カルト教祖に転生〜邪神に暴力を捧げるデスゲーム〜   作:黒子

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第3話 暴力チャンスを求めて

 

「すみません! 何処かで女の子は襲われていませんか?」

 

 大通りに出て声を張り上げる。道ゆく人々は一瞬振り返るが、遠巻きにしているだけだ。

 

 一度小さな男の子が俺に近づこうとしたが、母親が腕を引いて「変な教祖に近寄っちゃ駄目ですよ!」と注意した。信者ゼロだと変な教祖扱いなのか? それともムータン教が悪いのか……? いや、両方な気がするな。

 

 ここは若い女の子の縛りをなくすべきか。

 

「何処かに困ってる人はいませんか……!? 老若男女、受付中です!! 私が神に代わって助けますよ……!!」

 

 暴力で! と心の中で付け加える。

 

 小一時間ぐらい声掛けて運動をしていただろうか。腰の曲がった老婆があっちにふらふら、こっちにふらふらしながら近づいてきた。

 

「あんた〜誰でも助けてくれるのかい?」

「何かご用ですか? 力になりますよ?」

 

 老婆は何とか顔を上げて、懇願の表情を作る。

 

「ウチの雑貨屋〜守ってはくれんじゃろか?」

「雑貨屋を守る? 何処の誰に狙われているんですか?」

 

 周囲を気にしてか、口ごもる。しかし意を決したようだ。力のこもった瞳を俺に向けた。

 

「パウロ商会の奴等じゃよ。ウチの土地を狙っとるんじゃ」

「地上げ屋ってやつ? 嫌がらせされてるの? ばーちゃんの雑貨屋?」

「そうじゃ……。ガラの悪い奴等が毎日のようにやって来て……。爺さんが対応しとったんじゃが……ついに寝込んでしまって……」

 

 老婆が瞳に涙を溜める。

 

「オッケー! オッケー! これは暴力チャンスだよ! 今すぐばーちゃんの雑貨屋に行こう!!」

「暴力チャンス……?」

「えっ? そんなこと言ってないけど? ばーちゃん、耳が遠くなってるんじゃない?」

「いや、確かに……」

「ほら、行こ行こ? 困った時はアズマにお任せだよ!!」

 

 無理矢理老婆の手を取り歩き始める。

 

 よし。ナイス暴力で改宗ポイントを稼いでやるぜ……!

 

 

#

 

 

 大通りから一本中に入った十字路の一角。空き地になった中にポツンと古びた二階建ての木造建築物がある。

 

 なるほど。周囲の土地の買収は完了し、ばーちゃんの雑貨屋だけが残ったのか。ここを更地にすれば、十字路に面した大きな施設を建てられるのだろう。

 

 パウロ商会とやらが輩を雇って嫌がらせをするのも当然の流れかもしれない。ただ、それに屈するかどうかはまた別問題。

 

 老婆はふらふらと入り口に辿り着くと、古びた扉の鍵穴に鍵を差し入れてカチリと回す。扉の小窓には鉄板が打ち付けてある。きっと爺さんが防衛の為に取り付けたのだろう。

 

 中に入ると老婆は振り返り、手招きをする。早く扉をしめたいのかもしれない。

 

 慌てて中に足を踏み入れると埃っぽい空気が俺を出迎えた。この世界の雑貨屋は現代日本のドラッグストアのような位置付けのようだ。

 

 カウンターの後のガラス棚には薬物っぽい瓶が並んでいる。その他の棚は雑多だ。ランタンであったり水筒であったり、ちょっとしたバッグなどもある。

 

 パッと見では用途の分からないものもあり、ファンタジーの世界にいることを再確認させられる。

 

 老婆はカウンターの中に入って、俺を観察していた。

 

「アズマ、そんなに珍しいんかい? 雑貨屋が?」

「そなのよね〜。俺って俗世となかなか接点ないからね〜」

 

 嘘である。俺は滅茶苦茶俗っぽいし、ムータンも然り。

 

「爺さんは二階?」

「そうじゃ。具合を悪くして起き上がれんようになってしもた。全部……パウロ商会の奴等のせいじゃ……!?」

 

 老婆が語気を強めた途端、店の入り口の方から気配を感じた。それも幾つも……。

 

 扉が勢いよく開けられ、男が三人、ゾロゾロと入ってくる。

 

「今日はババアが店番か? ジジイは遂にくたばったか?」

 

 リーダー格のスキンヘッドがカウンターに寄ってきて悪態をついた。その後ろで三下二人がニタニタと笑う。

 

 老婆が黙っていると、スキンヘッドは俺に矛先を変えた。

 

「おい、ニーチャン。ここの店は品揃えは最悪だし値段も高い。他の店に行きな!」

「えっ、そうなんですか……? どうしよっかなぁ〜困っちゃうなぁ〜」

「いいからさっさと出ていけよ……!!」

 

 スキンヘッドが一歩踏み込む。俺は男から視線は外さず、棚に置かれていた手頃な瓶を一本、手に取った。

 

「ばーちゃん、この瓶いくら?」

 

「えっ……」とカウンターの中から戸惑った声。スキンヘッドの視線が一瞬、そちらに逸れる。今だ──

 

「オラッ!」

 

 ──ガシャン! と割れる瓶と頭を殴られて崩れ落ちるスキンヘッド。俺は踏み込み、鋭い切先をそのまま三下その一の太腿に突き刺す。

 

「やりやがったな!」

 

 三下その二が声を上げて構えるが、腰が引けている。太腿を押さえて蹲る男を蹴り飛ばすと、まとめて床に転がった。

 

 意外だったのはその後だ。カウンターの中の老婆が三下二人に小瓶を数本投げつけた。小瓶が割れ、中身が二人にかかる。

 

「痛てぇぇぇ……!?」

「うわぁぁ……!?」

 

 シュウシュウと白い煙が上がり異臭が立ち込める。危険な薬品だったのか……!? 三下二人は床を這いながら、店外へと逃れようとする。

 

「おい、忘れ物があるぞ……!?」

 

 俺は床に崩れたままのスキンヘッドを担ぎ上げ、大股で助走をつけた。そして店の外で転げ回る三下二人に向かってスキンヘッドを投げ付ける。

 

「へぎゃっ……!!」

「ぐほっ……!?」

 

 聞いたこともない悲鳴。パウロ商会が雇ったならず者は入店僅か五分以内で、お引き取り願うこととなった。

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