ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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恋人になったひよりさんと僕の家族

 パスタを食べ、今回のデートの目的だったかき氷も楽しみ、混雑してきたお店に迷惑をかけないために軽く話した後で出て……そこからも二人で過ごす時間は続いた。

 ただショッピングモールをぶらつき、何を買うわけでもなく見て回って、会話をするだけの時間でも、ひよりさんと一緒ならとても楽しい。

 

 手を繋ぎながら、笑顔を向け合いながら、そんなふうに思える関係が恋人ってやつなのだろうとこの関係の特別さを実感している間に、時間は瞬く間に過ぎていった。

 

「ふんふふ~ん! 今日のデートは楽しかったね~! でもまだ終わりじゃない! 雄介くんの家でご飯だ~!」

 

「あはは。ひよりさんが楽しみにしてくれてるみたいで、僕も嬉しいよ」

 

 夕方の五時頃……バスから降りて、駅から自宅へと向かう道を歩きながら僕たちはそんなことを話していた。

 手を繋ぎ、彼女の歩幅に合わせて見慣れた道を歩く僕たちは、ゆったりと会話を楽しんでいく。

 

「にしても、気合い入れ過ぎだと思わない? ひよりさんが来るからって、急遽晩御飯を焼肉にするだなんてさ」

 

「あたしとしては歓迎してもらえてるみたいで嬉しいよ! それに、初めてお泊りした時も焼肉だったし、なんか色々懐かしく感じるな~!」

 

「確かに。でも、懐かしいってのは言い過ぎじゃない? あれ確かまだそんなに時間も経ってないよ?」

 

「ふふっ! それだけ濃い時間を過ごしてきたってことですよ! こうして、恋人になったりもしてるじゃん!」

 

 そう言いながら微笑んだひよりさんが、ぎゅっと強めに僕の手を握る。

 それに応えるように僕も手に力を籠めれば、彼女は嬉しそうにはにかんでくれた。

 

「……ちゃんとご挨拶できるかな? 雄介くんの彼女になりました、ってさ」

 

「いつも通りで大丈夫だよ。どうせ雅人と大我も、『兄貴が恋人を連れてきたことを祝う踊り』とか踊ってふざけてるだろうしさ」

 

 ちょっとだけ不安そうなひよりさんを励ましつつ、現在の家の様子を想像した僕が小さくため息を吐く。

 ひよりさんを連れて行くことは話しておいたから、歓迎の準備をしていることは容易に想像できるが……家族の浮かれっぷりだ。

 

 弟たちが謎のダンスをしている光景が目に浮かんでくるし、母なんか浮かれ過ぎて棒ネコ型ロボットよろしくちょっと宙に浮いてる様子がすぐに思い付く。

 さぞや浮かれているであろう家族の姿を(ひよりさんのかわいさを目の当たりにして浮かれていた自分自身を棚に上げつつ)想像し、逆に不安になってきたところで、家の前に到着してしまった。

 

「あれ、おかしいな。チャイム鳴らしても反応がない」

 

 不安な気持ちを抱えたまま、チャイムを鳴らした僕であったが……何故だか家族の反応がない。

 何か変なサプライズでも仕掛けようとしているんじゃないかと思いながら鍵を使って中に入った僕たちは、リビングの方から聞こえる騒がしい物音を耳にして、顔を見合わせた。

 

「何かあったのかな?」

 

「いや……わからないけど、とりあえず行ってみよう」

 

 弟たちが騒いでるにしては賑やかが過ぎる家の様子を訝し気に思いながら、そっとリビングへと向かう。

 そうして扉を開いた僕たちが目にしたのは、戦争じみたやり取りを繰り広げる母と弟たちの姿であった。

 

「肉ヨシ! 海鮮ヨシ! 野菜ヨシ! ホットプレートヨシ!! 焼肉の準備、オールオッケーであります!!」

 

「オーケー! 油断せずに何か用意しておくべきものがないか確認しておいて!」

 

「会話デッキだ! 何を話すか決めておかないと、絶対に微妙な空気になる!!」

 

「わかった! 今の内に義姉さんたちと何を話すか想定して用意しておこう! バンバンシミュレーションするんだ!」

 

「そうだデザート! 祝い事なんだし、ケーキの一つでも用意しておくんだったわ!!」

 

「今からウービャーで頼もう! 無難にショートケーキでいいかな!?」

 

「雅人、この馬鹿野郎! 二人は今日、かき氷を食べに出かけたんだぞ!? かき氷といえばイチゴ! イチゴのかき氷を義姉さんが食べていた場合、昼も夜もイチゴだらけになっちまうだろうが! 別のにしろ!!」

 

「ぐえええっ! 首を絞めないで~! 窒息する! 死ぬっっ! 首の骨が折れる音が鳴っちゃう~!」

 

 ……どうやら僕は家族について思い違いをしていたようだ。

 てっきり、僕がひよりさんを連れて来ると聞いて浮かれポンチになっていると思っていたが……逆に、緊張で慌ただしくなっていた。

 

 まあ、人生で初めて家族が恋人を連れて来るという事態に直面したわけだし、こうなっても仕方がないかなと考えながら咳ばらいをした僕は、準備やら何やらで落ち着かないでいる家族へと声をかける。

 

「んんっ! ……気合を入れて準備してるところ悪いけど、ただいま帰りました」

 

「「「あっ……!!」」」

 

 その声を聞いて、僕たちの存在にようやく気付いた母たちが揃ってこちらを見る。

 一瞬の静寂の後で慌てながら反応した三人は、落ち着かない様子でそれぞれに何かを言い始めた。

 

「おっ、お帰り! 意外と早かったのね!」

 

「疲れているでしょう? 座って座って! すぐに肉を焼き始めますから!」

 

「義姉さん、飲み物何にしますか? お茶やらジュースやら取り揃えておりますが!?」

 

「ふふふ……っ! そんなに気を遣わないでください。あたしも準備をお手伝いしますから」

 

「いやいやいや! お客さんにそんなことをさせるわけには――!!」

 

「いいんです。手伝わせてください、お義母さん」

 

 ニコニコと笑いながらキッチンに向かい、食材を運んだりといった準備を手伝い始めるひよりさん。

 僕も彼女と同じく夕食の準備を手伝って……家族が多少の落ち着きを取り戻した頃、楽しい晩餐会が幕を開けた。

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