波導使いを経てXYの主人公に転生したけど、取り敢えず最強目指す 作:バイオブロリー
突然だが俺には前世それに前々世の記憶があった。
前々世の記憶は交通事故にあったの最後に、どうやらそのまま死んでしまった俺は一回目の転生を果たす。
ただし前々世と前世の世界は地続きではなく、俺はいわゆる異世界転生をしたようであった。
多くの動物に代わって何とゲームとして大人気だったあのポケモンが存在している世界。
ポケットモンスター、縮めてポケモン。
山や海や空、世界の至る所で数多くのポケモン達が多種多様な生態系を築いて暮らしている。
しかし大のポケモン好きだった俺からしてみても、今では思い出すのが苦になるくらい前世は過酷な人生であった。
まだモンスターボールなど存在せず人とポケモンが隔たれており、そしてポケモンが紛うことなき自然の脅威として畏れられていた時代。
物心ついた頃には両親は既におらず、捨て子だった俺を代わりに育ててくれたのは波導使いの師匠だ。
だが時代そのものが厳しかったとはいえ、師匠から課せられる修行はいつ死んでもおかしくない程に苛烈なものばかりだった。
それでも波導使いとして一人前まで育て上げてくれた師匠に感謝と尊敬の念以外を抱きようなら、きっと罰が当たるだろう。
だからその恩に少しでも報えたと思えば、非業の死と言える前世の最期もそこまで悪いものでは無かったように思えた。
それに唯一無二の相棒と出会えた事も、俺にとっては掛け替えのない大切な宝だ。
結果として色々な事を相棒に託して先立つ事になってしまったが、俺の死が少しでも相棒達の未来に繋がる役に立ったと信じたい。
そして迎えた二度目の転生、今世の世界にもポケモンは存在している。
科学は大きく進歩しており生活水準は前々世の頃と殆ど変わらず、何よりポケモンが本当に身近な存在として人間に慣れ親しんでいた。
波導を読むとはっきり分かるのだが、ポケモンの気質そのものが前世と比べると穏やかなものに変化している。
あまりに時代が隔たれているせいか今世が前世から直接繋がる未来なのかどうかは確かめられていないが、前々世の俺が思い描いたであろうポケモンとの生活が漸く迎えられそうだ。
尤も今世でも気に掛かる点が全くない訳では無かったが……。
「それじゃあカルム、セレナ。キャンプが終わる頃にはママの仕事も終わってるから。ちゃんとオーキド博士の言う事を聞いて、キャンプを楽しんできてね」
そして今世での俺の名前はカルム。
生まれはカロス地方のアサメタウンで、妹のセレナと両親の四人暮らしだ。
しかし今日はサイホーンレーサーである母さんがカントー地方のセキチクシティで仕事があるという事で、その間に少し離れたマサラタウンのポケモンサマーキャンプに参加する事になっている。
セレナはあまり乗り気じゃないみたいだが、俺としては首を長くして待ち望んでいた母さんと父さん以外のポケモンと触れ合える機会。
前世でポケモンと対峙する時は大真面目に死を覚悟する事が殆どだったので、子供ですら気軽にポケモンと触れ合えるとは本当に良い時代になったものである。
俺は渋るセレナの手を引いて既に集合していた子供達の輪に混ざろうとするが、そこである事に気が付いた。
(あれってもしかしてサトシか!?)
前々世においてポケモンはゲームに限らず様々なメディアミックスが展開されており、その中でもアニメは26年にも渡って同じ主人公が継続して物語が展開されていた。
その主人公こそが他ならぬサトシであり、その面影を色濃く残す少年を俺は子供達の中に発見したのだ。
それによくよく見ればサトシと思しき少年の隣にいる子供も初代ライバルのシゲルにそっくりである。
アニメの中でもサトシとシゲルはマサラタウンの出身なので、二人がこのキャンプに参加している事は別に不思議な話ではない。
ただこの世界がアニメとは異なる事を他ならぬ俺自身の存在が証明していた。
今更だが母さんの名前はサキと言い、サイホーンレーサーのサキと言えばポケットモンスターXYの主人公の母親である。
そしてポケットモンスターXYの主人公のデフォルトネームはカルムといい、つまり俺はゲームの主人公に転生した訳だ。
だがサトシが主人公を務めるアニメにカルムは存在しておらず、代わりに女の子を選んだ時の主人公であるセレナがヒロインとして登場している。
そのセレナと俺は実の兄妹なのだが、更に言えばゲームの中でカルムとセレナは特に血の繋がりもないお隣さんだった。
そう考えるとゲームやアニメとの整合性やら何やらを一々深く考える方が馬鹿らしいと言えなくもない。
しかし今後アニメのような事件が起きる可能性も頭の片隅に留めておく必要はあるだろう。
(それにやっぱりサトシには波導使いの才能があるみたいだな)
身体は新たに鍛え直す必要はあるものの、前世で磨いた波導使いとしての技術や知識は今も俺に根付いている。
その一端として、俺は波導使いの才がある者を見極める事が可能だった。
波導は全ての物質が持つ固有の振動の事で、一般には気やオーラと呼称される事もある。
言い換えれば生物にとっては生命力と同義であり、元来強い生命力を有するポケモンはともかく人間で波導使いの資質を持つ者は非常に稀だ。
アニメでもサトシは波導使いとしての片鱗に触れられる事はあったが、実際にその力を物にした訳ではなかった。
このままその才能を埋もれさせるのは勿体ない。
前世では弟子を取るような時間がなかった事もあって、俺も師匠のように後世に波導使いの技を継承していくべきなのではないかという念に駆られる。
だから俺は……。
「すみません、すっかりお世話になってしまって」
「いえいえ。子供達だけでなく私もサキさんとお友達になれて嬉しかったですわ」
サマーキャンプを終えて数日、母さんも加えた俺達はマサラタウンのサトシの家でお世話になっていた。
アニメと同じようにこのキャンプでもサトシは良い感じにセレナにフラグを立て、それを切っ掛けに俺もサトシと仲良くなることが出来た。
そこからは折角仲良くなれた友達とすぐに離れたくないという子供ながらの情に訴えかける作戦で、更に数日の交流期間を得たのである。
実際サトシの母親であるハナコさんには余計な迷惑を掛けることになってしまったが、それに関してはいつか何らかの形で恩返ししたいと思う。
そしてこの時間を使って俺は目論見通りサトシに波導の基本について教えていた。
勿論たった数日で波導の使い方を身に着ける事など出来る筈もないが、兎に角まずは波導というものを認識して貰う。
それに関しては言えば間違いなく成功であり、後は電話越し等でも修行のやり方は教えられる。
ただ一つ予想外だったのは……。
「もう行っちゃうの?」
サトシは俺の裾を掴んで涙目ながらに、そう訴えかけてくる。
気付けば何だか滅茶苦茶サトシに懐かれていた。
妹よ、そう何やら複雑そうな視線は向けないでくれ。
まぁ普段からセレナの面倒は良く見ている方だったので、俺もまだ幼いサトシに対して現時点では師匠というよりは兄のように接していた。
それが一人っ子であるサトシにとっては余計に琴線に触れる事になってしまったのかもしれない。
俺としてもこう素直に慕われると別れが名残惜しくなってしまう。
「カルム君もセレナちゃんも沢山連絡するって約束してくれたでしょ?あんまり皆を困らせてはダメよ」
「でも」
純粋な子供の願いであるせいか、ハナコさんも今回ばかりはサトシの我が儘に対してあまり強く出られないようだ。
さてどうしたものか?
セレナはセレナで明らかにヤキモチを焼いており、このまま無理に別れる事になれば折角の出会いも胸に引っ掛かるものが残りかねない。
しかしサトシとセレナに挟まれてアタフタしている内に、俺はある妙案が思いついた。
「サトシ、今すぐは無理だけど俺達が本当の兄弟になる方法があるぞ」
「本当!?」
「サトシとセレナが結婚すればいい。そうすればサトシは俺の義弟だ」
俺の言葉に母さんとハナコさんは苦笑いを浮かべ、セレナは顔を真っ赤にする。
当のサトシはあまり意味は分かって無さそうだったが、良い笑顔で宣言した。
「わかった!それじゃあ俺はセレナと結婚する!」
これを切っ掛けにサトシも取り敢えずは俺達が帰ることを納得してくれたようで、カロス地方への帰路に着く。
それ以降も何だかんだ波導使いの修行を抜きにしても俺達の交流は続き、サトシとセレナもちょくちょく連絡を取り合っているようだ。
そしてこれはセレナにとって間違いなく大きなアドバンテージになる。
将来その事が実感できたなら、ちゃんと俺に感謝して貰いたいものだ。