ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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江間仁秀の破滅の序章
親友たちにご報告


「というわけで! あたしたち、付き合うことになりました!」

 

「……いや、それを聞かされたところで『うっそ~っ!? びっくり~っ!!』とはならないからね? むしろようやくか……って気分だから」

 

 土曜日に告白をし、晴れて恋人になって、日曜日に恋人という関係にになってから初めてのデートを経験して……その翌日の月曜日、昼休みの時間帯に屋上に熊川さんと鉢村さんを呼び出した僕たちは、彼女たちに交際の報告をしていた。

 

 ひよりさんからの報告を受けた二人は、特に大きなリアクションは見せない。

 若干呆れた様子でツッコミを入れてきた鉢村さんへと、僕も苦笑を浮かべながら言う。

 

「いや、そうだよね。色々とちゃんとしようと思って、告白させてもらったんだけどさ。やっぱり今さら感が強いかな?」

 

「そりゃあね~。なんでまだ付き合ってないの? ってレベルだったし、ようやくやってることと関係が追い付いたかって感じだよ」

 

 周囲からそういうふうに見られていた自覚はあったし、だからこそちゃんと恋人という関係になろうと思った部分もある。

 鉢村さんの指摘は予想していたもので、ひよりさんも少しだけばつが悪そうに笑っていた。

 

「ところで、なんでわざわざ屋上に呼び出して伝えたわけ? 普通に教室で言えばいいじゃん」

 

「あ~……実は、まだみんなには言わないでおこうかなって。仲のいい友達だけにこそっと伝える感じにしようって雄介くんと話し合ったんだよね」

 

 朝、登校してすぐに教室で話すのではなく、昼休みに屋上でという形で二人だけにこのことを伝えたのには理由がある。

 僕としては、江間と付き合っていた際にそれを隠すように言われていたひよりさんの気持ちもわかっていたから、しっかりと周囲に話しておきたいとは思っていたのだが……他でもないその江間の存在がネックになっているために、それができないでいた。

 

 少し前まで江間は別れたはずのひよりさんにしつこく接触しようとしていた。

 今はだいぶ大人しくはなっているが、まだ完全にひよりさんを諦めたとは思えない。

 

 そんな状況で僕とひよりさんが付き合い始めただなんて話を聞いたら、またひよりさんと接触しようとする可能性がある。

 他でもない彼女の安全を考え、その上で過去とは決別したいという気持ちも考慮した結果、信頼できる友人にのみ話をしておこうということになったわけだ。

 

 この事情に関しても、折を見て少しずつ話していくつもりではあるが……今は秘密にしておこうということになっている。

 まだ付き合って三日目だし、ここから色々と変わる部分もあるだろうが、今はそういう感じだ。

 

「ふ~ん、まあ、それで色々からかわれたり話を聞かれたりするのもめんどくさいし、いいんじゃない? とりあえず、やっと二人が付き合うって話になって良かったよ。ねっ、優希?」

 

「えっ? あ、ああ、うん! そうだね!」

 

 ある程度のぼかしを入れたひよりさんの話を聞いた鉢村さんは、そこで一緒に話を聞いていた熊川さんに声をかけたのだが……そこで彼女は妙な反応を見せた。

 ぼーっとしていたような、話が耳に入っていなかったような、そんなリアクションを見せる熊川さんの様子を訝しんだのか、ひよりさんが眉をひそめながら言う。

 

「優希、どうしたの? どこか悪いの?」

 

「えっ? べっ、別に大したことないよ! なんでもないって!」

 

 焦った様子でそう答える熊川さんだったが、僕もどうにも彼女の態度に違和感を覚えていた。

 明るい彼女なら、僕とひよりさんが付き合うことになったという報告を受けた際に、もっと騒ぐだろう。

 実際、僕たちはそれを警戒してこうして屋上に彼女を連れてきた上で話をしたわけで、予想外の反応を見せる彼女のことをおかしく思っていた。

 

「もしかしてだけど、昼ごはんを食べ過ぎたんじゃないの? それでお腹を壊してるとか、優希ならあり得るでしょ?」

 

「ちょっと! そんな子供みたいなこと、あるわけが――」

 

 少しふざけ気味に言ってきた鉢村さんへと、若干の怒りの感情を含めながらツッコミを入れようとした熊川さんであったが……その言葉が途中で止まった。

 視線を泳がせた後、彼女は自分のお腹を押さえながら親友たちへと言う。

 

「い、いや~! 実はそうなんだよね~! さっきからお腹が痛くってさ~!」

 

「えっ? マジで? ふざけて言っただけなのに当たっちゃった系?」

 

「悪いんだけどさ。二人で薬を取ってきてくれない? 私のバッグの中に入ってるから、お願いっ!」

 

「しょうがないなぁ……! 次からは気を付けなよ?」

 

「ありがとう! 恩に着ます!」

 

 呆れた様子で立ち上がり、屋上から校内に戻っていくひよりさんと鉢村さんも、何か違和感を覚えてはいたのだろう。

 それでも、一応親友のためにと教室に向かった彼女たちを見送った後……不意に熊川さんが僕に声をかけてきた。

 

「……あのさ、尾上くん。一つ質問してもいい?」

 

「……どうしたの?」

 

 やっぱりさっきのは二人をこの場から引き離すための演技だったのかと、今の熊川さんを見ながら僕が思う中、彼女は若干ためらいがちにこんな質問を投げかけてきた。

 

「ひよりと付き合ったことをみんなに言わないのってさ……もしかして、A組の江間くんが関係してる?」

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