ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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VSいい肉の日(大体勝負にならない編)

「息子たち~! 今日はひよりちゃんに心の底から感謝してご飯を食べるのよ~!」

 

「はは~っ! 義姉さん、本当にありがとうございます!」

 

「こんな美味い肉を食べれるだなんて、夢のようであります! 感謝感激雨あられ!」

 

「あははははっ! 気にしないでください! 両親も食べてもらって助かってますしね!」

 

 というわけで夕食の時間、テーブルの上に並べられた豪華な肉と野菜を前に、家族のテンションは最高潮に達していた。

 僕自身もちょっと落ち着かないくらいにワクワクしていて、食欲というのは実にわかりやすいものだと思ってしまうほどだ。

 

 母の言う通り、ひよりさんのおかげでこんなにいいお肉が食べられるのだから本当に感謝の気持ちしかない。

 野菜のカットも含め、準備にも協力してもらったわけだし……と、今日の食事に関する彼女の貢献度に改めて感謝する中、母が記念すべき一枚目の肉をトングで掴む。

 

「では、尾上家を代表して……第一投、いきますっ!」

 

 そう宣言した母がホットプレートの上に肉を置けば、食欲を誘うジュゥゥ……という音と共に油の溶ける良い匂いが室内に漂い始めた。

 やや厚めでサシが入っている豪勢な肉が徐々に焼けていく様を固唾をのんで見守る僕たちへと、笑顔を浮かべたひよりさんが言う。

 

「そんなじっと見てないで、みんなもお肉焼きなよ! いっぱいあるんだから、じゃんじゃん食べちゃって!」

 

「おぉう……! それじゃあ、お言葉に甘えて……!」

 

 そこからは全員が全員、気になっている肉をホットプレートに並べ、楽しい焼肉パーティーが始まった。

 心なしか煙の量も普段より少なく感じられるのは、いいお肉を焼いているからなのだろうか? なんて貧乏くさいことを考える中、最初に焼き始めた肉を頬張った母が恍惚とした表情を浮かべる。

 

「お、美味しい……! こんなに美味しいお肉、超久々に食べたわ……!!」

 

「母上! いいお肉は口の中で溶けるって聞いたんだけど、本当ですか!?」

 

「早く……早く焼き上がってくれ……! いっそレアでいただいちまうか……!?」

 

 母の満足気な表情を見た弟たちも、もう我慢できないとばかりに焼いた肉を頬張っていく。

 僕とひよりさんが見守る中、二人もまた恍惚とした表情を浮かべ、夢でも見ているかのような声色で感想を述べ始めた。

 

「美味い……! 美味すぎる……! 厚めなのに柔らかいから簡単に嚙み切れる上に噛めば噛むほど肉汁があふれて、もう堪らねえな……!」

 

「脂が甘くって安い焼肉のタレとか使うくらいならこのまま食った方が美味しい気がしなくもない……! すげえ、これが高い肉……!」

 

「なんちゅうもんを食わせてくれたんや……これに比べたら普段食べてる肉はカスや……!」

 

「あ、じゃあ次回の焼肉から雅人の分の肉は用意しないわね。カスみたいなものを食べるの、嫌でしょ?」

 

「いや待ってください母上。そういうんじゃないんです。決してそういう意味じゃなくって!」

 

 とても賑やか(?)なやり取りを繰り広げながら高級なお肉を楽しむ僕の家族のことを、ひよりさんは温かい目で見つめてくれていた。

 ちょっとはしゃぎ過ぎだし、呆れられてないといいな……と不安になる僕へと、焼き上がったお肉を乗せた皿を差し出しながら彼女が言う。

 

「ここまで喜んでもらえると、こっちも嬉しくなっちゃうよね。はい、というわけで次は雄介くんの番だよ! 思いっきりかぶりついちゃって!」

 

「あ、ありがとう……」

 

 かぶりつく、というほどのサイズではないが、とても美味しそうなお肉であることは確かだ。

 言われるがままに取ってもらった肉を頬張れば、普段よりも数段美味しいその味が口いっぱいに広がる。

 

「すごっ……! これは確かに段違いだ……!!」

 

「ん~! そうだね! これは感動ものだ!」

 

 僕とタイミングを同じくして肉を頬張ったひよりさんも嬉しそうにはしゃぎながら感想を述べる。

 これ以外にもたくさんの高級肉があるんだよなと思いつつ、その味を想像して期待した僕は、隣にいるひよりさんへと質問を投げかけた。

 

「そういえばひよりさんはこういうお肉を食べ慣れてるわけじゃないの?」

 

「流石にそんな贅沢はしてないよ~! お祝い事ならまだしも、普段からこんな高いお肉は食べられないって!」

 

「そうなんだ。でも、初めてってわけじゃないのか……」

 

 こういうところに家の差が出るというか、育ちの違いが出てしまう気がする。

 特にひよりさんはいいお家というか、お金持ちな家だし、僕たちみたいな家の人間とは違うな……と考えたところで、ふわりと笑った彼女がこう言ってきた。

 

「いいじゃん、そんなこと気にしないでさ。そういう違いを擦り合わせていくのが、家族ってものでしょ?」

 

 

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