ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「雄介くん! 今日は何の日だか知ってる!?」
「えぇ……?」
十一月三十日……今月最後の日、油断していた僕はおよそ一週間ぶりのひよりさんからのお馴染みの質問に困惑の声を漏らしていた。
いい兄さんの日にいい肉の日といい夫婦の日を全部まとめてやったんだから、もう全てが終わったと……そう思っていた僕に対して、ひよりさんは不意打ちのように何度目かわからない質問を投げかけてくる。
にこにこの彼女を見ていると、多分僕をからかえる(ひよりさんにとっては)楽しい日であることまでは予測できるが、そこから先は全くわからない。
完全に油断して予習もしていなかったから、本当に予想もできないなと考える僕に対して、ひよりさんはなおも同じ質問を投げかけてきた。
「今日で最後のいい○○の日クイズ! 果たして雄介くんは正解して有終の美を飾ることができるのか!? さあ、張り切って考えてみよう!」
「あ、考える時間はくれるんだ……」
というより、質問の答えを考えて悶々としている僕を眺めることも楽しみの一つなのかもしれない。
非常に上機嫌なひよりさんの笑顔を見ながら、まあこれで最後だしどうせなら正解で終わりたいなと考えた僕は、先の質問の答えを推察していく。
(ひよりさんの口ぶりからしても、今回もいい○○の日なのは間違いないな。あとは三十日をどう読むか、か……)
ゼロと四でおしりと読んだり、ゼロと八でおっぱいと読んだり、基本的にいい○○の日は語呂合わせが多い。
この条件に当てはめて三十という数字を文字として読むことを考えた僕は、頭の中で適当に数字を語呂合わせしていく。
(いいさんじゅう……まんま過ぎるな。いいみと? 納豆が出てくるわけがないし、いい砂糖はあり得そうだけど、これで僕をからかえるか……?)
推察を重ね、候補を頭の中に思い浮かばせる僕であったが、これだと思えるものがなかなか出てこない。
ある程度考えたところでいいおしりの日同様にゼロを『お』と読んでみることにした僕は、そこでちょっとした警戒心を抱く。
「……ねえ、ひよりさん? 一つ聞きたいことがあるんだけど……?」
「ん? なに? どうしたの?」
「もしかしてだけど、僕は今、貞操の危機を迎えてたりしない?」
「え……? あっ!」
ひどい解釈の仕方だが、十一月三十日はいい竿の日と読める。
竿が何を示すかはまあ濁すとするが、もしもこの解釈が正しかった場合、僕は今、人生最大の危機を迎えていることになってしまう。
「違うって! ちょっと! 流石のあたしもそこまでスケベじゃないよ!」
「ええ……? そうかなぁ……?」
「そうだって! もう! 雄介くんはえっちなんだから……!!」
「ええ~……?」
なんだかひどい擦り付けをされた気がするが、ひよりさんの反応から察するに僕の心配は杞憂で済みそうだ。
そんなふうにほっと安堵した僕に対して、んんっ、と咳払いしたひよりさんがヒントを出してくる。
「ん~、今回は難問だし、ちょっといじわるだからヒントをあげるよ! 今までと同じ考え方をしてたら、今日が何の日かの答えには辿り着けません!」
「え? 語呂合わせじゃないってこと?」
「そういうこと! 固定概念を壊して考えてみてね!」
「う~ん……?」
困った、ちょっと楽しくなってきている自分がいる。
正解に辿り着いたらからかいが待っているのだろうが、それは不正解でも同じなのだろうし、だったら当てて気持ち良くなりたい。
というわけで、今まで以上に脳を働かせて問題の答えを探り始めた僕は、そこである違和感に気付いた。
(そういえば、少し引っ掛かることがあったな……)
もう随分と前の出来事だが、それが不意に頭の中に蘇ってきた。
そこから雷に打たれたような衝撃を感じると共にある答えを導き出した僕は、ひよりさんへと言う。
「……ひよりさん。そういえば今日って、十一月最後の日だったよね?」
「うん! そうだよ!」
「最後って色んな言い方があるよね? ラストとか締めとか、トリとかケツとかさ」
「うんうん! その通りだね!」
「もひとつ質問いいかな? 四日で僕が選ばなかったAの写真、どこにいったの?」
「むふふふふ……! 雄介くんみたいな勘のいい彼氏は大好きだよ! 勘が良くなくっても好きだけどね!」
あの日、ひよりさんは二枚の写真を用意していた。その内の片方を僕に選ばせ、もう片方はそのままお蔵入りすることになったのだと思っていたが、少し引っ掛かるものがあったのだ。
二種類のコスプレ写真を撮影したというのならば、その二つとも送ってしまえばいい。少なくとも、僕が知るひよりさんならそうするはずだ。
わざわざ撮った写真を無駄にするような行動に違和感を抱いていた僕だが、今日、この日に至ってその理由を理解することができた。
ひよりさんが二種類の写真を撮影したのは、
その考えを肯定するように、ひよりさんが問題の答えを笑顔で述べる。
「そう! 今日、十一月三十日は……いいおしりの日でした~!」