波導使いを経てXYの主人公に転生したけど、取り敢えず最強目指す   作:バイオブロリー

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008 旅立ち

「よっ、目が覚めたか?」

 

 俺は腕の中で気を失っていたケロマツがゆっくりと目を開けたのを見て声を掛ける。

 リオル(相棒)の「はっけい」が急所に当たり一撃で勝負が決まった事で、却ってケロマツの傷は浅くて済んだらしい。

 俺の波紋法による治療ですぐさま回復したケロマツは僅かに混乱した様子を見せたが、変わらず元気なリオル(相棒)の姿を見て自分の敗北を悟ったようだ。

 目を覚ましたケロマツは地面へと飛び降りると、ガックリと肩を落として項垂れた。

 

「……悪かった、ケロマツ。抜群の攻撃を当てる事だけに気を取られて、リオル(相棒)の特性を加味していなかった俺の失態だ」

 

 前世の戦いの日々の中で相棒(ルカリオ)は本来の特性である「せいしんりょく」に加えて、ある特別な資質を開花していた。

 それは攻撃してきた相手に直接触れる事によってその波導をより深く読み取り、それを攻撃や回避に転化する能力。

 ゲームのシステムに例えるならば「直接攻撃を受けた時、こうげき・急所率・回避率が上昇する」といったところか?

 今のリオル(相棒)の特性はバトル中の行動が起因となる為かプラターヌ博士の調査でも判明していなかったのだが、まさか前世から体質そのものを受け継いでいるとは……。

 

 だが確かに予測するのが難しい事態だったとはいえ、どんなに言い訳してもトレーナーである俺の落ち度である事に違いはない。

 特にバトルの最後で俺自身はリオル(相棒)の動きを追えていたにも拘らず、ケロマツへの指示が間に合わなかった。

 トレーナーとしてポケモンと一心同体となって戦う域には程遠い事を痛感させられる。

 勝敗は別にしても俺自身の未熟な点が浮き彫りになる結果に凹んでいると、出会った時と同じようにケロマツが俺のズボンの裾を掴み今度は首を横に振った。

 

「そっか、そうだよな。俺だけが負けた訳でも、お前だけが負けた訳でもない。俺達が一緒に負けたんだ。俺達はここ(この敗北)からがスタートだ。なぁ、ケロマツ(兄弟)?」

 

 俺がそう問い掛けるとケロマツ(兄弟)は力強く頷いてくれた。

 そんなケロマツ(兄弟)の覚悟をリオル(相棒)も本物と認めたのか、今度こそ本当の挨拶とばかりに拳を突き出してケロマツ(兄弟)もそれに応える。

 そして拳を突き合わせたリオル(相棒)ケロマツ(兄弟)に促されて、俺もまたそこに拳を重ねるのだった。

 

 これからどんな困難が待ち受けていようと、俺達は一緒に強くなる。

 その共通する思いが波導を通じて強く結びつき、俺達の心はこの瞬間に一つとなった。

 何だが前々世で言う桃園の誓いのようだったので、今日この日の誓いを俺達の力に擬え波導の誓いとして心に深く刻みつけることにしよう。

 

「マーベラス!勝敗を超えた熱い思いが伝わってくる良いバトルでした!」

 

「……アタシも何だか早くバトルをしてみたくなっちゃった。ね?イーブイ?フォッコ?」

 

 トレーナーであるセレナ(お隣さん)は元より、可愛らしい見た目に反してイーブイだけでなくフォッコもメラメラと闘志を燃やしているのが伝わってくる。

 最初からバトルに対してやる気があるポケモン達と仲間になれたのは俺もセレナ(お隣さん)も間違いなく幸運と言えるだろう。

 この勢いのままセレナ(お隣さん)との二回戦に突入と思われたが、気持ちが昂る俺達に対してジーナ先輩が残念そうに告げた。

 

「本当ならアナタ達のバトルも見届けたい所ですが、アタクシ達はそろそろお暇しなければなりませんの」

 

「そうなんですか?」

 

「実はプラターヌ博士から他の用事も頼まれているのです。こちらは少し時間が掛かりそうですから、君達がミアレシティに辿り着く頃には帰宅が間に合わないかもしれませんね」

 

「そうなると、また暫しのお別れとなりますわ」

 

「それは残念です」

 

「ですが今は科学の時代!先輩として何時でも力になれるようライブキャスターの番号を交換しておきましょう!」

 

 この世界ではフラダリラボが存在しない為か、カロス地方でもイッシュ地方と同じくライブキャスターが携帯電話のようなツールとして流通している。

 というよりここ最近は世界中でライブキャスターが主なコミュニケーションツールとなっているようだ。

 当たり前と言えば当たり前だがどの地方でも時代が同じなら別に鎖国している訳でもないので技術の発展具合はある程度は横並びとなり、こうして民間に出回る道具も大元の技術では規格化されていた。

 

 そして逆に過去に流行った製品から同時期にゲームやアニメで起こったような事件が起きていないか調べてみた事もあるのだが、特にそういった情報は見つかっていない。

 そうなるとやはりこれから世界各地で異変が起きる事になるのか?

 俺自身の周りで何か起きたなら自分で対処せざるを得ないだけだが、どうしても気に掛かるのはサトシのことだ。

 

 アニメの特に劇場版においてサトシは数々の事件に巻き込まれおり、そのどれもが命がいくつあっても足りない程に危険なものばかりだった。

 簡単に会えなくとも俺はずっと交流を続けてきたサトシの事を今では本当の弟のように思っており、そんなサトシに苦難が降り掛かるかもしれないと思えば心配は絶えない。

 だがそれと同時に最近は一人の男としてサトシに対して信頼も抱くようになっていた。

 

(波導使いとしての基礎はしっかりマスターさせたし、セキエイ大会でもサトシはアニメより好成績を収めてる。俺の教えのお陰だと恩に着せるつもりはないが、少なからずサトシが本来よりも成長してるのは間違いない筈だ)

 

 サトシはセレナ()と同じく俺より一つ年下だが、カントーでは10歳からポケモンが持てるので一年早くポケモントレーナーとして旅立っている。

 そして見事にポケモンリーグ・セキエイ大会に出場を果たし、結果は初出場ながらにベスト8。

 その結果報告を兼ねて話をした限りでは既にリザードンとも良い関係を築けているらしく、他にもアニメと比べて少し手持ちのポケモンに変化があるようだ。

 

 旅立ちの日に寝坊して結局ピカチュウが最初のパートナーになるという相変わらず抜けている面がある事は否めないものの、それはもしかしたらサトシとピカチュウの間にある運命のようなものが働いた結果かもしれない。

 いずれにせよ今のサトシはポケモントレーナーとして俺よりも先を行っている。

 元よりずっと傍に居られる訳ではない以上、先達であるサトシが無事に困難を乗り越える事を信じる他なかった。

 何より俺も兄貴分としてはサトシに負けていられない。

 

「オー ヴォワール!君達の旅が実りあるものになる事を祈ってますよ」

 

 そして去り行くデクシオ先輩とジーナ先輩の背中を見送り、俺とセレナ(お隣さん)も一旦それぞれ帰宅し旅立ちに向けた最後の準備に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

「……ダメだ、プラスルとマイナンが恋しくて仕方ない」

 

「流石にホームシックが早すぎない?」

 

 思わず漏れ出した心の声に、一緒に食事の準備をしていたセレナ(お隣さん)からすかさずツッコミが入る。

 時刻は既に夕暮れ時、メイスイタウンを超えて俺達はハクダンの森の目前まで辿り着いていた。

 流石に夜の森で野宿は気が引けたので、その手前にある開けた場所でキャンプする事に決めたのだ。

 本当は無理せずメイスイタウンのポケモンセンターに泊まるという選択肢もあったのだが、折角天気も良かったので旅の初日の終わりを星空の下で迎えるというのも乙なものである。

 

 そして俺達がキャンプの準備をしている間、一方のポケモン達はというとバトルの自主トレーニングに励んでいた。

 こういう時にやはりリオル(相棒)は頼りになり、早速ケロマツ(兄弟)に「でんこうせっか」と他の技の同時使用を伝授しようとしている。

 しかしリオルが完全な二足歩行なのに対して、ケロマツは「でんこうせっか」といった高速で移動する際はどうしても四足歩行になってしまう。

 

 だから代わりにケロマツ(兄弟)にお手本を見せているのはセレナ(お隣さん)のイーブイだ。

 「でんこうせっか」によって稲妻を描くようにイーブイは地面を高速で駆け抜けつつ、標的とした枯れ木に向かって「スピードスター」を見事に命中させた。

 ゲームで絶対命中するように「スピードスター」は技の特性そのものに標的に対する追尾性があるとはいえ、一連の動きはイーブイのレベルに反して中々に洗練されたものである。

 普段からリオル(相棒)に引っ付いている事が多いせいか、いつの間にかイーブイはリオル(相棒)の技術を盗み取っていたのだった。

 親であるブラッキーとエーフィがバリバリにポケモンバトルをしてきた影響もあるのか、俺の目から見てもイーブイのバトルセンスはかなり高いように思える。

 

「そういえばセレナ(お隣さん)はイーブイの進化はどうするか考えてるのか?」

 

「うーん、アタシ自身が特に何か決めているような事はないかしら?」

 

「そうなのか?」

 

「確かにトレーナーとポケモンが一緒に考える事だとは思うけど、本当に大切なのはイーブイ自身の意思だもの。アタシがこの旅でたくさんの事を学ぼうとしているように、イーブイもこれからきっと色々な経験をするわ。その中でイーブイが自分の進む道を選んだのなら、アタシはトレーナーとしてその選択が最良になるように努力するだけよ」

 

 何度も繰り返すようだが、本当にセレナ(お隣さん)は大人だ。

 俺なら流石に強要するような真似はしないだろうが、まず第一にパーティーのタイプバランス等を考えしまうだろう。

 

(ポケモンの選択が最良になるよう努力するのがトレーナーの仕事か)

 

 今までセレナ(お隣さん)とは何度もトレーナー論を交わしてきた筈だが、いつにも増してその考えは俺の胸に深く刻まれる。

 そのまま雑談を交えつつ食事の準備を終えるとポケモン達も呼び寄せて俺達は夕飯を囲んだ。

 今日新たに加わったケロマツ(兄弟)とフォッコも含めて、このメンバーとはこれから先も本当に長い付き合いになる──何だかそんな予感がする。

 そして夜更かしにならない程度に俺達は語り合い、人生の節目となる一日を終えたのだった。

 

 




ちょっとここからは展開のペースを早めたいと思います。
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