ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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夏も二人で過ごそうか

「いつもながら、家まで送ってくれてありがとうね!」

 

「こっちこそ、美味しいご飯をありがとう。連休中、たくさんひよりさんと話せて嬉しかったよ」

 

「えへへ~……! あたしもだよ~!」

 

 食事を終えて、片付けをして、少し話をして……楽しい時間を過ごした後は、ひよりさんを家まで送る番だ。

 長いようで短いこの時は、僕が彼女と二人きりで話せる時間でもある。

 

 ひよりさんの歩幅に合わせてゆっくりと歩きながら、彼女の笑顔を見つめて話をする僕は、幸せなこのひと時を楽しんでいた。

 

「明日は玲香たちと遊びに行く日だね! 雄介くんたちはバイトが終わってから合流するんだっけ?」

 

「うん。ちょっと遅れちゃうけど、僕も楽しみにしてるよ」

 

「毎日、本当にお疲れ様です! でも、災難だったね。急にバイトに入ってくれって頼まれるだなんてさ」

 

「いきなりあてにしてた人が消えちゃったって話だからね、仕方がないよ。ただ、そのせいでひよりさんと遊びに行けなかったのは残念かな」

 

 バイト終わりに鉢村さんとした会話を思い返しながら、ひよりさんへと正直な感想を述べる。

 怒ったり恨んだりはしていないが、やっぱり残念なものは残念だなと言った僕に対して、くすくすと笑った後でひよりさんが言う。

 

「そこはほら、別にGWじゃないとデートに行けないわけじゃないからね。また予定を合わせればいいだけでしょ?」

 

「まあ、そうだね。でも、暫くは難しそうじゃない? 中間テストもあるしさ」

 

「あ~……! 思い出したくなかったのに~! 面倒だな~、テスト!」

 

 五月の下旬には高校の中間テストがある。そこに向けて勉強もしなくちゃいけないから、暫くは一緒に遊びに行くことはできない。

 ひよりさんも熊川さんに勉強を教えなきゃと言っていたし、二人で遊びに行くのは難しいだろう。

 

「雅人くんも今年受験で、成績に直結するテストは大事だもんね。あたしが雄介くんちに遊びに行ったら気を遣うだろうし、テストが終わるまでは控えた方がいいか」

 

「ごめんね、気を遣わせちゃって」

 

「ううん! っていうか、連休中に毎日遊びに行ってるあたしの方が、雄介くんたちに気を遣わせてるでしょ? 逆だよ、逆!」

 

「あはは。そんなことはないと思うけどな……?」

 

 食事中の家族のフレンドリーさを思い返した僕は、苦笑を浮かべながらひよりさんへと言った。

 あの感じだと、気なんてこれっぽっちも遣ってないように見えるが……楽しい食事中とピリつくテスト期間中は別だ。

 

 弟のために気を遣ってくれるひよりさんに感謝しながらも、彼女と会える時間が激減してしまうことを無念に思う僕であったが、それはひよりさんも同じだったようで、残念そうに肩を落としながら口を開く。

 

「あ~あ。五月はテスト勉強に集中しなきゃいけなくて、六月は祝日がない。雄介くんと遊べる時間、ほとんどないじゃん!」

 

「それはちょっと残念だね。まあ、でもさ――」

 

 ひよりさんの言う通り、五月中は遊びに行けないし、六月はその機会そのものが少ないから二人で遊ぶことは難しいと思う。

 それでも……と前置きした僕は、こちらを見上げる彼女の目を見つめながらこう言った。

 

「本当に好きな人となら……会えない時間も楽しめるんじゃないかなって、僕は思うよ」

 

「……!」

 

 我ながら、だいぶクサいことを言ってしまったなと照れの感情交じりの苦笑を浮かべる。

 そんな僕のことを驚いた表情で見つめていたひよりさんは、少ししてから嬉しそうな笑みを浮かべながら弾んだ声で言ってきた。

 

「へぇ~! 言うねぇ~! その感じだと、雄介くんはあたしのことを本当に好きな人だと思ってるってことだ?」

 

「うん、そうだよ。前にも言ったと思うけど?」

 

「ふふふ……っ! ホント、真っすぐに言ってくれるよね。雄介くんのそういうところ、あたしも大好きだよ……♥」

 

 とても嬉しそうに笑いながら、声に熱を込めながら、ひよりさんが上目遣いで僕を見つめる。

 そうした後で小走りになった彼女は僕の前に立つと、両手を大きく広げながら笑顔で口を開いた。

 

「雄介くんにそう言われたら、なんか楽しい気分になってきたよ! 会えない時間を楽しむ……うん! なんかいい!」

 

「あはは。ひよりさんが元気になってくれたみたいで、何よりだよ。ものは考え方次第、ってことだね」

 

「そうだね! デートができるようになる頃にはもう夏! ふふっ、夏かぁ……!」

 

 そう呟いた後、ひよりさんが意味深な笑みを浮かべる。

 小首を傾げた彼女は、僕を試すような視線を向けながらこう言ってきた。

 

「夏と言えばお祭りだったり、海だよね~……! ちなみに雄介くんはあたしの浴衣姿と水着姿、どっちが見たい?」

 

「え? あ~、う~ん……どっちもかな?」

 

「あははっ! 正直者め~! だったら、どっちも見せてあげちゃおっかな! その代わり、ちゃ~んとそれに応じた場所に誘ってよね!」

 

「もちろん、約束するよ。ひよりさんのおかげで、楽しい夏になりそうだ」

 

「えへへ~……! また約束が増えちゃったね~? 幸せにしてもらったり、遊びに連れて行ってもらったり、あたしってば大忙しだな~……!」

 

 一足早い夏の約束。こうして一緒に過ごしたいって気持ちを確かめられたことが、すごく嬉しかった。

 同時に、期待に満ちた笑みを浮かべるひよりさんを見ることができた僕は、彼女と遊びに行ける喜びに輪をかけて嬉しさを感じてしまう。

 

「とまあ、こんなこと話してるけど明日も会う予定があるというね! 二人きりじゃないけど、みんなで遊ぶの楽しみだね!」

 

 にししっ、と楽しそうに笑うひよりさんを見て、僕も笑顔を浮かべる。

 彼女の言う通り、明日の予定も楽しみだが……それよりずっと先の二人で過ごす時間の方も楽しみだなと思いながら、僕はひよりさんと二人きりの時間を過ごすのであった。

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