ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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続・恋人になったひよりさんと僕の家族

「今日は私がお肉を焼くから、ひよりちゃんは気を遣わないでいいからね。雄介たちもとりあえず食べることに専念しなさい」

 

「ありがとうございます! すいません、ここまでお客さん扱いしてもらっちゃって……」

 

「いや~、実際お客さんですしね! 本当、気にしないでください!」

 

「俺たちとしても、義姉さんにやってもらっちゃうと申し訳ない気持ちが勝っちゃうんで!」

 

 という感じの会話を繰り広げつつ、家族を代表して肉やらなんやらを焼く係になった母がホットプレートの上に食材を乗せていく。

 ジュゥゥ……という小気味いい音が響き、食欲を掻き立てる匂いが漂い始める中、ひよりさんが咳ばらいをした後で口を開いた。

 

「えっと、じゃあ……お肉が焼けるまでの間に、改めてご報告させてください」

 

 その一言を耳にした家族の表情に緊張が走る。

 全員が無言でひよりさんを見つめる中、彼女は一つ息を吐いた後で静かに、だけど堂々とこう言ってみせた。

 

「もうご存じだとは思いますが……この度、雄介くんとお付き合いさせていただくことになりました。不束者ではありますが、よろしくお願いします!」

 

「いやいやいやいやいや! よろしくお願いされるのはこっちっていうか、雄介の方っていうか……!」

 

「なんか、あれね。改めて報告されると、妙に緊張しちゃうわね」

 

 座った状態で頭を下げるひよりさんへと、僕の家族が慌てたような反応を見せる。

 今までは途轍もなく近い距離感で接していたのに、僕の恋人という関係になった途端にこの反応かと家族の変わり様をちょっと面白く思う中、雅人が定番の質問を投げかけた。

 

「一応、お聞きしておくんですが……雄介(これ)でいいんですか?」

 

「ふふっ! 雄介くん()いいんじゃなくて、雄介くん()いいんだよ! だから今、あたしはとっても幸せです!」

 

「「おお~っ……!!」」

 

 にっこりと笑いながらのひよりさんの返答に、弟たちが驚きの声を重ねる。

 そこまで堂々と言い切られた僕もまた流れ弾を受けて恥ずかしさを覚える中、もう一度咳ばらいをしたひよりさんが口を開く。

 

「それでなんですけど、もう一つ話しておかなくちゃいけないことがあって……あたしたちの馴れ初めというか、出会ったきっかけみたいなものなんですけど――」

 

「……いいの? 無理して話す必要はないんだよ?」

 

「うん、大丈夫。自分のお母さんには話したんだし、これから付き合っていく人の家族にもちゃんと話すべきでしょ?」

 

 一度、お母さんに話したことで色々と吹っ切れたのかもしれない。

 笑顔でそう言ったひよりさんは、改めて僕の家族に向き直ると……静かに出会いのきっかけになった江間との関係と浮気について語っていった。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「う~わ、マジか……! 世の中にはそんなことをする男がいるんだなぁ……!!」

 

「最低最悪の野郎以外の言葉が見つかんないっすね」

 

「そういうわけで、メンタルが死ぬ寸前までいったあたしを救ってくれた雄介くんには本当に感謝してるんです。約束を守っていっぱい笑顔にして、幸せにもしてくれてますし……だから大好きなの」

 

 悲壮感はなく、ただあったことを話すような雰囲気で自分の身に起きたことを報告したひよりさんが、最後に照れた様子でそう付け加える。

 こちらを見ながらの一言に僕も顔を赤らめる中、弟たちは納得がいったというように口々に何かを言い始めた。

 

「なるほどなぁ~。あの雄介がどう義姉さんを口説いたんだって不思議だったけど、そういう経緯があったのか」

 

「雄介のステータスは『優しさ』だけなら間違いなくカンストしてるからな。目の前でそんな目に遭った女の子を放っておけないだろうし、納得だわ」

 

「ふふふっ! 弟くんから褒められてるよ。良かったね、雄介くん」

 

「褒められてる……のかなぁ?」

 

 素直に称賛されてるとは思えなかったが、別に貶されているわけではないとも思える弟の言葉に首を捻りつつ、僕はひよりさんにそう応える。

 そうしている間に肉が焼き上がり、それをひよりさんのお皿に移しながら、母が彼女へと言う。

 

「あんまり話したくないだろうことを教えてくれて、ありがとうね。ひよりちゃんの誠意、伝わったわ」

 

「いいえ、そんな大したことじゃありませんから」

 

「……ひよりちゃんは強い子ね。私だったら、そんな目に遭ったらべっこべこに凹んでしばらくは立ち直れないわよ?」

 

「全然、強くなんかありませんよ。大したことじゃない、って思えるようになったのは雄介くんのおかげです。雄介くんがずっと幸せにしてくれたからこそ、あたしは今も笑顔でいられるんです」

 

 そう言いながら、ひよりさんが僕の腕に自分の腕を絡ませる。

 ぎゅっと抱き着きながら、幸せそうに笑いながら、体を寄せてきた彼女の行動に驚いてしまったが、そっとそれを支えるように重心を動かせば、それを感じたひよりさんは浮かべている笑みを強めてくれた。

 

「う~わっ、熱っつぅ! この熱気だけで肉が焼けるんじゃないの?」

 

「今日はタレじゃなくて塩にしようかな! 甘過ぎてしょっぱいものを食べなきゃやってられないぜ!」

 

 家族の前でイチャつく僕たちを見て、弟たちもようやく普段の調子を取り戻したようだ。

 ヤケクソなのか、からかいなのかはわからないが、そんなことを言いながらふざける二人を見てくすくすと笑った後、母がひよりさんへと言う。

 

「ひよりちゃんにそう言ってもらえて、母親として息子が誇らしいわ。改めてだけど、こちらこそよろしくね。雄介のこと、よろしくお願いします」

 

「……こちらこそ、よろしくお願いします。あたしがそうしてもらっているように、雄介くんのことを幸せにできるように頑張りますので」

 

 一目でわかるくらいに母親と恋人が仲良くしてくれていることに、僕はちょっとした安堵の感情を抱く。

 こんなふうに僕の家族と一緒に過ごす時間も幸せとして感じてくれているんだろうかと思いながら、楽しそうに笑うひよりさんの横顔を見て、その答えをなんとなくだが感じ取りながら……僕もまた、彼女と家族と過ごすこの時間を楽しんでいくのであった。

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