波導使いを経てXYの主人公に転生したけど、取り敢えず最強目指す   作:バイオブロリー

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005 旅立ちの朝

リオル(相棒)、ラストスパートだ!『かみなりパンチ』と『れいとうパンチ』でラッシュ!!」

 

 俺の指示でリオル(相棒)は右手と左手それぞれに『かみなりパンチ』と『れいとうパンチ』を同時に発動させると、その状態を維持したまま目の前の大岩に向かって連続で拳を打ち込む。

 リオル(相棒)自身はまだまだ成長途中であるものの、前世の命を懸けた日々の中で培われた格闘術によって従来のレベルよりも遥かに打撃の威力とスピードが増していた。

 凍結と電撃による衝撃の伝播が繰り返された大岩は瞬く間に砕け散り、リオル(相棒)は残心として押忍のポーズを以って今日の修行を締め括る。

 俺だけの時は基本的に身体と波導を鍛える事が目的だった早朝のトレーニングも、リオル(相棒)が加わってからはポケモンバトルを想定した内容も追加していた。

 

 そして3年近いこれまでの日々で普通のリオルとは違うリオル(相棒)について分かった事がいくつかある。

 まず初めにリオル(相棒)は『かくとう』ではなく『ゴースト』タイプであるという事だ。

 それが転生による影響なのかどうかは定かでないが、かと言ってその姿形から完全にリオルと別種であるとは考えにくい。

 恐らくリージョンフォームのようなものだと俺は睨んでおり、やはり転生がリオル(相棒)に大きな変化を齎した要因であろうと「リンネのすがた」と呼称する事にしていた。

 

 また確かにタイプは変化しているものの、リオル(相棒)が覚える技は普通のリオルと大きく違わないらしい。

 というより前世で覚えていた技の殆どをリオル(相棒)は今も変わらず使えるようだ。

 『かみなりパンチ』も『れいとうパンチ』も俺の『緋色の波紋疾走』に対抗意識を燃やした前世の相棒が修行の末に習得した技である。

 リオル(相棒)に関してはかなり特殊な例とはいえ、「タマゴわざ」の及ぶ範囲が拡張されたようなものかもしれない。

 

 その反面『はどうだん』といったルカリオしか覚えられない技はやはりまだ使えないようだった。

 実際に波導使いとして波導を制御する力はリオルに戻った事で少なからず衰えてしまったようであり、そこは子供となった俺と同じくリオル(相棒)も一から鍛え直している最中である。

 「リンネのすがた」のリオル(相棒)が進化する条件は不明であるが、いずれにせよ今は堅実に鍛錬と経験を積んで力を伸ばしていく他ないだろう。

 そしてまだまだ修行中の身であるものの遂に今日、俺達は次のステップへと踏み出そうとしていた。

 

「こんな日までいつもと変わらずトレーニングをしてるなんて、相変わらず熱心ね」

 

 声を掛けられる前からその接近には気付いていたが、敢えてそのタイミングを待って俺は振り返る。

 そこにいたのは俺と同じく十二歳に成長したセレナ(お隣さん)だ。

 しかし出会った時から大人びた性格をしていたセレナ(お隣さん)であるが、こうして改めて目の前にすると容姿そのものも年齢と比べて成熟しているように感じられた。

 実際は今もセレナ()と良く似た年相応の可憐な顔立ちをしているので、セレナ(お隣さん)の纏う凛とした雰囲気がそういった印象を与えるのかもしれない。

 

「あの?何だかまじまじと見られてるみたいだけど、どうかした?」

 

「いや、思えば今日までセレナ(お隣さん)とは長い付き合いだったなって」

 

「そうね。この日を目指して、これまでずっと一緒に切磋琢磨してきたら。でも今日からアタシ達は正真正銘のライバ……」

 

 セレナ(お隣さん)がそう言いかけたその時、その隣を白銀の影が駆け抜けた。

 そしてその影は俺の横も通り過ぎて、修行を終えてストレッチしていたリオル(相棒)の下へ一直線に。

 そのままリオル(相棒)にこれでもかと身体を擦り付ける愛くるしい生き物の正体は、セレナ(お隣さん)のパートナーであるイーブイだ。

 セレナ(お隣さん)の両親のポケモンであるブラッキーとエーフィが持っていたタマゴから生まれたこのイーブイは、セレナ(お隣さん)の最初のポケモンとして譲られることになった。

 しかもセレナ(お隣さん)のイーブイは白銀の毛並みを持つ色違いの個体であり、美しさと可愛らしさが見事に両立している。

 

 そして俺達兄妹とセレナ(お隣さん)が一緒に過ごす事が多かったので必然的にポケモン同士も仲良くなっており、更に気付けばイーブイはリオル(相棒)に対してこんな調子になっていた。

 本当に突然の変化だったのできっと何か切っ掛けはあったのだろうが、深く詮索するような野暮な真似はしていない。

 それにしても我が相棒ながら、こんな可愛い子から好意を寄せられるとは羨ましい奴である。

 尤も当のリオル(相棒)は少し引き気味ではあるものの、かといってイーブイを完全に拒絶しているという訳でもないので暫くは二匹の仲を見守っておくことにしよう。

 

「全く、この子ったら……。いつかはリオルとも本気でバトルする事があるかもしれないのに、こんな調子で大丈夫なのかしら?」

 

「ハハッ。でもポケモンはトレーナーに似てくるって話もあるし、そこはセレナ(お隣さん)がトレーナーなら心配ないだろ?」

 

「えっ!?そ、それってどういう意味!?」

 

「どういう意味も何も今じゃ俺達も一番の友達だろ?けど同時にライバルとして、いつかは白黒つけなくちゃいけないタイミングが来るかもしれない覚悟は出来てる。ポケモン達もそこはちゃんと俺達の思いを汲んでくれるさ」

 

「そ、そうよね。アタシ達は親友だけれど、それとバトルの結果は別だもの」

 

 珍しくセレナ(お隣さん)がテンパっていた理由はサッパリだが、どちらにせよ文字通り命を賭けた戦いだった昔と違って今のポケモンバトルはルールに則った試合のようなものだ。

 勿論勝ち負けによる遺恨が全く無いと言えば嘘になるのだろうが、持てる力の全てを出し切る事にこそ意義がある。

 それはトレーナーだけでなくポケモンも同じであり、従来ポケモンは高い闘争本能を持つからこそポケモンバトルも競技として世界中で受け入れられていた。

 

 中にはバトルを好まないポケモンもいるかもしれないが、見た感じイーブイはそういうタイプでなさそうだ。

 例えリオル(相棒)とバトルする事になろうと、きっと互いに全力を尽くしてくれるだろう。

 ただし今はタイプの相性と覚えている技を踏まえるとリオル(相棒)が間違いなく圧勝するので、当分先の話になると思うが……。

 

「それにこれからも一緒に旅をするんだ。仲が悪いより、よっぽど良いさ」

 

「確かにそれはそうね」

 

 俺とリオル(相棒)が新たに踏み出そうとしている次のステップ、それはカロス地方のポケモンリーグに挑戦する為に旅に出ることだ。

 そして同じ夢を持つセレナ(お隣さん)も同様に旅に出るのだが、その道中を俺達は共にする事になっていた。

 確かに俺達は共にポケモンリーグを目指すライバル同士であるものの、ポケモンリーグの出場条件は先着順ではなく決められた期間中にジムバッジを8個集められるかどうかだけである。

 その条件なら旅の間に協力者がいるのは寧ろアドバンテージとも言えるだろう。

 足の引っ張り合いとなっては元も子もないかもしれないが、それに関してはあまり心配していない。

 

 それにセレナ(お隣さん)の両親、特におじさんは一人娘のセレナ(お隣さん)に一人旅をさせるのはやはり心配なようだ。

 ポケモンと一緒なら何処に行くのも安心だとは良く言うものの、科学が発展した現代でも自然の脅威は決して侮れないし、下手をすれば人の悪意に晒される可能性だってある。

 実際にこの世界でもポケモンハンターを始めとした悪人のニュースは絶えず、下手をすれば俺達の旅にはゲーム通りにフレア団が関わってくるかもしれない。

 

 しかしあまり後手に回るのは嫌なので既に色々と調べているのだが、何とこの世界ではフラダリラボは存在しておらずフラダリという人物そのものが今のところ確認できていない。

 根本的に俺が知る物語とこの世界は違っているのか?

 だが余りに不自然な空白は却って俺の中で疑念として渦巻き、この先で何か良くない事が起きる事を俺の直感が告げている。

 

 別に自惚れている訳ではないが何か不測の事態に巻き込まれたとしても、俺が近くに居ればセレナ(お隣さん)やポケモン達を助けられる可能性は少なからず高まる筈だ。

 何も起きない事に越した事はないとはいえ、波導使いとしての経験を積んだ俺がカルムとして転生した理由。

 リオル(相棒)と再び巡り合えた事も含めて、用心のし過ぎという事はないだろう。

 

「それより出発の時間はもう少し先の筈だろ?もしかして何か用があったんじゃ?」

 

「そうだった!アナタとアタシにお客さんが訪ねてきたの。トレーニングの途中だったら邪魔しないよう言われてたんだけど、もう大丈夫かしら?」

 

 トレーニング自体はちょうど終えた所だったので問題はない。

 しかしこんな時間帯に客が訪ねてくるとは。

 少し不自然に思いながらも俺はリオル(相棒)と一緒にセレナ(お隣さん)の後に続くのだった。

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