ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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本屋さんで、ひそひそ

「ここって……本屋さんだよね? ここでプレゼントを探すの?」

 

「うん、そうだよ。ちょっとアプローチを変えてみようと思ってさ」

 

 そんなこんなで次にあたしたちがやって来たのは、以前のデートの時にも訪れた本屋さんだった。

 大きめのこのお店にはいろんな種類の本が置いてあり、普通の小説以外にもマンガや雑誌なんかも売られている。

 

 しかし、ここでどう疲れを取るためのグッズを買うのか……? と考えながらも雄介くんについていったあたしは、立ち止まった彼が手にした物を見て、なるほどと納得した。

 

「ほら、これとかどう? こういう形での()()もありでしょ?」

 

「ああ~! 確かにありだね!」

 

 そう言って雄介くんが見せてきたのは、かわいい動物の写真集だ。

 周りの棚には子犬や子猫なんかを撮影した写真集が並べられており、この一角が動物の写真集を置くスペースだと理解したあたしは、その中の一冊を手に取りながら呟く。

 

「なるほど、肉体的じゃなくて精神的な癒しってことだね!」

 

「うん。母さんは動物も好きだし、本なら値段も手ごろだしさ。ちょうどいいんじゃないかなと思って」

 

 睡眠やマッサージのように体の疲れを取るのではなく、精神的な疲れ……いわゆるストレスの発散のためのプレゼントを贈る。

 確かにかわいい動物の写真を眺めれば気持ちはほんわかするし、ストレスだって解消できるだろう。

 

 事実、先ほどあんな醜態を晒したあたしも並べられているかわいい動物たちの写真集の表紙を見ているだけで落ち着いてきているし、その効果は絶大だ。

 

「すごくいいと思うよ! 滅茶苦茶ありだと思う! 色んな本を見て、どれがいいか考えてみようよ!」

 

「良かった。ちょっと不安だったけど、ひよりさんに褒めてもらえて自信が出たよ」

 

 大賛成するあたしの意見に、雄介くんがほっと胸を撫で下ろす。

 そこまであたしのことを信頼してくれているんだな~ってわかって、その笑顔を見ているとこっちまで温かい気持ちになれた。

 

「ちなみに真理恵さんって犬派? それとも猫派? どっちかによって、本のセレクトも変わるよね?」

 

「あ~……どっちも好きかな? 特別好きな動物とかはないと思うよ」

 

「ふむふむ! まあ、子犬も子猫もかわいいからね! 癒されるのは間違いないか!」

 

「他にも色んな動物の写真集があるし、色々見てみようよ」

 

 そう話した後、あたしたちは適当に目についた写真集を手に取り、その表紙を確認していく。

 身長差があるおかげであたしが下の方の段、雄介くんが棚の上の方を担当する流れができて、上手いこと役割分担ができていた。

 

「これとかどう? おやすみ中の動物たちの写真集! すやすやな動物たちって全部かわいいし、犬も猫もどっちの写真も収録されてるみたい!」

 

「犬とか猫じゃなくなっちゃうけど、ペンギンの写真集もあったよ。かわいいの定番みたいなものだし、嫌いな人とかいないでしょ」

 

「うわ~っ! もう本当にかわいい尽くしじゃん! こういうのって表紙だけでも夢中になっちゃう……って、こっちもすごいかわいい!」

 

「どれどれ? 僕にも見せて」

 

 写真集の顔でもある表紙には、その中身を象徴するような動物たちのかわいい一枚が載せられている。

 それを見るだけでも楽しくなっちゃってたあたしたちは、気に入った写真集の表紙をお互いに見せ合いっこしていって……ふと、自分たちが体を寄せ合っていることに気付いた。

 

「「あっ……!?」」

 

 同じタイミングで顔を見合わせ、同じように驚いた表情で呟く。

 手に取った本を見せ合うために体を寄せ、自分たちが思っていたよりもずっと近くで会話をしていたことに気付いたあたしたちは、しばし見つめ合った後でお互いに苦笑を浮かべながら笑い始めた。

 

「あはは……っ! こんなに近付いてただなんて、全然気付かなかったね」

 

「確かに! かわいい動物たちに夢中になっちゃってたよ!」

 

 身長差のおかげで顔と顔との距離は少しだけ開いていたけれど、それでもほとんどくっついていた。

 だけど、そんな状況でもあたしも雄介くんもお互いに焦ることなんてなくて、気付かなかったね、って言って笑い合ってる。

 

 こうやってくっつくことが、そこまで変なことじゃないんだと……寝具店で同じベッドに寝転んだ時みたいな変な状況じゃなきゃ、こうして触れ合える距離にいることも当たり前なのかもって、そう思えるようになった。

 

「これはバカップルっぽくはなかったでしょ? 周りからも変な目で見られることもないんじゃない?」

 

「う~ん、どうだろう? 微妙なところじゃない?」

 

「ふふふ……っ! 微妙か~! じゃあ、イチャついてるカップルくらいには見られちゃうのかな?」

 

「そうかも。ははっ、自分で言うのも変な話だけどね」

 

 自分たちが恋人みたいなことをしているという自覚は、雄介くんにもあるみたいだ。

 それを嫌がったりしないところとか、恥ずかしそうだけれども嬉しそうに笑ってくれるところとかを見ていると、やっぱりあたしも嬉しくなってしまう。

 

「本屋さんも十分に見たし、少し適当にぶらついてみようよ! 何か良いのが見つかるかもしれないしさ!」

 

「うん、そうしようか」

 

 あたしがそう提案すれば、雄介くんは笑って頷いてくれた。

 動物の写真を見ていた時よりもほっこりとした気分に心を温かくしながら……あたしたちは、ショッピングモールを散策し、色んなプレゼント候補を探していくのであった。

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