ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんと水族館デート
友達がチケットをプレゼントしてくれた


 GWが終わって間もなくして、僕たちは迫る中間テストに向けて各々対策していくことになった。

 

 ひよりさんは友達と一緒に勉強し、僕も連休中から続けていた短期バイトを終えてすぐにテスト対策へと乗り出す。

 まだテスト範囲は狭いし、正直そこまで苦労するほどのことでもなかったが……高校生活初のテストということもあって、油断せずに勉強を重ねることにした僕は、それなりに準備を整えることもできた。

 

 そうやって勉強する間もひよりさんともちょくちょく連絡を取ったりもしていたが、受験を控えている雅人のことを気遣い、彼女は家に遊びに来ることは遠慮していた。

 学校外で話す時間は当然ながら激減して、寂しい気持ちもあったが……今はテストを優先すべきだし、前にひよりさんに言ったように『会えない時間を楽しむ』ことも大事だ。

 

 テスト期間が終わって自由に遊べるようになった時、どこに行こうか? そういうことを考えるのは、楽しいといえば楽しい。

 中間テストが終わる頃には夏の気配が漂っているだろうし、今までとは違った雰囲気の中で遊びに行けると思う。

 

 そんな想像を巡らせていた僕がちょっとしたサプライズに遭遇したのは、二日に分けて行われる中間テストの初日が終わった時のことだった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「水族館のペアチケット?」

 

「うん、そう。尾上くんとひよりにプレゼントするから、二人で遊びに行ってきなよ」

 

 初日のテストが終わった後、鉢村さんに手招きされた僕は、同じく彼女に呼ばれたひよりさんと机に突っ伏して実にいい諦めの笑顔を浮かべていた熊川さんと共に話を聞くことになった。

 それで、スマホを操作していた鉢村さんが見せてきたのが地元から少し離れた場所にある水族館のホームページで……そこの一日フリーパスを僕たちにプレゼントするという彼女の発言に、僕は目を丸くして驚く。

 

「な、なんで? 結構値が張るだろうし、悪いよ」

 

「言ったでしょ? 埋め合わせはするって。これは私たちから尾上くんとひよりへの感謝の印だよ」

 

「私、たち……?」

 

 鉢村さんの言葉に何かを感じ取った僕たちが熊川さんの方を向けば、彼女もまたいい笑顔を浮かべながらサムズアップをしてきた。

 どうやら、このプレゼントは二人で用意した物らしいと理解する僕たちへと、鉢村さんと熊川さんが言う。

 

「尾上くんには無理言って連休中に予定になかったバイト入ってもらったしさ、そのお礼をしなくちゃって思ってたんだ」

 

「私もひよりが勉強教えてくれたおかげで赤点は回避できそうだし、そのお礼がしたかったんだよね! で、似たようなことを考えてた玲香と相談して、こういう形にしてみたんだ!」

 

「でも、高かったんじゃないの? そこまでしてもらうのは流石に悪いって」

 

「気にしないでよ。さっきも言ったけど、私たちは二人に感謝してるんだからさ。それに、優希の伝手で割引価格にしてもらえたから、ひよりたちが思ってるよりずっと安い値段で買えたよ」

 

「ひよりも私と勉強してる時、雄介くんに会いたいな~って何度も言ってたじゃん! だからもう遠慮せず、二人きりでのデートを楽しんできちゃってよ!」

 

「ちょっ、優希!? 雄介くんの前でそういうこと言わないでよ!」

 

 僕が知らない勉強期間中のやり取りをバラされたひよりさんが顔を真っ赤にしながら熊川さんの口を押さえる。

 少し騒がしい彼女たちを苦笑しながら見守っていた僕へと、二人をスルーした鉢村さんが言った。

 

「もうチケットも買っちゃったし、返品もできないしさ。お礼兼まだ友達な二人を応援したい友人からのちょっとしたお節介ってことで、受け取ってよ」

 

「……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ。二人とも、ありがとうございます」

 

「楽しんできてね~! ひよりも、バシッと決めてこいよ~!」

 

「あ~、もう! そういうのいいから! ……でも、本当にありがとう。二人に感謝しながら、楽しんでくるよ!」

 

 二人からのお礼をありがたく受け入れることにした僕たちは、色々と気を遣ってくれた彼女たちに感謝の言葉を告げた。

 僕たちのことを応援してくれている友人がいることを喜ばしく思う僕たちが照れ臭さを感じながら笑みを浮かべる中、うんうんと頷いた鉢村さんは少しだけ冷ややかな視線を熊川さんに向け、口を開く。

 

「うんうん。あとはまあ、この空気の中でチケットを渡せれば最高だったんだけど……どこぞのうっかりさんが家に忘れてきちゃったからな~……!」

 

「うひぃ……! すいませ~ん! 許してくださ~い!」

 

「ほんっと、締まらないよね。優希、明日は忘れないでよ? 忘れたら家まで押し掛けるからね?」

 

「わかってるって! 大丈夫! 明日の朝イチで渡すから!」

 

「まったく……このそそっかしさで本当に赤点回避できてるのかねぇ……?」

 

「あ~……優希、ケアレスミス多かったもんね~。もしかしたら、残念なことになってるかも……?」

 

「え~っ!? ちょっと! 不安にさせるようなこと言わないでよ! 本気で怖いんですけど!?」

 

 あらら、と大事なチケットを家に忘れてしまったという熊川さんの言葉に僕とひよりさんが苦笑を浮かべる。

 そこから続く熊川さんを弄るひよりさんたちの会話を聞きながら、僕は楽し気に笑い続けるのであった。

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