余命僅かって理由でパーティーメンバー全員追放したら訳わからんことになった 作:大蛇丸Daisuke
パーティーメンバーである三人の魔法使いとは紆余曲折あって知り合い、結果的に同じ冒険者のパーティーとして組むことになった。
当初は周りの奴らから美少女三人と同じパーティーなんて羨ましいぜこんちくしょう!! とか妬みを前面に放出されたりなんかしたけども、俺としては「へえ、ふーん」とフラットな感情だった。
生憎と900年以上も童貞をやっていない。
これだけ長く貞操を守っていると、年の功だけ見えてくるものもある。
それは────恋愛関係を結ぶまでは時間が掛かるということだ。
何やら巷では幼馴染が30年の時を経て結ばれる恋愛劇が流行っているそうで、すなわち恋愛においてはそれだけの時間を有する必要があるということ。
まあ、恋愛百戦錬磨の達人とかに掛かればもっと短い時間で可能なのかもしれないが、こちとら童貞のまま年を食った古のムスコを持つエルフだ。
50年……いや、100年は見ておいた方が良い。
となるとだ。
俺が組んだパーティーメンバーは全員人族で、寿命など80年あれば良い方だ。到底恋愛関係に至る時間などありやしない。
だからこそ彼女たちが俺に向ける感情なんてビジネスパートナーが良いところで、執着だったり嫉妬を向けてくることなんてありやしない。
そう──思っていた。
☆☆☆
「いきなり追放だなんてどういうつもりなわけ? 何か理由があるんでしょうね」
「嫌だなメルティ。理由ならあるに決まっている」
「……なんなのよ」
不服そうな表情でメルティは先を促した。
聞いてから判断してやろう、という心積もりか。
「──俺の寿命が尽きかけている。もう長くは生きられない」
「「「っっ!?」」」
神妙な顔で語った俺に、三人は驚愕と……途轍もなくショックを受けた表情で各々反応を示した。……そんな驚く?
まあ、エルフ的に寿命が残り少ないってだけであと80年くらいは生きれるんだけどな。……うーーん、過ごした年月的に80年って割とあっという間ではあるよなぁ。
「う、うそですわよね……? ま、まだこんなにも若々しいじゃないですか!!」
「エルフは死すまで老いることはない。1000年生きたらぽっくり逝ってしまうのさ。ま、自然の摂理みたいなもんだ。覆す術は無い」
「きょ、教会の聖女さまなら……!!」
「無理だよ無理無理。幾ら聖女さまといえど種族の寿命を覆す奇跡なんてあっちゃいけねぇよ。輪廻の輪が壊れちまうだろ」
焦燥を浮かべて次々と発案をするシンリー。
……うーん、回復魔法こそ使えねぇけど教会で多くの人の死を看取ってきたはずなんだがな?
流石にビジネスパートナーに死なれるのは困るって感じかぁ?
まあ、俺が死んだら
実際は80年生きるし、そこら辺は何とかするけどよ。
俺にだって義理はある。
「せ、センセーが死ぬ……?? ど、どうして……」
「どうしてって言われてもなぁ」
アンネが泣きそうな顔で……いや、実際に瞳に涙を浮かべながら俺に縋るように服の端を掴んで言ってきた。
うっ……流石にちょっとだけ罪悪感が……。
「……寿命が尽きるとして、ウチらはそれでアンタを見捨てるほど薄情じゃないわよ。その時まで一緒にいたら良いじゃない」
「わりぃなメルティ。どうしても俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ。それこそ人生をかけてでも叶えたい夢ってやつが」
「……ウチたちを追放してまで?」
「──あぁ」
だってお前らいたら貧乳の彼女作れねーじゃん。
パーティーの上限四人だし。
そもそも何でコイツらに本当のことを話さないのか、ってのには理由がある。じゃなきゃ俺も罪悪感を抱えてまで嘘を吐かない。
理由の一つ目。
まず三人は俺がいなくても何とかなるってこと。
三人が三人とも高水準な魔法使いだ。
ひとたびフリーになったことが分かれば、選び放題と言えるほどに有名な冒険者パーティーから勧誘が来るだろう。
きっと俺という900年生きたクセに器用貧乏なエルフよりかはマシなパーティーメンバーが見つかるに決まってる。
理由の二つ目。
そんなふざけた理由で追放すんの? ってガチギレされた挙句の果てに追跡魔法をガッチガチに掛けられて逃げられなくされるからだ。
まずもって俺は超真面目に夢を叶えようとしてるけど、一般的には今の立場を捨ててまですることじゃないってのは理解してる。当事者以外じゃ「はっ」って鼻で笑われるに決まってる。
付随して、俺は三人からはそれなりに冒険者としての評価が高い。
前にもさり気なく俺以外のパーティーに行ったらどうだ、みたいな話をしたら底冷えするような表情で三人口を揃えて「いやだ」と言ったのだ。
よほど俺の冒険者としての経験が欲しいと言える。
まあ冒険者は数百年やってっからなぁ〜〜。
ってなわけで、俺が逃げようとすれば追跡魔法を掛けられた上でシンリーの【空間移動】の魔法で追いつかれてしまうに違いない。
だからこそ俺は明確な理由をもってコイツらを納得させる必要があったってわけだ。
「……分かった。アンタがそこまで言うならウチは邪魔しない。──死の間際までウチらに付き合えなんて言えないじゃない」
「め、メルティさん……!! ……いえ、そうですわね。わたくしは恩人たる貴方の意思に従おうと思います。……せめて、神のご加護があるように祈らせてください」
「メルティ、シンリー……ありがとな」
俺は立派な仲間を持ったよ。
うん、その立派な仲間を裏切ったクズが俺なんだけどさ。
でも寿命が尽きる80年前くらいは好きなことして生きていきたいじゃない? それまで頑張ったんだからさ。
ってのはクズの思考か。
「せ、センセー……嫌だよ、私センセーがいなくなるなんて考えられない」
「うっ……」
シュン、とケモミミをペタンと折り曲げて上目遣いで俺を見てくるアンネには流石の俺もこう……くるものがあった。
一瞬揺らいでしまいそうなくらいには可愛げがあって、俺の罪悪感を酷く揺らしてくるのだった。
ポヨンポヨン。
しかし揺れるおっぱいを見て俺は決意を改めて固めた。
貧乳で回復魔法と支援魔法を使う美女の恋人を作るんだと。
別に巨乳が嫌いってほどでもない。
ただの嗜好だ。だが、嗜好だからこそ強く追い求めるのさ。
「アンネ、お前は俺がいなくても十分にやっていける。お前をバカにしていた奴らが今のお前の実力を見たらどう思う? ──腰抜かして平服するだろうぜ!! ……それくらいお前を強くなったんだ。だからさ、俺の出番はここまでだ」
「でも……全部センセーのお陰で……」
尚も渋るアンネに、俺は背中を向けて言う。
「教えられることは全て教えた。最期に教えてやれることはさ──別れの辛さくらいだろう」
男は背中で語るとこの前行ったキャバクラの貧乳お姉さんがそう言っていたのを思い出した。
背中で語るってなに? って思ったけど、とりあえず背中向けて言ってみたけどこれでええんかな。
すると、後ろ手にずずっと鼻をすする音が聞こえた。
「……うん、分かった。ごほん──不肖、このアンネ、センセーの前で見苦しい姿をお見せしましたっ!! 私は……センセーから教わった色々なもので……っ、きっと強くなってみせると……っ、ち、誓いましょう!! ずずっ……!」
「あぁ。楽しみに待ってるよ」
あぁ……胃が軋むなぁ……。
ああ軋んでんの魔力機関か。無意識的にアンネが魔力でも放ってたんかな。痛いなおい。
……ま、紆余曲折あれど俺は遂に三人から無事に追放の許可を得ることができた。
ふっ、ここからはまだ見ぬ回復魔法使いの貧乳美女を求めての旅が始まるんや!!!
ひゃっほい!!!
☆☆☆
「んぁ? アイツ遂に旅立ったんだ!!! ゲハハハ!!! いつか回復魔法使う系の貧乳美少女を追い求めるとか言ってたもんな!!! ははは!! 遂に巨乳だらけのパーティーから抜け出したか!! 有言実行たぁやりおるわ!!! ゲハハハ!!!」
「「「ハァ????」」」
とある酒場の一席。
アホが旅立ってから約一週間後のことである。
※なお、真の追放理由は別にあるとする