カルト教祖に転生〜邪神に暴力を捧げるデスゲーム〜   作:黒子

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第1話 カルトの教祖に転生

『契約する神を選んでください』

 

 脳内に直接響くような声。合成されたように抑揚がなく、冷酷さと威圧感がある。これ、何よ?

 

『契約する神を選んでください』

 

 何処から選ぶのか? という疑問に答えるように視界に無数の光り輝く球が浮かんできた。これが全部、神なのか?

 

「あの! すません! 契約すると何か義務とか発生するんですか……!? 俺ちょっとそーいうの無理なんすよね〜。ほら、なんとなくゆる〜く暮らしたいタイプなので」

 

 これが夢か現実かは分からないが、俺のスタンスは発言の通り。ダラダラやりたいのだ。「契約」なんて言葉は嫌いなんだよね〜。

 

『神と契約すると、新興宗教の教祖として地上に遣わされます。神の意に沿った行動をすることで【改宗ポイント】が溜まります。改宗ポイントを使えば、人々を貴方の宗教の信者にすることが出来ます』

 

 おいおいおい。このシステムは……。俺が買うだけ買って積みゲーしていた『グルグルオンライン』そのものじゃないか……!! あまりにも俺がプレイしないから夢に出てきたのか……!?

 

『契約する神を選んでください』

 

「うっせぇなぁ……!! こんなにたくさん神様いたら選べないんだけど……!! 適当な神様を見繕ってくれない……!?」

 

 どーせ夢なんだ。適当に話を進めてしまおう。

 

『承知しました。ランダムに神を選びます。……貴方が契約する神は【ムータン】です』

「ムータン……!? ゆるキャラみたいな名前じゃん!!」

 

 目の前に一つ、緑色に光り輝く球が見える。こいつがムータン神?

 

『それでは貴方を地上に降ろします。よい教祖になれますように……』

 

 視界が強い光に覆われ、全ての輪郭が消える。

 

 俺は夢の中で瞼を閉じた。

 

 

#

 

 

「って、まだ夢終わらないの……!? もういい加減起きないと会社に遅刻しちゃうんだけど……!!」

 

 俺の声に通行人が振り返る。その顔を彫りの深い白人のもので、服はファンタジーRPG風。

 

「あの〜ここは何処ですか?」

 

 とりあえず話し掛けると、善良な顔つきをしたおっさんが二、三歩こちらに寄って来る。

 

「ここはリンデング王国の王都、リナデアだよ。あんた、天から降りてきたのか?」

 

 言葉は通じる……。そしてなんとなくこちらの事情も知っているっぽいな。チュートリアルNPC? そしてここは本当にグルグルオンラインの世界なのか?

 

「いや〜そうなんすよねー。ついさっき天から降ろされちゃって……」

「やっぱりか。最近新しく神様と契約した新米教祖がよく降ってくるらしくてね。その格好を見て、ピンときたんだよ」

 

 格好と言われて自分の身体を見ると、艶があって上等な生地の白いローブを着ている。確かに、教祖っぽい。やはり、ここはグルグルオンラインの世界? つまり、ゲーム転生したのか……!? ならば、アレがある筈……。

 

「もしかしてこの世界ってステータスとかあります?」

「はっはっはっ! 教祖のニーチャンは本当に何も知らないんだなぁ。ステータスがなかったらどうやって自分のことを知るんだ? 【ステータスオープン】って言ってみな」

 

 おっさんは呆れたように笑う。

 

「えっ……? 大人が人前で【ステータスオープン】とか言うの、ちょっとイタくないですか?」

「わがままだな。なら勝手にしろ」と少し不機嫌になり、おっさんは行ってしまった。

 

 中世ヨーロッパ風の街並みの中、ポツンと残される。ふむ。誰も俺のことを気に掛けてないな。ならば、小さな声で……。

 

「ステータスオープン」と呟くと、透明なウィンドウが目の前に現れた。

 

 【 名 前 】 アズマ

 【 宗 教 】 ムータン教

 【 信 者 】 0

 【 改宗pt 】 0

 【教祖スキル】 神との対話/勧誘

 

 ステータス、内容薄過ぎ。そして、ムータン教ってまんまじゃん!! 一体、どんな神様なのか……!?

 

 俺は細い路地裏に入り、周囲を気にしながら【神との対話】を脳内で念じる。すると──

 

『アズマ! 僕を選んでくれてありがとう!! 一緒にムータン教を大きくしようね!!』

 

 ──緑色の狸のような生き物が目の前に現れた。宙をぷかぷかと浮かび、ニコニコと笑い掛けている。

 

「お前がムータンなのか……!?」

『呼び捨てにしないでよ!! 神様なんだけど!!』

「呼び捨てにされないぐらいの威厳があれば、しないけど!」

『あっ!! 気にしてるのに!! 見た目を弄るのはいけないことなのに!!』

 

 ムータンは腕組みをして抗議する。

 

「分かったよ。ムータン様。これでいいだろ?」

『仕方ないな〜』

 

 ちょろい! ちょろ過ぎる!

 

「ムータン様はさぁ、俺にどんなことをして欲しいわけ? なんか『神の意に沿った行動』を取ると、改宗ポイントを貰えるって聞いたけど」

『おっ、アズマ! いい心掛けだね! 流石は僕を選んだ教祖だ。僕が人間に求めるのは【暴力】だよ!! とびきりの暴力を捧げて欲しいな!!』

 

 えっ……。暴力……? 緑の狸みたいな見た目をしている癖に、こいつは邪神系なの?

 

「暴力なら、なんでもいいのか……?」

『暴力に貴賎はないよ!! 僕は全ての暴力を受け入れるよ!!』

 

 ムータンは胸を張る。

 

 しかしなぁ。何の脈絡もなく暴力を振るえるほど、俺は狂っていないのだが……。

 

「いやァァァァ!! 助けてぇぇ!!」

 

 路地の更に奥から、若い女の声がした。もしや、暴漢? この世界、治安悪くない……?

 

 少し困ってムータンを見ると、何故か腕を俺の方にピンと伸ばして親指を挙げている。

 

『アズマ! 暴力チャンスだよ!』

 

 暴力チャンス……!? 物理的パワーワードじゃん……!!

 

「いける?」

『いけるいける!! ナイス暴力を待ってるよ……!! ちなみに信者がいない状態だと教祖は一日しか生きていられるないからね……!! いち早く僕を満足させて、誰かを信者にしてね……!?』

 

 信者獲得デスゲームなの……!? 

 

「死んだら生き返れる?」

『教祖は死んだら、無になるよ!!』

 

 無……。これが夢だとしても、無になるのは嫌だなぁ……。とりあえず、行っとくかぁ……。

 

 ムータンが消えると、俺は女の悲鳴に向かって走った。

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