ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんと縁日の一幕

「うまうま! やっぱり縁日の食べ物って普通に食べた時より三割増しくらいで美味しく感じられるよね!」

 

「……あんた、よく食べるわね。改めて思うけど、よくその体にそれだけの量の食べ物が入るわ」

 

「帯でお腹締めてるのに、そんなに食べて苦しくならないの?」

 

「え? だから量少な目にしてるんだけど?」

 

「「えっ……!?」」

 

 クラスのみんなと花火大会の縁日を楽しむ僕たちは、幾つかのグループに分かれて行動していた。

 少人数のグループに分かれ、離れ離れにならないようにしながら料理やら遊びやらを楽しむ僕たちであったが、ひよりさんは屋台の食べ物を次々と買っては美味しそうに食べている。

 

 焼きそばにたこ焼き、クレープにチョコバナナに綿菓子にベビーカステラ……といった感じで美味しそうに縁日ならではの料理に舌鼓を打つひよりさんであったが、彼女の健啖家っぷりを知っている僕からすればこんなものまだまだ序の口だ。

 驚き、振り返った熊川さんと鉢村さんへと苦笑を浮かべながら頷いた僕もまた、自分で買った唐揚げ串を頬張ると共に彼女たちの会話に耳を傾ける。

 

「あんた、どんだけ食べるのよ……? っていうか、それだけ食べてどうして太らないわけ?」

 

「栄養が全部胸と尻に行ってるのか!? くっそ~っ! 羨ましい~っ!!」

 

「いや、あたし的には身長に栄養が行ってる二人の方が羨ましいって」

 

 そう言いつつ、はむりと綿菓子を一口頬張るひよりさん。

 かなりの大食いなのにそれを感じさせない体形をしている彼女のことを見つめる熊川さんたちに苦笑を見せるしかない僕であったが、鉢村さんがちょっと意味深なことを言う。

 

「でも、いいわけ? この時期にそんなに調子に乗ってバクバク食べちゃってさ」

 

「んぇ? どういう意味?」

 

「あんたねぇ、季節は夏よ? 薄着なんだから体形もわかりやすいし、太ったらすぐに気付かれるわよ?」

 

「うぐっ……!」

 

「しかも、彼氏持ちで夏休みに入るとなったら、そりゃあ海なりプールなりにも行くでしょ? そん時にお腹がぽよってたら、一生の後悔になるわよ?」

 

「ぐふぅっ!」

 

 鉢村さんの指摘に何かとんでもないダメージを受けたであろうひよりさんが盛大に吹き出しながらよろめく。

 顔を上げ、自分が持っている綿菓子を見つめた彼女は、若干引き攣っている笑みを浮かべながら僕へとそれを差し出してきた。

 

「ゆ、雄介くん、これ、食べる? あたし、もうお腹いっぱ~い!」

 

「今さら食べかけの綿菓子一つを我慢したところで手遅れでしょ、間違いなく」

 

「そもそも焼きそばとかたこ焼きみたいな高カロリーなやつじゃなくて綿菓子を抜いてもねぇ……?」

 

「うっさいなぁ! そう思うなら、もっと早くに忠告してよ!」

 

「ははは。そんなの気にしないでいいのに」

 

 ぶんぶんと腕を振り回して叫ぶひよりさんへと、僕が正直な感想を述べる。

 その言葉にぷくっと頬を膨らませた彼女は、少し憮然とした表情を浮かべながらこう言葉を返してきた。

 

「雄介くんが気にしなくてもあたしが気にするの! 好きな人にはかわいいところだけを見てもらいたいっていういじらしい乙女心ってやつ!」

 

「それこそ心配しないで大丈夫だよ。ちょっとくらい太ったところで、ひよりさんのことを嫌いになんかならないよ。それに、ひよりさんはいつだってかわいいんだから、そんなふうに心配することないって」

 

「……!」

 

 僕の言葉に、ひよりさんが驚いたように目を丸くしながら顔を赤くしていく。

 そんな彼女のことを見つめながら、優しく微笑みながら……僕はこう言葉を付け加えた。

 

「ひよりさんが体形を気にするんだったら、僕も一緒に運動するよ。二人でなら、それも楽しめそうでしょ? だから、気にしないで好きな物を食べなって」

 

「……本当に気にしない?」

 

「気にしないよ。というより、僕は美味しそうにご飯を食べてるひよりさんが好きだから、我慢しないでほしいな」

 

「えへへ~……そっか! 雄介くんがそこまで言うなら、お言葉に甘えて……はぁむっ!」

 

 そこまで言われて安心したのか、大口を開けたひよりさんが綿菓子を思いっきり頬張る。

 美味しそうに頬を押さえながら、実に幸せそうな笑みを浮かべている彼女の姿を見つめながら笑みを浮かべる僕であったが、そんな僕たちを見つめる熊川さんと鉢村さんは僕たちに聞こえるひそひそ声でこんな会話を繰り広げていた。

 

「いや、やっぱバカップルだわ。っていうか尾上くん、私たちが思ってる以上にひよりのこと好きじゃない?」

 

「これはあれかもしれないよ? ひよりを餌付けして、もっともっとおっぱいとお尻をデカくする作戦。ひより子牛化計画、みたいな」

 

「あ~……! もっとボインでバインなロリ巨乳にするっていう……! それで牛柄のビキニとか着せたら完成か。男ってやっぱりデカいおっぱいが好きだね~」

 

「い~や。尾上くんのことだからこう、ひよりを四つん這いにさせてさらにデカくなったお尻の方を楽しむんじゃない? それもそれで乙な感じがしそうだし……」

 

「二人とも? 楽しいお話をしてるところ悪いけど、僕も少し言いたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

 流石にちょっと看過できなかったので威圧しないように笑顔を浮かべながら二人に声をかければ、彼女たちはきゃ~っと悲鳴を上げながら一目散に遊佐くんたちのグループの方へと逃げてしまった。

 まったく……と思いながらため息を吐く僕へと、くいくいと甚平の袖を引っ張ったひよりさんが言う。

 

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