天音編を長めにとりそうなのは、やはり一姫が出てくるからでしょうね。
楽しみ♪
もともと女子しか通っていなかった美浜学園だが、一般校に比べて著しく生徒の人数が少なかったのと、全員が同じ寮生ということもあり、ほぼ一日中誰かと顔を合わせている。そのため同級生という意識よりは、むしろ「家族」に近い感覚を共有しているようだ。
そこに男のオレが文字通りの「異物」として紛れ込んだことで、彼女たちのコミュニティに対しても一種の免疫抗体が生成されてしまった。小嶺幸の話だと、女子しかいなかった頃の美浜寮のときは、風呂から逃げ出す全裸の蒔菜を、同じく全裸の天音が、シャンプーを持って廊下中を追いかけ回すようなこともあったらしいが、少なくともオレが加わってからはそのような光景にお目にかかることはなかった。
もちろん、風紀紊乱に対して非常に厳しい榊や、家事エキスパートの幸がいることで、そこいらの女子寮ライクな雑然さからは無縁だったが、共同生活の経験のあるJBなどに言わせると、「それは相当、ネコをかぶっている可能性が高いわね」と看破している。
しかしオレは、彼女たちのプライベートについては尊重することに決めていた。女性の秘密を暴く者には災いがふりかかる、と昔から相場が決まっているのだ。いや、むしろ「君子危うきに近寄らず」か?
こんなことを言うのも、いつもは授業が終わるとすぐ、「商店街に買い物つきあってー♪」と言いながらオレの背中にのしかかる天音や、「お兄ちゃんも一緒に遊ぶのよ?」と纏わり付いてくる蒔菜達をさばくのに辟易しているからなのだが、今日に限って終礼後、オレ以外の全員が一斉に、無言で廊下に消えていった。
学園長の千鶴や、マイペースがモットーの榊までもが、だ。
高学年の小学生や中学生の女子だけ集めて行われる性教育の特別授業みたいなものだろう、と勝手に判断したオレは、日課のトレーニングのために寮に一人先に帰るのだった。
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――ここは美浜学園第二会議室。そこにいる全員がK●Kのような覆面をかぶっており、同じく覆面の女子一人を取り囲む形で座っていた。
Y美子「さて皆様におかれましては、ご多忙のところ急な招集にも関わらずお集まり戴き、誠に有り難うございました。本日の覆面会議の議長ですが、議題の内容を鑑みて僭越ではございますが、私ことSカキY美子が努めさせていただきます。発言時にはいつもの通り個人を特定できないように仮名を使用するなど、ご配慮のほどよろしくお願いいたします。ではIリ巣さん、参考人の猿ぐつわを外して下さい」
Mキナ「Yes!マァム!」
A音「もががー!なによいったい!?この部屋に入るなり、いきなり拘束されて何かと思ったわよ!?」
Y美子「一部同志を除いて既にご存じの案件であるとは存じますが、同志M嶋Mちるさんより、同志S防A音さんに対して告発の動議がありました。そこで本日の覆面会議ですが、本校唯一の男子、Kざ見Y二に対しての相互不干渉、通称『NTO』違反について、同志S防A音さんの弁明と、他の同志の皆さんのご判断を仰ぐ場とさせていただきたいと存じます。では同志K嶺さん、資料提出をお願いします」
K嶺「はい、議長代理。先週の」
A音「えー!?だいたいNTOって何よ、それ?わたし知らないわよ!」
Mキナ「『ぬ』け駆けすると『た』だじゃ『お』かねえぞ、の略なのよ?『さ』きに『し』ょじょ捨てたら『ゆ』るさんぞって、SSYにしようかって案もあったんだけどな?そういや、A姉ぇ買い物行っててあの場にいなかったけど、まぁいいかって多数決でこっちに決めた」
Y美子「同志Iリ巣さん、同志S防さん、発言は挙手のあとで許可を求めてから行って下さい。では同志K嶺さん、続きを」
K嶺「発言を続けさせていただきます。先週土曜夕方のことですが、同志Mちる様からかねてより密命を受けていた私ことK嶺Sチは、本校男子Kざ見Y二と連れだって寮を出た同志S防A音を尾行いたしました」
Mちる「常々どーも怪しいと思ってたのよ!A音のY二をみる目がさぁ!あれは獲物を狙う鷹の目ねー!」
K嶺「14時32分、A音がY二の居住する管理人室を訪問。『15時からのタイムセールで、お一人様2セットまでのトイレットペーパーを購入したいので男手が欲しい』とY二に依頼。快諾したY二とともに寮を出たのが14時35分。商店街への道すがら、いつものようにY二の腕に抱きついてムダにでかい乳を擦り続けること20分ほどで、商店街の東浜ストアに到着。店内の試食コーナーはもちろん全て制覇したあと、目当てのペーパーロールをY二に買わせている間に、自分は「薄くても安心な避妊具」を1ダース購入するなどやりたい放題でしたが、約50分ほど二人っきりのショッピングを楽しまれたのち、15時49分にスーパーを出たことを確認しています。ちっ」
Mちる「Sチー、言葉の端々に私情がだだ漏れてるわよー!」
A音「別にいいじゃないの、それくらい!通常営業じゃん!MちるもSッちゃんに密命って何考えてるのよ!」
Mちる「A音だって、前にアタシのポエム帳や、Y美子のハードディスクをSチに探らせたりしたじゃないのよ!そっくりそのままお返ししただけよ!」
Y美子「我々もそのくらいは許容範囲だと考えています。乳うんぬんはともかく……。問題としているのはその後です。同志K嶺、続けてちょうだい」
K嶺「はい、続けます。スーパーを出た後、駅前のブティックを冷やかしたりで30分ほど時間をつぶしていましたが、A音は『なんか疲れたわねー。どっかで休んでいかない?』と言いつつ巧みに裏道へ誘導し、16時20分、3丁目のファッションホテル『カプリス』にY二を連れ込みやがりました」
A音「な……!」
K嶺「一調査員としての枠を些か越えている気もいたしましたが、レベル3の緊急事態と判断。以前から打ち合わせていた通り、同志TチバナC鶴様のホットラインに連絡し、16時27分、所用と偽った電話にてKざ見Y二を学園に呼び戻すことに成功いたしました。まさに性交ならぬ成功」
Mキナ「さすがSッチン、弓かをるバリのくの一ップリなのよ?いくらO兄ちゃんが、女ならババァであろうがなんだろうが見境なく襲いかかる性獣でも、ラブホ入って10分足らずじゃ何もできまいて!」
K嶺「このK嶺Sチ、皆様のメイドとして受けた任務は必ず遂行いたします。あとMキちゃん、なにげにKざ見さんをディスってない?」
C鶴「わたしも生徒のプライベートにむやみに干渉するのはどうかと思いますが……やはり、学園の管理者として節度を守った男女交際をしてもらいたく、やむを得ず心を鬼にして」
Mキナ「Cヅチヅ、本音のところはどうなのよさ?」
C鶴「この私より先に、女になるたぁ十年早いというものです」
Mちる「処女こじらせると地味に怖いというか痛いわねぇ……気をつけなさいよ、Y美子も」
Y美子「大きなお世話よ、M嶋さん……いかがですか、同志S防さん。申し開きすることはあるかしら?」
A音「ぐぬぬ……妙にタイミングのいい電話だったと思ったらそんなカラクリが……。ありません。Sッちゃんの言うとおりです!ごめんなさーい!!」
Mキナ「今日の晩ゴハンにお肉つけてくれたら許してあげるのよ?」
C鶴「あら、わたしもお呼ばれしてもいいかしら?この頃コンビニのお弁当ばかりで、お肌が荒れてきちゃったので」
Mちる「A音も残念だったわね!みんなを出し抜くどころか、邪魔は入るわ吊し上げられるわで!ま、これに懲りたら抜け駆けしないことね!」
Y美子「ホントにK嶺さんの情報収集能力は敵にまわしたくはないわね……個人的にはいろいろ言いたいこともあるけれど、今晩の夕食を提供してもらうというペナルティで許してあげることでいいかしら?」
Mキナ「うーい!あんまりいつもと変わらないけどな?」
Mちる「はいはいはい!アタシね-、デザートはケーキがいいなあ。桃が乗っかってるやつねー!」
A音「Mちる、アンタまたスカート合わなくなるわよ……って、そろそろ縄をほどいてくれるとありがたいんだけど」
Mキナ「うーい!」
K嶺「……あの、議長代理?」
Y美子「はい、同志K嶺さん」
K嶺「報告はまだ完了しておりませんが、続きは如何いたしますか?」
Mちる「まだ続きあんの!?いいわ、アタシが許す!続けなさいよ、Sチ!」
K嶺「では、続けさせていただきます。本日未明の5時25分ですが、Kざ見Y二が日課のランニングに出るとまもなく、A音が管理人室からゴミ袋を持って出てきたのを目撃いたしました。そこでわたくしK嶺Sチ、人気がなくなったY二の居室の強制捜索を敢行したところ、こちらの証拠品をベッドの下から発見致しました」
Y美子「それは……?」
Mキナ「ゴムの箱に決まってるべーよ?Y美ちゃん、カマトトぶるのもいい加減にした方がいいんじゃね?」
Y美子「男性用の避妊具くらい、いくら私にだってわかるわよ!……というか、カマトトって……私が尋ねたかったのは使用したかどうかよ!K嶺さん、中身は確認したの?」
K嶺「はい、もちろんです。使用した形跡といいますか……こちらは空き箱で、中身はひとつも残っておりません」
Y美子「はぁっ!?」
Mちる「中身はどうしたのよ、A音!?まさか全部使っちゃったんじゃないわよね!」
A音「ままままま、まっさか~?」
Mキナ「あやしい……怒らないから言ってみ?A姉ぇ?」
A音「Y二と一緒にふくらませて遊んでた!これ、本当よ?」
Y美子「待って!さっきK嶺さんが言ってたわよね?A音がゴミ袋を持ってKざ見君の部屋を出たって!そのゴミ袋は押収したの、K嶺さん?」
K嶺「あいにく本日は燃えるゴミの日で、気付いた時には既に回収済みでした」
Mちる「Sチにしては迂闊だったわね」
A音「……ほっ」
K嶺「A音さん、安心するのはまだ早いですよ。クイーン・オブ・迂闊のMちる様と一緒のドジメイドにされてはたまりませんので、お昼休みに区のゴミ集積場に伺いまして、寮から出たゴミを既に回収済みです」
A音「あわわわわ」
Mちる「クイーン・オブ・迂闊ってなによ!おいこらSチー!」
K嶺「女王ということですよ、Mちる様。女王」
Mちる「あ?……そお?褒めてくれたんならいいわ!もっとアタシをホメてもいいわよ!」
Y美子「ああ、もう!脱線しないで続けてちょうだい、K嶺さん!」
K嶺「失礼いたしました。続けます。そして回収したゴミ袋からは、使用済みのコンドームが12個発見されました。中身もたっぷり」
C鶴「きゃー!」
Mキナ「わがんねぇ……Sッチン……ここまでやるとさすがの俺もドン引きなのよ?」
A音「あわわわわ」
Y美子「……これで決まりね。覚悟はできているのかしら、A音さん?……あっ!逃げたっ!!Iリ巣さん、M嶋さん!取り押さえて!」
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「浜の真砂は 尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ」と詠んだのは、四百年以上も昔の大盗賊だったか。噂の種についても同じことが言えるだろう。
その日のトレーニングを終えた頃、どこかに行っていた寮生たちがぞろぞろと、美浜寮に戻ってきた。
妙にズタボロになった天音がしきりにオレに手を合わせていたこと、蒔菜がまったくオレと目を合わそうとしなかったこと、みちるが恨みがましく睨み付けてきたこと、由美子が頬を赤らめながら、ぼそりと「けだもの……」と言ってきたことが、気になったといえば気になった点だった。
しかし、彼女たちのプライベートを尊重するオレは、この場ではことさら詮索することはなかった。
そして翌朝、ティッシュの箱を小脇にかかえた幸が枕元に立つに至って、オレは初めて何が昨夕起こったのか理解したのだった。
幸「……今度は私の番ですね、ユウくん♪」
May be continued
いろんな意味でやっちまった感が否めない……orz
次回もよろしくどうぞ。