ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
そう言った後、恥ずかしそうにはにかんだ彼女がそれを誤魔化すように大きく口を開けてご飯を頬張る。
その言葉に緊張とも高揚とも思える感情を抱いた僕は、ひよりさんの取り皿に焼き上がったお肉を置きながら言った。
「そうだね。違いがあるからこそ人間なんだし、一緒に過ごしていくうちにその違いが近付いていくからこその家族だよね」
昔から焼肉をする時には僕が肉を焼いたり取ったりする役なのは変わらないが、それを交互にこなしてくれる人が増えた。
その人のために肉を取る役目が増えたこともそうだし、その人の好みだって覚えていて……その人にお礼を言われるようにもなった。
「ありがとね、雄介くん。あたしがハラミ好きなこと、ちゃんと覚えてくれてるんだ」
嬉しそうに笑うひよりさんを見ていると、胸が温かくなる。
母や弟たちに同じ反応をされた時とは違う、不思議で心地良い感覚に笑みを浮かべる僕へと、彼女は言う。
「……さっきの違いで言うと、あたしはこうして誰かとご飯を食べる機会が少なかったわけだしさ……雄介くんと出会って、こうしてみんなで食べるご飯の美味しさを知れて、本当に良かったと思ってるよ」
「そっか……ひよりさんにそう言ってもらえて、僕も嬉しいよ」
「ふふふ……! こうするのが当たり前になってからまだ一年も経ってないって信じられる? なんかもう、ずっと長い間こうしてる気分だよ」
「変わったって思えるけど、その変化に違和感を覚えないっていうのはいいことじゃないかな? それこそ、家族として変わってるって感じがするしさ」
四月、初めて我が家にひよりさんがやって来てから、色んな部分が変わった。
食事中、隣に小さくてかわいい彼女がいることも当たり前になったし、家にはひよりさん用の衣類が収められたカラーボックスも置かれるようになっている。
劇的な変化ではあるが、それにも慣れたわけだし、逆にひよりさんも生活が大きく変わったはずだ。
僕たちと違って引っ越しもしているわけで、そういった変化もあったが……ひよりさんがそのことに嫌悪感や違和感を抱いていないのは素直に嬉しい。
先の肉を取る役目で言えば、ひよりさんという新しい家族が増えたことで単純に僕の仕事は一人分増えたことになるはずだ。
でも、それを嫌だとは思わないし……むしろ嬉しいと思っている。
そもそも家族に対してすることも面倒だとは思っていないし、面倒さを感じるような重労働でもないという部分も関係しているのだろう。
でも、それはそれとしても様々な変化を心地良いと思えるのは、多分それがいい変化だと思っているからだ。
「僕も吾郎さんと睦美さんに失礼のないようにしなくちゃな……ひよりさんはこんなにお行儀がいいのに、僕の方が駄目だったら色々とマズい気しかしない」
「いや~、雄介くんは問題ないでしょ? あたしは両親がお義母さんや弟くんみたいに子供の恋人を歓迎できるかの方が不安だよ」
そんな会話を交わした後、なんだか結婚前に挨拶に行くみたいだなと思った僕が苦笑を浮かべる。
ひよりさんも同じことを考えたのか、くすくすと笑った後でお互いに顔を見合わせた僕たちは、もうひと笑いしてしまった。
「そう言えばだけど雄介くん、昨日が何の日だったか知ってる?」
「え? いいツインテールの日じゃないの?」
そうして笑った後、不意にひよりさんがここ最近で何度も聞いた質問を投げかけてきた。
昼頃、髪型を変えた彼女に教えてもらった回答を述べれば、ひよりさんはちっちっと指を振った後で答えを言う。
「十一月二十二日はね……いい夫婦の日、だよ。むしろそっちの方が有名でしょ?」
「ああ、そっか。その通りだね」
教えてもらった答えに納得しつつ、今の状況から考えてもそっちの方が正しい答えだなと考えた僕が呟きながら頷く。
そんな僕へと楽し気な笑みを見せてくれたひよりさんが、弾んだ声で言った。
「あたしたち、なれるかな? 将来、いい夫婦ににさ……」
「なれるでしょ。うん、なんかそんな気がする」
上手く言えないし確証があるわけでもないが、そんな気がする。
今日まで一緒に過ごす中で経てきた喜ばしい変化を繰り返した先に、僕たちなりの家族としての形があるんだろうなと考えながら……僕は、家族と楽しいひと時を過ごしていくのであった。