ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
昇降口を抜け、階段を上る。長いようで短い廊下を歩き、教室の扉を開ける。
見慣れたいつも通りの景色、普段通りの学校……何の変哲もない一週間の始まりだが、全く変化が起きない日常なんて存在しない。
教室のドアを開け、自分の席に向かう途中、僕はきゃいきゃいと騒ぐ女子たちを目にした。
その中心に、会って話がしたいと思っていた女の子がいることに気付いた僕へと、その女子たちが声をかけてくる。
「あっ、うわさをすれば……! おはよう、尾上くん!」
「ほら、ひより! 尾上くんが来たよ!」
「わかってるって! 変な雰囲気にしないでよ、もう……!!」
僕が何かを言うよりも早くにひよりさんを引っ張ってきた女子たちがにやにやと笑いながら僕たちから距離を取る。
何かを楽しんでいるような彼女達の態度の意味は、前に出てきたひよりさんを一目見ればすぐに理解できた。
「あ、えっと……おはよう、雄介くん」
「おはよう、ひよりさん。髪型、変えたんだね」
「う、うん……! 折角だし、雄介くんからのプレゼントを使ってみようと思ってさ……」
普段のショートボブとよく似ているが、少しだけ違う髪型。
少しだけ伸びた前髪を留めているのは先日、僕がプレゼントしたヘアピンで、言葉通りに大切に使ってくれていることを知った僕の口元にはついつい笑みが浮かんでしまう。
「ど、どうかな? 個人的にはちょっと似合ってるかどうか不安なんだけど……」
「大丈夫、すごく似合ってるよ。かわいいし、ちょっと大人っぽく見える」
「ほ、本当? えへへっ、良かった……!」
ほんの数日前に会った時と違う姿を見せてくれたひよりさんが、嬉しそうにはにかむ。
僕も彼女に微笑みを返す中、先ほどまで彼女と話していた女子たちが話に混ざってきた。
「良かったね、ひより! 尾上くん、気に入ってくれたみたいじゃん!」
「こっちの髪型もかわいいよね~! でもまあ、かわいくないサイズの爆弾が二つも付いてるわけですが」
「からかわないでって! 別にそういうんじゃないんだからさ!」
「本当に~? なんかもう、隠し切れない雰囲気が漂っちゃってるけど~?」
「本当だってば! あたしと雄介くんはただの友達です!!」
「……と、七瀬被告は主張していますが、尾上くん的にはどうですか?」
まるでインタビュアーのように僕に聞いてきた女子に、少しだけ気圧されてしまったが……すぐに咳払いをして、気を取り直す。
そうした後で期待に満ちた彼女たちの視線を浴びながら、苦笑混じりに僕は答えた。
「ひよりさんの言う通りだよ。僕たちは、ただの友達です」
嘘偽りなく、僕たちの関係を伝える。
とても不思議で言葉にするには難しい僕たちの関係は、多分そう表すのが一番だと思う。
ただ……そこにはこの一言も付け加えておくべきだと考えた僕は、少し落胆している様子の女子たちに向け、笑みを浮かべながら言った。
「――
「おっと!? おおっとぉ~っ!?」
「今はまだ!? とんでもない爆弾発言じゃん!!」
「ゆっ、雄介くんっ!? ちょっと、何言って――!?」
僕の発言を聞いて一気に騒ぎ出した友人たちの反応を見て、ひよりさんは顔を赤くして慌てている。
それ以上は何も言わずに肩を竦めた僕のことを、ひよりさんは恨めし気に……だけど、少しだけ嬉しそうな目で見てくれていた。
「ホント、あんなこと言って……! 二人から質問攻めに遭っても知らないからね?」
頬を膨らませながらも、笑みを浮かべてそう言ってくれるひよりさんを見つめながら、僕は誓う。
このただの友達という関係がいつ終わるのかはわからない。だけど、その日までもその先も、僕は彼女のことを――。
「……ねえ、ひよりさん」
「ん? なに?」
女子二人が盛り上がってこちらの話を聞いていない隙を突き、僕はひよりさんに声をかける。
きょとんとしながら僕を見上げてくる彼女へと、僕は自分自身に誓ったことを伝えた。
「幸せにするよ、絶対に。ひよりさんが、ずっと笑顔でい続けられるように」
「……!!」
僕のその言葉に、ひよりさんが目を丸くして驚く。
視線を逸らし、頬を赤らめた彼女は、小さな笑みを浮かべながら小さな声でこう返してきた。
「今のって、なんか……プロポーズみたいだね」
言われてみればそうかもな、と思った僕がそれをごまかすように笑う。
同時に、今の約束を嘘にしないようにこれからも彼女と歩き続けようと……ゆっくり、少しずつ、お互いを知っていこうと思いながら、僕は大好きな人の笑顔を見つめ続けるのであった。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする、第一章は完結です。
色々と読みにくい部分もあったかと思います。自分も久しぶりに読み返して書き直した方がいいな、と思う部分を多く見つけてしまいました。
それでも、興味を持ってここまで読んでいただけたことや、続きが気になってカクヨムさんの方にも読みに行きましたと報告してくださる読者さんがいらっしゃって、とても嬉しかったです。
感想もたくさん書いてくださってありがとうございました。
ハーメルンさんの読者さんもカクヨムさんと同じで温かい方々ばかりですね。
改めて、ありがとうございますと感謝の気持ちを伝えさせてください。
続きなのですが、こちらの小説はカクヨムさんの方で一年ほど前から書き続けている小説なので、ストックは山ほどあります。(300話くらい)
なので、ペースを考えつつ、更新を続けさせていただく予定です。
少し前にちらっとお話した通り、第二章に当たる部分までは書籍化されているので、そこまでは一日二話ペースで更新したいですね。(その前に投稿する予定のひよりさん視点の短編も含めて)
ただ謝罪なのですが、web版での二章と単行本として発売された二章では内容が微妙に違うところがあり、web版で自分でも納得できなかった部分を改稿して二巻の内容につなげさせていただきました。
なのでちょっと書籍版と比べてクオリティが低いかもしれません。申し訳ないです。
ただ面白くないだとか、嫌な出来事が起きるとかはないと思うので、続きも読んでいただけると嬉しいです。
本当にもし良ければ発売中の一巻、二巻を購入していただけると嬉しいなと思いつつ、ロリ巨乳は最高という感想で示させていただきます。
重ねてになりますが、ここまで読んでくださってありがとうございました!
続きも楽しんでくださいね!