひよりさんがそうしたいって言うのなら、僕もそれに応えさせてもらうよ」
「え? ああ、そう……?」
ちらちらと僕を見ながら迷っているひよりさんは、何か罠が仕掛けられているかもしれないと警戒しているのだろう。
逆バニーの話を振られた時、僕も似たような気持ちになった。だからこそわかる。彼女は、この誘いを拒めないということを。
「えっと、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらっちゃおうかな~……?」
「どうぞ。一応言っておくけど、変なところは触っちゃダメだよ?」
「わ、わかってるって!」
予想通り、ひよりさんは僕の提案に乗ってきた。
余裕がある時の彼女なら、こういう時に「変なところってどこかな~!?」とか逆に言ってくるだろうから、そういった発言をしないことからも動揺していることがわかる。
立ち上がった僕に近付いた彼女はおそるおそる太腿に手を伸ばし、そこを揉み始めると同時に、思わず口から飛び出たといった感じで感想を口にし始めた。
「うわ……っ!? かった~……! うおお、筋肉って感じがする……!!」
「脚はジャンプ力とかに関わってくるし、鍛えてたからね。まあ、現役の人たちと比べたら大したことないと思うよ?」
「そんなことないって! 硬いのに柔らかいっていうか、鍛えられてるのにぶっといわけじゃないから、なんか、こう……いい!」
なんか普通に興奮して熱く語っているひよりさんに対し、僕は曖昧な笑みを向けることしかできなかった。
想像以上というか、面白いリアクションを見せながら僕の太腿を揉んでくる小さな手がもたらすくすぐったさに、それとは別の笑みも漏れてしまう。
「うお、すっげぇ……! 男の子の脚って感じがするぜぇ……!! 次にこんなことできる機会がいつくるかわかんないし、いっぱい触っておこ……!」
そんなに価値があるものだとは思えないが、ひよりさんが喜んでくれるならばこの辱めも余裕で我慢できる。
何より、この後に待つ反撃がより味わい深くなると……そう考えながら笑顔で対応し続けた僕へと、十分に満足したであろうひよりさんが言う。
「ありがとう! 堪能できたよ! いや~! 雄介くんが逆セクハラを許してくれる日がくるとは思わなかったな~!」
「あはは、そっか。それは良かった。じゃあ、次は僕の番だね」
「……へ?」
僕が自分からこんなことを要求してくるとは思わなかったのだろう。完全に面食らったひよりさんが呆けた声を出す。
そのまま、にこにこと笑う僕を見つめ返した彼女は、はっとすると共に口を開く。
「あ、あ~……まさか雄介くんがあたしの太腿を触りたいだなんて、そんなえっちなこと言うだなんて……!! ちょっとびっくりだな~!」
「大丈夫だよ。触るつもりはないからさ。ちょくちょくやってもらってることを今日もしてもらうだけ」
「え? 何? どういうこと?」
少しでも自分のペースを取り戻そうとするひよりさんを妨害するように、僕は自分の要求を彼女へと伝えた。
「膝枕、してもらってもいいかな? 答えは聞かないけど!」