ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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い、嫌だ……!尾上に全てを奪われるのだけは嫌だ!(仁秀視点)

「おい、遊佐! ちょっと……!」

 

「あ? 江間か? なんだよ、わざわざクラスまで来て……?」

 

「いいから、ちょっとこっち来いって」

 

 ――中間テストを目前に控えたある日のこと、俺はひよりと尾上のクラスメイトであるバスケ部員の遊佐楽人を呼び出した。

 二人に見つからないようにクラスから遊佐を連れ出した俺は、人気のない場所で早速質問する。

 

「お前のクラスに尾上雄介っているだろ? あいつ、どんな感じだ?」

 

「はぁ? なんで尾上のことを聞くんだよ? っていうかお前、部活サボってないで練習に来いって!」

 

「今はそういうのいいから! 尾上について教えろって!」

 

「ちっ……! なんだよ、それ……」

 

 正直、バスケ部員に接触したらこう言われることはわかっていた。

 その気まずさは俺も理解していたから、練習が休みになるテスト期間に入ってからこうして遊佐に接触したわけだ。

 

 ただ、そのせいで寝取り男兼浮気野郎の尾上に関する情報収集が遅れてしまっていた。

 その遅れを取り戻すためにも、クラスメイトの遊佐からできる限り詳しい情報を聞き出さなくてはと必死になる俺に対して、わかりやすく不機嫌になった遊佐は舌打ちを鳴らしながら言う。

 

「尾上がどんな感じかって? 普通にいい奴だよ。優しいし、気遣いもしてくれるし、性格も真面目だから教師からも信頼されてるみたいだしな」

 

「本当か? 女癖がひどかったりとか、こすい真似したりとか、浮気してる雰囲気とかあるんじゃないのか?」

 

「はぁ? お前、何言ってんの? そんな奴がいたらやべえ奴だって話が出回るだろうがよ。尾上を勝手にやばい奴にするなって。っていうか、あいつは完全に七瀬さん一筋だっつーの」

 

(くそっ……! 尾上の奴、上手いこと本性を隠してるみたいだな……!!)

 

 弱ってる人間の心の隙を突くのが上手い尾上は、自分の醜い本性を隠すことにも長けているらしい。

 俺からひよりを寝取った上に他の女とも浮気しているあいつは、その気配を完全に隠し通しているようだ。

 

 あいつの浮気現場を目撃できた俺はかなりラッキーだった。神が俺に味方している証拠だ。

 惜しいのは、目撃した浮気現場を撮影し忘れていたこと。写真の一枚でも撮っておけばかなり有力な証拠になったのにと悔しがる俺へと、遊佐が言う。

 

「なに、お前? 尾上となんかあったの? まあ、お前が十割悪いってことだけは察しが付くけどな」

 

「はぁっ!? なんでそうなるんだよ!?」

 

「だから言っただろ? 尾上は普通にいい奴だって。ちょっと前にお前が部活サボってるどうしようもない奴だって話をした時も、軽くだけどお前のことを心配してたぞ。マネージャーの柴村さんとかはどうしてるんだって聞いてきたし……」

 

「……え? 尾上が……?」

 

「そうだよ。お前のことを心配して――」

 

「そうじゃなくって! ……マネージャーの柴村のことを、二奈がどうしてるのかを聞いてきたのか……?」

 

「は? 二奈? お前、マジで何言って――?」

 

 困惑したような遊佐の言葉は、もう俺の耳に入っていなかった。

 あいつが、尾上が、二奈の近況を気にしていた? 俺についての話を聞くふりをして、二奈についての情報を集めていたのか?

 

 そのことを聞いた俺の脳裏に、最悪の想像が思い浮かぶ。

 間違いない。尾上は、あの最低の寝取り男は……次の獲物を二奈に決めたんだ!

 

 寝取り系のエロゲとかでもそうだ。ラブコメ主人公的なハーレムを形成していく男の周囲にいる女の子たちを、一人、また一人と寝取り男は奪っていく。

 尾上も同じだ。あいつは俺からひよりを奪っただけじゃ飽き足らず、二奈まで寝取ろうとしているんだ!

 

「もうどうでもいいけどさ、お前もテストが終わったらバスケ部に顔出せよ? それが嫌なら、さっさと退部届を出して……って、江間っ!?」

 

 こうしちゃいられない。あのクソ野郎に二奈まで奪われて堪るか!

 二奈が簡単に靡くとは思ってないが、万が一ってこともある。早く、早くあいつに気を付けるように言ってやらないと!

 

(い、一刻も早く尾上の浮気の証拠を掴まないと……! あいつが、俺の高校生活を無茶苦茶にする前にどうにかしないと!!)

 

 少し前まで、尾上の浮気を暴けばバラ色の高校生活が戻ってくる思っていた。

 だが、事態は俺が思っているよりずっと深刻で、手遅れになったら何もかもが滅茶苦茶にされる危険性があるということを俺は知ってしまった。

 

 何もかもを奪われるかもしれない恐怖に焦りを募らせながら必死に二奈へとラインを送り続ける俺は、絶対に尾上の思い通りになんかさせないという決意を固めながら、同時に落ち着かない気持ちを抱え続けるのであった。

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