ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんと花火大会の夜
ひよりさんは浴衣姿もかわいい


「おっ! 来たな、尾上!」

 

「早いね、遊佐くん。もうみんなも集まってるんだ」

 

「俺たちは家から会場が近いからな。遠くの会場に来てるお前より早くて当然だよ」

 

 賑やかな祭囃子と人々が騒ぐ音が聞こえてくるお祭りの会場にやって来た僕は、手を上げて近付いてきた遊佐くんとそんな会話を交わした。

 既に誘われていたメンバーの半分ほどは集まっており、大半の男子たちがふざけながら話し合っている。

 

 女子たちの人数が少ないことを見た僕がまだひよりさんたちも来ていないのかと思う中、声を小さくした遊佐くんがひそひそとこんなことを言ってきた。

 

「色々あったと思うけど、今日は面倒なことは忘れて楽しんでくれよ。折角の夏のイベントなんだしさ」

 

「……ありがとう。気を遣わせちゃってごめんね」

 

「いや~、むしろこっちこそごめんって感じだわ。同じバスケ部の奴が迷惑かけてすまん」

 

 あの屋上での話し合いを経て、遊佐くんもひよりさんと江間との関係を知る数少ない友人の一人になった。

 それが故に彼には色々と気を遣わせてしまっているが、遊佐くんの方も幽霊部員と化してはいるがバスケ部に所属している江間が僕たちに迷惑をかけていることを申し訳なく思っているようだ。

 

 今日くらいはわずらわしさから解放されて、お祭りと花火を楽しんでほしいという彼の言葉に微笑みながら頷いたところで、騒いでいた男子たちがわあっと声を上げて僕の背後を指差す。

 彼らの動きと声に驚いて振り向いた僕が目にしたのは、色とりどりの浴衣に身を包んだ女子たちと、その中でも一段と目を引くひよりさんの姿だった。

 

「お待たせ~! 感謝しろ、男子ども~! お前たちのために浴衣を着てきてやったぞ~!」

 

「うっひょ~! ありがとうございま~す!!」

 

 水色を基調に白い花火が舞う模様が描かれた浴衣を着た熊川さんが元気よくそう言えば、女子たちの浴衣姿を見ることができた男子たちがわいわいと騒ぎながら感謝の言葉を返す。

 そうやって、合流してきた女子たちを加えてみんなが話を始める中、僕はひよりさんの下へと歩み寄り、声をかけた。

 

「こんばんは、ひよりさん。浴衣、すごく似合ってるよ」

 

「へっへっへ~……! でっしょ~? 着付け手伝ってくれた優希のお母さんに感謝だね!」

 

 そう言いながらくるりと回ったひよりさんが、浴衣姿を僕へと見せつけてくる。

 オレンジ色の布地に花の絵が描かれた明るい雰囲気のその浴衣は、快活なひよりさんにぴったりだ。

 今日は髪形をいつものツーサイドアップではなく、出会った頃と同じショートボブにした上で花の髪飾りを着けていることもあってか、いつもとはまた違った印象を覚える。

 

「うん。すごく新鮮な感じがするけど、何を着ててもやっぱりひよりさんはかわいいね」

 

「んっ……! 雄介くんも言うようになりましたなぁ。でも、みんなに聞かれないように気をつけなきゃダメだよ?」

 

 正直に思ったことをひよりさんに伝えれば、彼女はほんのりと顔を赤くしながらしーっと人差し指を立ててそう返してきた。

 そうは言いつつも嬉しそうに頬を緩ませているひよりさんの表情を見て、彼女が喜んでくれていることを僕もまた喜ぶ中、男子の一人がデリカシーのない質問を女子たちへと投げかける。

 

「そう言えば、浴衣を着る時って下着を着けないっていうじゃん? ってことは、もしかして――!?」

 

「はぁ? お前、何言ってんの? そんなわけないじゃん!」

 

「サイテー! 普通に変態で最悪ー!」

 

 その話に関しては僕も聞いたことがあったが、女子たちに直球で聞ける根性はない。

 案の定、否定されると共に大ブーイングの嵐に遭うその男子のことを苦笑しながら見つめていた僕であったが、不意に両肩に手が置かれた感覚に驚いて振り向けば、いつの間に両脇から熊川さんと鉢村さんが立っているではないか。

 

「いや~、というわけだから気を付けてね、尾上くん」

 

「え? なに? 今の話の流れでどうしてそうなるの?」

 

「尾上くん、女子が浴衣を着る時に下着がうんちゃらってのはね、下着のラインが浮き出ないようにノーパンで過ごす的な話から生まれたものなんだよ」

 

「一応、浴衣用の下着とかはあるんだけどさ、私たちもリサーチ不足だったりで用意できてなくって……ひよりを含めて、ほとんどが普通の下着を着てるわけ」

 

「は、はぁ? それで?」

 

 ちょっとした豆知識や赤裸々な下着事情に関して聞きながら、何を気を付ければいいかわからずに困惑する僕。

 そんな僕へと、二人は核心を突いた指摘をする。

 

「尾上くんも知っての通り、ひよりはデカケツだからさぁ……! ちょっと油断すると、下着のラインが浮き出ちゃうんだよね」

 

「でっ!? うえっ!?」

 

「ちょっと優希! せめてもう少し言い方をどうにかしてよ!」

 

「まあ、一人で独占して楽しむくらいはいいんじゃない? 尻フェチの尾上くん的には気になる部分だろうしさ」

 

「独占とか楽しむとか、そんなことするわけが……ん? ちょっと待って。なんで僕、尻フェチってことになってるの?」

 

「「ひよりがそう言ってたから」」

 

 色々とツッコミたい部分があるが、何故だか尻フェチということになっている僕がその部分について二人に尋ねれば、揃ってひよりさんを指差しながらそう答えてくれた。

 僕が彼女を見れば、ひよりさんはわざとらしく口笛を吹きながら話を逸らしてみせる。

 

「あ、そろそろみんな動くみたいだね。あたしたちも行こうか」

 

「ひよりさん? それよりもお話があるんだけど、ちょっといいかな?」

 

「えっとぉ……何か食べたいものとかある? あたし、奢っちゃうよ!」

 

「ありがとう。でもそれはそれとして、後でお話だからね」

 

「ひぃん……」

 

 という会話を繰り広げながら、僕たちも先を行くクラスメイトたちを追ってお祭りの会場へと足を踏み入れるのであった。

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