カルト教祖に転生〜邪神に暴力を捧げるデスゲーム〜   作:黒子

2 / 4
第2話 初暴力

 悲鳴の主は地面に押し倒され、小汚い格好をした男に覆い被されていた。

 

「いやいやいやぁぁぁ……!!」

「うるせぇぇ!!」

 

 男が腕を振り下ろすと、鈍い音がした。女は言葉にならない呻き声を上げる。

 

 それを聞いた瞬間、身体がカッと熱くなった。なんだ……この感覚……。無性に暴れたい……。俺、こんなんだったっけ?

 

「おい、カス」

 

 男は動きを止めて、振り返る。髭がまだらに生えた顔は嫌悪感を具現化したようだ。

 

「誰がカスだってぇぇ?」

 

 男が立ち上がると影が俺を覆った。随分とデカいな。頭一つ、俺より高い。

 

「お前だ。クソ虫」

「あんだとぉぉ……!? 殺されてぇのか……!!」

「クソ虫が人間様を殺せるわけないだろ」

「死ねぇぇ……!!」

 

 男が右腕を大きく引いて、左脚を踏み込んだ。随分とゆっくりに見える。これがムータン教の加護なのか……?

 

 迫ってくる巨体を半身になって躱すと男は背中を見せる。隙だらけだ。軽く足の裏で押すと、無様に地面に転ぶ。

 

 身体が自然に動き、うつ伏せの男の足首に膝を落とした。鈍い音がする。遅れて男の汚い悲鳴。まだ足りないな。

 

 足首を押さえて転げ回る男の顔面に向かって爪先を振り抜く。首が人体の可動域を超えて回り、男は静かになった。

 

 身体が多幸感で満たされる。

 

『ウオオオォォォ!! ナイス暴力……!! 僕、痺れちゃったよ!! 改宗ポイントあげちゃうよ!!』

 

 脳内にムータンの声が響き、少しすると「チャリンチャリン」と鳴った。

 

「ステータスオープン」

 

 

 【 名 前 】 アズマ

 【 宗 教 】 ムータン教

 【 信 者 】 0

 【 改宗pt 】 10

 【教祖スキル】 神との対話/勧誘

 

 

 おぉ! 改宗ポイントが貯まってる!! これで勧誘すれば信者が誕生するのか!?

 

 襲われていた女に視線を向けると、怯えた表情でこちらを見ている。ここは優しく声をかけるべきだな。

 

「大丈夫?」

「あっ、はい……。ありがとうございます……」

 

 うーん。反応が微妙だな。とはいえ、信者獲得のチャンスであることは間違いない。ここはチャレンジすべきでしょ!

 

「突然なんだけど、君。ウチの信者にならない? ムータン教っていうんだけど。神様は緑の狸みたいなヤツで滅茶苦茶可愛いんだよね〜。今なら信者第一号になれるし、絶対お得だと思うんだよね〜。古参ぶれるよ?」

 

 女はギッと目を鋭くし、顔に警戒心を浮かべる。

 

「いえ! 結構です!」

「そんなこと言わずにさ〜」

 

 一歩踏み出すと、女は慌てて立ち上がり後退りを始める。

 

「ムータン教、暖かいよ?」

「間に合ってます!!」

 

 女は脱兎の如く駆け出す。そして脳内に響く冷淡な声。

 

『信者の獲得に失敗しました。改宗ポイントが不足しています』

 

 えっ? ポイント足りないの? マジかよ!!

 

 脳内で【神との対話】を意識する。ポン! と現れるムータン。

 

「ムータン様! ポイント足りないんだけど!!」

『仕方ないでしょ! 可愛い女の子は必要な改宗ポイントが高いんだから! そこで死にかけてる髭男なら信者に出来るかもだよ?』

「こんな汚い信者いらねえよ!! なめてんのか!!」

『あぁー!! 神様にそんな汚い言葉、駄目なんだ〜。もう知らないからね! アズマは無になるよ!!』

 

 ムータンは白い煙を残して消える。

 

「クソ……。無にはなりたくねぇ。かといって髭面の信者はいらねえ……。暴力チャンスを見つけるしかないのか……?」

 

 腹いせに髭面男の下腹部を蹴り上げた後、俺は徘徊を始めた。暴力チャンスを求めて。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。