ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「……うん。お願い」
少し浮ついていたし、そのことを放置している感じもあった。
だけど、どこかで話を聞いておかなければならないってこともわかっていた僕は、ひよりさんからその話題を切り出してくれたことに感謝しながら頷く。
ふぅ、と一つ息を吐いた後、ひよりさんは深刻そうな面持ちではなく、明るく軽い雰囲気で話をしてくれた。
「こんなふうに切り出しておいてなんなんだけど、別に大したことはなかったんだよね。普通にあいつと付き合ってたことと、浮気されて別れたってことを報告したってだけ」
「……それで、お母さんの反応は? 大丈夫だった?」
「う~ん……大丈夫でもあったし、ダメでもあったかな。あたしとあいつとの間にあったことは理解したけど、現実として受け止め切れてないって感じ」
わかっていたことだが、ひよりさんは江間との間にあったことをほとんど話したらしい。
付き合って別れたということだけでなく、別れの原因が浮気だったことも含めて睦美さんに話したようだ。
幼馴染ドリームを持っていた彼女は相当にショックだっただろうし、現実を受け止められなくて当然だとも思う。
ただ、そこに別れ際の最低な行動だとか、別れた後も彼氏面した上に柴村さんと付き合った状態のままでよりを戻そうとしていたことだとかはまだ報告していないことを考えると、全てを知ってしまった時の睦美さんの心労は相当なものになるのではないだろうか。
「……でも、お母さんもいつかは全部受け止めてくれると思う。あたしのお母さんだしさ」
「……うん、そうだね。絶対、わかってもらえるよ」
実際に自分の目でショックを受けた母親の姿を目にしたひよりさんは、少なからず不安を抱えているのだろう。
それでも、母ならば絶対にこの現実を受け止めてくれると信じ、その日を待っているようだ。
「色々落ち着いたら、また遊びに来てよ。お母さんもきっと、雄介くんに話したいこととかあるだろうし、謝りたくもなるだろうからさ」
「そうだね。まだ先の話になりそうだけど、僕もちゃんとご挨拶しに行くよ」
昨日から続いている妙な雰囲気を払拭することを急いだのとは真逆に、この話は焦らずに時間をかけた方がいい。
睦美さんを追い詰めたくないし、誰よりもショックを受けているのは彼女だろう。少し落ち着いてもらってから、話をしに行くべきだ。
「ふふっ! なんかあれだね。そういう話をしてると、結婚のご挨拶をしに来るみたいだね?」
「あはは。娘さんを僕にくださいって言う練習、しておこうか?」
「ふ~ん? 雄介くん、あたしのこともらってくれるんだ?」
「もちろん。ひよりさんが良ければの話だけどね」
「……ばか。気が早過ぎ」
ちょろっと僕をからかうつもりだったのだろうが、真っ向から受け止め続けた結果、ひよりさんが顔を赤くしながら逆にツッコミを入れる展開になった。
普段とは逆にくすくすと笑った後、僕は赤くなった頬を隠すように頬杖を突く彼女へと言う。
「この流れで言うと変な感じになるけどさ。今日、うちに晩御飯食べに来ない?」
「えっ、いいの?」
「うん。というより、家族がひよりさんをさっさと連れて来いってうるさくってさ……良ければだけど、遊びに来てよ」
「ふふふ……っ! じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな! 彼女として、真理恵さんや弟くんたちにちゃんとご挨拶したかったしね!」
恥ずかしそうにしながらも笑顔でそう言ってくれたひよりさんへと、僕も微笑みと頷きを返す。
ちょうどそのタイミングで注文した料理を店員さんが運んできてくれて、話の区切りがついたところで漂ってきたいい匂いに鼻孔をくすぐられた僕たちは、お互いに視線を交わらせながら言う。
「ふふっ! 真面目な話はここまでにして、食べよっか!」
「うん。それじゃ、いただきますってことで」
手を合わせ、箸を取り、運ばれてきたパスタを食べる。
温かくほんわかとした幸せを感じながら、僕たちは二人での食事をのんびりと楽しんでいった。