ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんとスポーツテストと秘密のハグ
ひよりさんと登校中の会話


 

「雄介くん! おっはよ~っ!!」

 

「おはよう、ひよりさん。朝から元気だね」

 

「いいことでしょ? 一日の始まりは元気よくいかないとね!」

 

 翌日の朝、登校中の僕は後ろからひよりさんに声をかけられ、挨拶を返した。

 小走りになって駆け寄ってきた彼女の歩幅に合わせて歩く速度を落とせば、ひよりさんは嬉しそうに笑いながら話を始める。

 

「昨日はありがとう。カレー、美味しかったよ」

 

「そう言ってもらえて嬉しいな。帰り道、大丈夫だった?」

 

「大丈夫だったからこうして元気よく学校に来れてます! 途中まで送ってくれてありがとうね!」

 

「普通のことをしたまでだよ。女の子に一人で夜道を歩かせるわけにはいかないでしょ?」

 

「いや~、優しいね~! 弟くんたちも良い子だったし、真理恵さんがいいお母さんだってことがわかるよ」

 

 こうして出会って間もない彼女から、家族についての話が出ることに少しだけこそばゆい感覚がある。

 だけど、嬉しそうに笑うひよりさんに僕の家族を褒めてもらえるのは二重の意味で嬉しくって、僕も自然と笑みをこぼしていた。

 

「あ~……でもさ、今日スポーツテストなんだよね~……流石にだるい!」

 

「確かにね。何かのスポーツをするならともかく、ただ走ったり跳んだりするだけってのは面倒だよね」

 

「そうなんだよ~! あたし、あんまり運動得意じゃないからさ~。特に憂鬱っていうか……」

 

「ひよりさん、運動苦手なの? 特にそういうイメージはないんだけどな」

 

「ん~……足は速い方だと思うよ。でもほら、このチビさに加えて、()()()()が大分大きく育っちゃってるからさ」

 

「ぶっ……!?」

 

 そう言いながらひよりさんが自分のお尻をスカート越しに叩き、その後で胸を両手で持ち上げてみせる。

 確かにまあ、本人が言うようにとてもとても立派なものだなと思いながらも、家族を褒められた時とはまた違う恥ずかしさを感じて噴き出した僕へと、ひよりさんはニヤニヤとした笑みを浮かべながら言ってきた。

 

「雄介くんって初心っていうか、こういう話に耐性がないよね。わかりやすく動揺するとこ、かわいいよ!」

 

「からかわないでよ……昨日、弟が言ってたと思うけど、彼女とかできたことないしさ。どう反応するのが正解なのか、全然わからないんだってば」

 

「雄介くんはそれでいいと思うよ! 逆に、下ネタに乗っかる姿とか想像できないもん! 雄介くんが女の子の胸とかお尻見て、鼻の下伸ばしてたりしたら、なんか嫌だしさ!」

 

「……どうしよう。自分で想像して、鳥肌立っちゃった」

 

 でしょ? と楽しそうに言ってきたひよりさんと笑い合いながら、スケベなことにノリノリな自分自身の姿を頭の中から吹き飛ばす。

 それにしてもというのもなんだが、いきなりこういう話題になる……というより、ひよりさんがそっち方面に話の舵を切るとは思わなかった。

 

 そういうことを彼女に言えば、ひよりさんは苦笑した後でこう答えてみせる。

 

「まあ、あれだよね。雄介くんには最初の時点で一番情けない姿を見られちゃってるし、そもそもの話題がこういうのだったからさ……全部曝け出せるっていうのはあるかも。あとはまあ、単純な信頼と興味だね!」

 

 続く言葉も嘘ではないのだろうが、ひよりさんにとっては最初に出した理由が大きいんだろうなと答えを聞いた僕は思った。

 確かに浮気した恋人を問い詰めている現場に遭遇し、開き直った相手から胸を揉ませてくれだのなんだのと言われていた場面を同級生に見られていたら、それ以下の醜態なんてそうそうない。

 

 それがいいことなのか悪いことなのかはわからないが……僕がひよりさんにとって、気軽に何でも話せる相手になれているということは素直に嬉しかった。

 

「それにしても……そっかそっか、雄介くんは彼女いない歴=年齢なのか~……!」

 

「べ、別に珍しくないでしょ? まだ僕、高一なんだからさ」

 

「ああ、ごめんごめん! 別にからかうつもりはないんだよ。ただ、こんなふうにお互いのことをちょっとずつ知っていくの、なんか楽しいなって思ってさ……」

 

 ちょっとだけ恥ずかしそうにしながら、そう答えたひよりさんが小さく声を上げて笑う。

 彼女の言葉に笑みをこぼした僕は、そんなひよりさんへと自分の思いを伝えつつ同意した。

 

「僕も嬉しいよ。ひよりさんのこと、少しずつ知っていって、わかるようになるの……楽しいと思う」

 

「んっ……そっか。そう思ってくれてるんだね」

 

 僕の言葉に一瞬ぽかんとしたひよりさんが、顔を赤くしながら言う。

 柄じゃないことを言ってしまったなと少し後悔する僕へと、彼女は楽しそうに声を弾ませながら言ってきた。

 

「でも、まだ雄介くんが知らないあたしの情報はいっぱいあるからね! 好きなものも特技も、まだまだ教えてないしさ!」

 

「そうだね。誕生日とかもそうだし、身長も教えてもらってないもんね」

 

「おっ? 嫌味か、貴様っ!? 自分がそんな背が高いからって調子に乗っちゃって……! あ~! 今ので好感度下がりました~! プロフィール埋めに一歩遠ざかりました~!」

 

「え~っ? それ、厳し過ぎない? もう少し甘めに判断してよ~!」

 

 おどけながら、笑い合いながら、小さな彼女に合わせてゆっくりとしたペースで学校に向かう。

 少しずつ、少しずつ……この時間を楽しみながら、ひよりさんのことを知っていけばいい。そう思いながら、僕は彼女と楽しく話を続け、学校へと続く道を歩き続けた。

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